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わかっちゃいるけどやめられない

 コロナ禍も一年を過ぎたが、当初喧伝されていたパラダイムシフトは起きているようには見えない。緊急事態宣言解除というが、宣言中も飲食業などの一部に負担を押し付け通常の経済活動をしていた。そもそもパラダイムシフトはそんな急には起きないそうだ。パラダイムという言葉を初めて使った哲学者トーマス・クーンによれば、変革は今いる人びとの意識が変わるのではなく、世代交代することでゆっくりと進行してゆくのだという。コペルニクスの地動説は天動説を信ずる世代がこの世にいなくなってから認められたのだ。

わかっちゃいるけどやめられない

 美しい日本を標榜するこの国のリーダーたち。とても一般市民を幸せにしようと懸命になっているようには見えない。その姿が醜い。その言い訳が醜い。大人とはそういうものだと示すその態度が醜い。しかし支持する人は多い。どんなにひどい目にあう人たちを見ても、どんなに経済的に苦しむ子育て世代を見ても、貧しくて未来を諦める若者を目の当たりにしても、今までの価値観を変えられない人たちの国。それが今の日本の現実だ。




 オリンピックの開催の是非をめぐってアンケートがなされたという。開催すべき、と答えたのは、60才代で50%超。50才代で40%後半。40才代で40%前半、30才台で30%後半、そして20才代では20%前半だったという。やろうと決めた事が間違いだと気づいたとき、しなやかに受け入れることのできる人の割合をそのまま反映していると思うのはぼくだけだろうか。そしてこの結果はトーマス・クーンが論じた世代交代によるパラダイムシフトの概念に説得力を持たせる。




 現時点での世相には暗嘆たる思いだが、Z世代以降には希望がありそうだ。 五輪組織委員会は差別意識に揺れているが、女の発言は長くて無目的、女は出産時に休むから非効率的、男が稼ぎ女は家を守れ、男は出世してなんぼ、わきまえている女が大人の女、なんていう価値観を持ったぼくらの世代が死に絶えたころ、本当のパラダイムシフトが起きているのかもしれない。最新の報道ではなんとルッキズムまで飛び出した。容姿をとやかく言う幼稚な差別行動だ。


 

 偉そうな口を叩くが、先日、ぼく自身もやらかしてしまった。普段からBLMだのジェンダーだの多様性だのを意識しているつもりの自分が、国民の権威への服従度上位、男女差別意識上位とされるこの日本で、ものの見事にジェンダーバイアスに汚染されていることを立証してしまった。




 人事異動の多いこの時期、取引先の来客も多い。3年間大変お世話になった取引先の担当者とその上司が移動に伴う挨拶に来られた。来客ブースへお通した際、自分でお茶を持っていけばいいものを、女性社員にやらせてしまった。それも、ごく自然な流れで。骨の髄まで沁み込んだ差別意識は、無意識の領域に浸透しているのだ。妻が常日頃「女性社員はお茶くみ要員じゃない」と云う言葉が脳裏をよぎる。




 いつかバブルの様な乱痴気騒ぎの時代に戻れるんじゃないかと期待している。ホームレスや貧困は自己責任であり本人の努力が足らないのだと思う。地球温暖化なんていっても早い安い便利には変えられない。多様性なんていったって肌の色言葉や習慣の違う人が近くにいるのは実際嫌だ。元官僚とか取締役とか、ちゃんと権威のある人の言うことをありがたく学ぶべき。米軍基地や原発は自宅近所にあるのは嫌だが日本には必須だ。いつかは自分もプライベートジェット機に乗り世界を股にかけビジネスをしたい。



わかっちゃいるけどやめられない。

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