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誰も教えてくれない         エンジンオイルの話し 5

■最新は最良なのか?!

必ずしもそうとは言えません。
今、使用しているエンジンの年代に合わせて使用するオイルを選ぶ必要があります。
特に量販店に並ぶオイルなどは最新の規格で商品化されたオイルがほとんどです。
しかし、エンジンの設計・生産が古いエンジンの場合、本来そのエンジンが必要する添加剤が含まれていない(または極少量)の可能性があります。
その場合、継続して使用するとエンジン内部の各部位で想定以上の負荷がかかり、故障・損傷するタイミングが早くなります。


■ZDDP(Zinc dialkyldithiophosphate)とは

●ご存知ですか?
現代のエンジンは、趣味のレース車や旧車、特殊な車に搭載しているものとは大きく異なります。
エンジンは1950年代から大きく変化し、主流のエンジンオイルもそれに合わせて変化してきました。
量販店で売られているエンジンオイルは、現代のエンジン用に開発されたもので、古い設計のエンジン用ではありません。
つまり、最新ではないエンジンには、専門的で特別なオイルが必要なのです。


●オイルにおけるZDDPの役割

「Zinc dialkyldithiophosphate」通称ZDDPまたは、「ジアルキルジチオリン酸亜鉛」は、エンジン内に表面層の境界を作る摩耗防止添加剤です。
この添加剤は金属に付着し、高負荷時に油膜が薄くなっても金属同士の接触を最小限に抑えます。
さらに、この境界層は、酸化による腐食を最小限に抑え、エンジン内部を錆びさせないという利点もあります。
このように、ZDDPは、バルブトレインやピストン、メタルの摩擦が大きいエンジンや、長期間放置されるエンジンに最適です。


■都市伝説ではない話

ZDDPが主流のモーターオイルに初めて使用されたのは1940年代で、主にその防錆効果を目的としていました。
亜鉛は、当時の鉛と銅のベアリングの酸化を防ぐだけでなく、摩耗を大幅に減少させることがわかりました。
その結果、主流のオイルに含まれるZDDPは1990年代初頭まで徐々に増加し、ピーク時には1,200〜1,400ppmに達していました。

2000年代に入ると、レースチームや自動車愛好家の間で、カムシャフトやリフターの不具合が増えてきました。
そして、なぜこのような不具合が起こるのか、その原因を探り始めた。
バルブスプリングの圧力をチェックし、リフターをカムに適合させ、すべてを正しく組み立て、ブランドオイルを使用したにもかかわらず故障が発生したのです。

原因は、半合成油や全合成油に含まれるZDDPが大幅に減少したことが原因でした。
今にして思えば、主に下記3項目が量販店のオイルを大きく変えたのです。

・O2センサーや触媒コンバーターなどの排ガス対策機器の追加
・エンジンの高効率化による燃費向上
・オイル内の清浄界面活性剤の増加によるオイル交換間隔の延長

最近の量販店のオイルは、これらのことを考慮して設計されたオイルが販売されています。
しかし、明らかに異なるメカ的な課題があり、求められるオイルが違います。


■低年式車のエンジンに最適なオイル

オイルの組成は年々大きく変化しており、あるブランドやタイプのオイルは過去には素晴らしい働きをしていたかもしれませんが、ZDDPの減少はエンジンに災いをもたらす可能性があります。
ZDDPレベルは、1990年代以降、ディーゼルオイルを含むすべての主流オイルで徐々に減少しています。
実際、2020年に発表のAPIの新オイル仕様「SP」は、OHVプッシュロッドやフラットタペットエンジンでテストされていない初めてのオイルです。

API ZDDP(Zinc=ZN:亜鉛 , Phosphorous=P:リン)

SN : 2010以降 Zn:----ppm/P: 800ppm *Zn=定義なし

SM : 2010まで Zn: 870ppm/P: 800ppm

SL : 2004まで Zn:1100ppm/P:1000ppm

SJ : 2001まで Zn:1100ppm/P:1000ppm

SH : 1996以降 Zn:1300ppm/P:1200ppm

APIオイルの認証では、最大3.83㎏/㎜(開弁時)のバルブスプリング圧力を持つエンジンでテストされます。
一般的な高性能エンジンは、4.99㎏/㎜(開弁)以上のバルブスプリングを備えています。
使用しているエンジンが設計された時代/年代を十分に考慮したうえで、保護層を作るために使用するオイルが十分なZDDPが含まれていることを確認する必要があります。
エンジンを構成するすべての部品と同様に、エンジンオイルも特定の用途や動作範囲に合わせて選択されるべきなのです。

つづく...

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