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良心

暗がりにポツリとろうそくの明かりが灯っている。
ゆらめく炎に影ふたつ。
「お主も悪よのう。のう、越後屋。」
「何をおっしゃいます、お殿様。滅相もございません。しかしながら、あれもこれも、すべてはお殿様のご配慮によるもの。お礼のしようもございません。まことに僭越ではございますが。」
と、越後屋。脇に置いていた紫色の絹の包みを解くと、超有名店の高級和菓子である。




「どうか。お納めくださいまし。」深く頭を下げ、つつーっと菓子折りを差し出した。
「おお、これはこれは。流石は越後屋じゃ。わしの好物をよく知っておるわ。憎めないやつよ。わっはっは!」
お殿様、おもむろにフタを開けると楕円形の饅頭が並んでいる。もちろん、中身はご存じ紫色に輝く饅頭である。




このビジネスモデルは、古今東西を問わずよく機能した。五輪開催の騒動をみれば、現在も利権の成り立ちはそう大きくは変わっていないことが推察できよう。
お殿様は越後屋の利権に便宜をはかり、利潤を最大化。儲け全体のパイを大きくして、その分、饅頭も大きくなる寸法である。まさにWIN-WIN。理想的な関係。相乗効果である、シナジーである。素晴らしい。




しかし、このモデルに決定的に欠けているものがある。
それはなあに?。秘密のアッコちゃん風に声にだしてみよう。知らない? まさか。科学が発展し、技術が進み、膨大な情報が行き交う超近代社会だというのに、秘密のアッコちゃんを知らない?。鉄腕アトムや宇宙戦艦ヤマトで描かれた社会が目の前に広がっているのだから現代は既に理想の未来社会とさえいえるのかも知れないのに、秘密のアッコちゃんを知らない?。いや、ちがう。問いたいのは秘密のアッコちゃんのことではない。



つまり問いたいのは、そのむかし夢見た近代社会にもうなっているかもしれないのに、欠けているものがあるけどそれは何か?ってことですよ。わかります? やっとたどり着いた。まわり道をしてしまったので、もうズバリ、ストレートに云おう。
それは、「良心」だ。
そんな、なにをいまさら、と思うだろうか。そんな甘いことで世の中済むわけがない、と思うだろうか。そう思ったら少し考えてほしい。



空飛ぶ高速道路は、ハイテク自動車は、大型TVは、携帯端末は、インターネットは、遺伝子工学は、宇宙工学は、ロボット工学は、人工知能は、つまり科学技術は、人を幸せにしているか。お金は、株は、証券は、不動産は、仮想通貨は、ブランド商品は、人を幸せにできるだろうか。

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そうやって、少し考えるとわかるのはずなのだ。
今の社会に、たったひとつだけコンセプトを加えると劇的に世界は変わる。そのコンセプトは急速に広がった科学技術の発展や経済発展のなかで、これまで最もないがしろにされてきたものだ。そしてそのコンセプトこそが、「良心」である。
ぼくたちは、自分の「良心」を裏切ってこなかったか。「良心」に目をつぶることが大人であると思っていなかったか。今の生活は「良心」に沿っているか。そろそろ、モノではなく日々自分に向き合うことが必要な時代がやってきていると思うが、いかがだろう。

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