139.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第19節「東映製作巨大ロボット作品②東京12チャンネルアニメ+α」
1976年4月、東京12チャンネル系水曜19時30分枠にて、東映テレビ事業部製作の子供向け特撮ドラマ『忍者キャプター』(1976/4/7~1977/1/26 全43話)が始まりました。
これ以降、特撮ヒーロー『快傑ズバット』(1977/2/2~9/28 全32話)、タツノコプロ共同製作のカーレースアニメ『とびだせ!マシーン飛竜』(1977/10/5~1978/3/29 全21話)、特撮ヒーローに巨大ロボットが登場する先駆けとなった東映版『スパイダーマン』(1978/5/17~1979/3/14 全41話)、長浜ロマンロボシリーズ最終作日本サンライズ制作『未来ロボ ダルタニアス』(1979/3/21~1980/3/5 全47話)と、東映製作作品が続きます。
『未来ロボ ダルタニアス』終了後もこの枠では、制作会社は日本サンライズから他社に替わりますが、続けて東映製作アニメ作品が放映されました。
⑤東京12チャンネル系水曜19時30分『宇宙大帝ゴッドシグマ』(1980/3/19~1981/2/25 全50話)
1980年3月、前作と同じ東京12チャンネル、東映、東映エージエンシ-共同製作の巨大ロボットアニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』が始まります。
東映サイドのプロデューサーは、1976年の『超電磁ロボ コン・バトラーV』以来東映巨大ロボットアニメを牽引する飯島敬(たかし)に「仮面ライダーシリーズ」など特撮作品で監督として活躍してきた折田至が加わりました。
チーフ監督は「長浜ロマンロボシリーズ」に参加してきた神田武幸(横山裕一郎)、田口勝彦(章一)、キャラクター原案は漫画家新谷かおる、キャラクターデザインは宇田川一彦に出渕裕がデザイン協力、メカ・デザインはサブ・マリンが担当。空雷王、海鳴王、陸震王の3体のロボットと無人航空機ビッグウイングが合体して完成する巨大ロボットゴッドシグマは、バンダイの子会社ポピーの村上克司主導にてデザインされます。
アニメ制作は『宇宙戦艦ヤマト』の西崎義展が設立したアカデミー製作へ委託、東映製作のアニメ『激走!ルーベンカイザー』を制作したグリーン・ボックスなどが協力しました。
音楽は筒井広志が担当。作詞八手三郎・作曲小林亜星・編曲武市昌久で作ったオープニング主題歌はささきいさお、エンディングをかおりくみこが歌いました。
『宇宙大帝ゴッドシグマ』の平均視聴率は5.6%でしたが、前作同様にハイグレード玩具「DX超合金」の売れ行きが良く1年間全50話続き、次番組も同じ枠組みの東映製作アニメシリーズとなりました。
番組放映中の1980年7月、日本サンライズ制作の巨大ロボットアニメ『機動戦士ガンダム』(1979/4/7~1980/1/26 全43話)のプラモデル「1/144 ガンダム」が販売開始します。この玩具は「ガンプラ」と呼ばれ大ヒットしました。
1981年3月14日にはオリジナル劇場版が公開され日本サンライズ制作の巨大ロボットアニメ『機動戦士ガンダム』の大ブームが興ります。
⑥東京12チャンネル系水曜19時30分→18時(第5話以降)『百獣王ゴライオン』(1981/3/4~1982/2/24 全52話)
1981年3月、東京12チャンネル系水曜19時30分枠にて東映テレビ事業部・東映エージエンシ-製作の巨大ロボットアニメ『百獣王ゴライオン』がスタートしました。
前年12月に飯島敬が東映を退職したことで折田至が単独でプロデューサーを担当、『マジンガーZ』の脚本家高久進(たかくすすむ)がシリーズ構成を行い、チーフディレクターの田口勝彦とともに作品の骨格を作ります。
キャラクターデザインを『マジンガーZ』『ゲッターロボ』から『宇宙大帝ゴッドシグマ』まで作画に参加してきた中村一夫が行い、ロボットデザインは村上克司(ポピー)を中心にサブマリンや増尾隆之、原田吉朗がデザイン協力し、『超電磁マシーン ボルテスV』からクレジットのあるY&Kの秋野紅葉が企画協力しました。
制作は、アカデミー製作から名前が変わった東京動画が前作に続き請負い、グリーン・ボックスや中村一夫の中村プロダクションなどが作画にあたります。
音楽は前作と同じ武市昌久。千家和也 作詞 ・小林亜星作曲の主題歌の編曲も武市が行い、オープニング、エンディングとも水木一郎が歌いました。
そして、5人の若者が搭乗する、黒、赤、緑、青、黄、5体のメカライオンが合体して生まれる百獣王ゴライオンは全宇宙を支配するガルラ大帝国と戦います。
4月1日の第5話から放映時間が1時間半前の水曜18時に変わります。また、10月からは東京12チャンネルがテレビ東京に商号変更されました。
『百獣王ゴライオン』は、ポピーが発売したハイグレード玩具「DX超合金・未来獣合体ゴライオン」が大ヒット。前作を上回る平均視聴率6.5%を獲得し、1年間全52話続きます。
その結果、後継番組も東映製作の巨大ロボットアニメシリーズで決定しました。
⑦テレビ東京系水曜17時55分『機甲艦隊ダイラガーXV(フィフティーン)』(1982/3/3~1983/3/23 全56回52話)
1982年3月、東映テレビ事業部製作の巨大ロボットアニメ『機甲艦隊ダイラガーXV』が前作より5分早い水曜17時55分からテレビ東京系にてスタートします。
この作品から東映動画制作となり、東映吉川進、東映エージエンシ-及部保雄、東映動画斉藤侑が企画を担当、脚本の藤川桂介がシリーズ構成を行いました。
チーフディレクターは森下孝三(現・東映アニメーション代表取締役会長)、キャラクターデザイン清山滋崇、メカニックデザインをY&K、出渕裕、原田吉郎が協力します。
音楽は横山菁児、主題歌は作詞藤川桂介、作曲編曲横山、歌は川津恒一と一新しました。
巨大ロボット「ダイラガー」は、銀河警備軍から選抜された5人で構成される3つのラガーチームが操縦する15台のラガーマシーンが合体することで完成します。
銀河警備軍と「ダイラガー」は、まもなく滅亡の危機を迎えるガルベストン帝国と全面戦争に突入し、様々なストーリーが展開しました。
主役15名による完成度の高いスペースオペラ『機甲艦隊ダイラガーXV』は、複雑であったため前作ほどの人気は得られませんでしたが全52話、総集編4回を合わせ全56回、1年間を少し越えて放映されます。
終了後、引き続き東映・東映エージエンシ-・東映動画製作による巨大ロボットアニメが始まりました。
⑧テレビ東京系水曜17時55分『光速電神アルベガス』(1983/3/30~1984/2/8 全48回45話)
1983年3月末、『光速電神アルベガス』がスタートします。
この巨大ロボットアニメのプロデューサーは、小野耕人(東映)、及部保雄・富田泰弘(東映エージェンシー)、小湊洋市(東映動画)の4人。シリーズディレクターは森下孝三(東映動画)、メイン脚本酒井あきよし、上原正三にて『マジンガーZ』『ゲッターロボ』のようにギャグ要素も入れた子供ファン向け1話完結ドラマへ原点回帰しました。
キャラクターデザインは 影山楙倫(カナメプロ)、メカニックデザイン大畑晃一、ひおあきら、小原髪夫(カナメプロ)、企画協力を秋野紅葉(Y&K)が行います。
3人の高校生が操縦する3体のロボットが合体し、6形態に変身する巨大ロボット「アルベガス」となって、宇宙からの侵略者デリンジャーと戦いました。
音楽は『マジンガーZ』の渡辺宙明が主題歌の作曲と共に受け持ち、オープニング作詞は上原正三、エンディングは酒井あきよし、編曲はいちひさし(武市昌久)でMoJoが歌います。
45話続いた『光速電神アルベガス』は、再放送を含め全48回放映されましたが、このシリーズをもってテレビ東京での東映テレビ事業部製作巨大ロボットシリーズが終了しました。
⑨TBS系日曜17時『ビデオ戦士レザリオン』(1984/3/4~1985/2/3 全45話)
テレビ東京でのシリーズが終了した翌週の3月、局がTBS、広告代理店は旭通信社(現・ADKホールディングス)に替わり、再び東映動画制作の巨大ロボットアニメ『ビデオ戦士レザリオン』が始まります。
東映と旭通信社の共同製作によるこの作品は、プロデューサーに吉川進(東映、第22話 - 第45話)、折田至(東映)、小湊洋市(東映動画、第1話 - 第21話)が就任、シリーズディレクターは『機甲艦隊ダイラガー』以降東映製作ロボットアニメを監督してきた森下孝三、脚本は「アルベガス」の酒井あきよしが担当しました。
キャラクターデザインは本橋秀之、メカニックデザインは「アルベガス」の小原髪夫、大畑晃一、ひおあきら、企画協力を秋野紅葉(Y&K)、小西智(Y&K)が行います。
音楽は「アルベガス」の渡辺宙明。主題歌の作曲も担当しました。作詞吉田健美、編曲藤田大士でオープニングは宮内タカユキ、エンディングはかおりくみこが歌いました。
今作の巨大ロボット「レザリオン」は、中学生が作ったゲームデータと物質伝送による旅客機のデータが混信して実体化したロボットというこれまでにない設定で、「アルベガス」同様コメディ要素も入れた1話完結の物語で展開します。
『ビデオ戦士レザリオン』も『光速電神アルベガス』と同じ全45話制作されましたが、この作品をもって9シリーズ続いた東映テレビ事業部製作の巨大ロボットアニメシリーズが終わりました。
これによって、東映及び東映動画は巨大ロボットアニメから撤退し、「機動戦士ガンダムシリーズ」の日本サンライズや『超獣機神ダンクーガ』の葦プロダクションなどが牽引して行きます。
〇『百獣王ゴライオン』『機甲艦隊ダイラガーXV』再編集版『ボルトロン』全米で大ヒット
1984年9月、アメリカのワールド・イベント・プロダクションズ社(WEP)は,『百獣王ゴライオン』( 『Beast King GoLion』)全52話を再編集した「Lion Force Voltron」と『機甲艦隊ダイラガーXV』(『Armored Fleet Dairugger XV』)9話分を再編集した「Vehicle Team Voltron」を『Voltron: Defender of the Universe』(「シーズン1」1984/9/10~11/27 全61話)として全米で放映し、玩具と合わせて社会現象となるほど大ヒットしました。
12月からは『ダイラガーXV』(「Vehicle Team Voltron」)の残りの話を『Voltron: Defender of the Universe』(「シーズン2」1984/12/14~3/5 全43話)として放映します。
1985年、「シーズン1」の「Lion Force Voltron」の人気が高かったため、WEPは東映に『ゴライオン』を主にした新たなエピソードの制作を依頼、10月から「Lion Force Voltron Part2」『Voltron: Defender of the Universe』(「シーズン3」1985年/10/21~11/18 全20話)として放映しました。
1986年9月10日には続けてTVスペシャルとして東映が田口勝彦が総監督として制作した46分の『Voltron:Fleet of Doom』が放映されます。
この後、WEPは東映から離れ、1998年『Voltron: The Third Dimension』(1998/9/12~2000/2/19)、2011年『Voltron Force』(2011/6/16~2012/4/25)を独自で製作しました。
東映が製作した巨大ロボットアニメ『百獣王ゴライオン』は『ボルトロン』として長きにわたり全米の子供たちに愛されます。
2016年6月、Netflixはドリームワークス・アニメーション制作で『Voltron: Legendary Defender』を北米で一斉配信。2017年7月から日本でも表記を替え『ヴォルトロン』として配信されました。
トップ写真:東映ビデオ『光速電神アルベガス』DVD Vol.1 ©東映