演劇というメディアのコストの話 #Gahornz

#Gahornz
高橋一生さん
飯豊まりえさんとのご結婚おめでとうございます
あなたの演じる「弱さを伴う40代の岸辺露伴」、私の生きる指針とさせていただいています。
新作の密猟海岸、Prime Video にて拝見しました。最高です!

さて、と。

Amazon で適当にポチる習慣のある身としては Prime に加入していてとっくに無料配送分で元を取っている。なので自分にとって Prime Video はほぼ無料の感覚。
ほぼ無料でこのクオリティの作品が見れる。
安いものだ。

では作品が低予算かというとそんなことはなく超絶手の凝った作品になっている。流石のNHK妥協をしない。
そして、NHKの放送網や Prime Video を始めとする配信サービス、それを支える技術者スタッフにより、高度な芸術は安価で提供される。

だから思う。

舞台演劇という表現技法は、コストがかかる。

印刷技術(版画)の登場により絵画は大量かつ安価になった。楽譜の複写により同じ譜面で同時に演奏可能になり大ホール大観衆に耐えられるようになり、聴衆一人あたりの金銭的負担は減った。

記録メディア、通信技術、情報処理技術の発達により多くの娯楽芸術が安価になった。

演劇はどうだろう

アンプ技術とピンマイクの登場によりベルカント唱法に頼らずとも大ホールでの演技に耐えられるようにはなった。ただ、演劇ならではの息遣いなり臨場感なりというものを、大衆化、することはなかなか難しい。
少なくとも、他ジャンルほど、テクノロジーの恩恵を受けているようには見えない。

ここで、 #Gahornz @gahornz である。

https://x.com/gahornz/status/1791828685919818135

5/18、信頼する役者が出演するということで見に行った。結果は、期待通りの内容で、期待通りのクオリティだった。


【最低限の環境で最大限のパフォーマンスを】とある。この「最低限の環境」というのは、時間や金銭をあまりかけない、と私は解釈した。そして、だからといってクオリティを下げないことがミソ。そこで見ていたところ、

  • 舞台:白ホリのフォトスタジオ(4,500円/h)

  • 照明:Godox SL-60W 一台(20,000円) <= 使い回し

小劇場を土曜に一日借りると10万円くらいなるので、かなりお安く仕上げていると見做せる。
演者3人、スタッフ1人の人件費含めても持ち出しにならない。

そこで白ホリの空間と照明1台という縛りで、むしろ「『何もない』が存在する」空間をあえて作り上げた。

さらに行われるのは即興劇。とても難しそうに見えるが、既に修練を積んで地力のある役者にとっては、例えば落語の三題噺のようなある程度のフレームワークがあるので未知の難しさというわけではないのだろう。地力のある役者にとっては。

会場は自ずと舞台と客席が近くなる。
さらに積極的に観客が物語に介入することにより、まるでゲームを行なっているかのような没入感がある。
その環境で、役者の生き様と地力を魅せることができる。

最低限の環境だから「こそ」の最大限のパフォーマンス、だ

テクノロジーによるエンターテイメントの大衆化の行き着く果てはもう間近に迫っていて、AI生成による大量の「オリジナル」の生産である。現状いろんな声は上がっているがテクノロジーはより楽で安い方に進む。

それとは別のジャンルもまたあり、18世紀の貴族よりもテクノロジーで豊かになり教育を受けて賢くなった僕たち「大衆」が、当時の貴族と同様のサロンを楽しむのもまた、大衆化とも言えるのだろう。このジャンルの表現のAIによる代替はとても難しい。

演劇というジャンルは、テクノロジーの直接の恩恵はほぼ得られないのだけど、だからこそ、テクノロジーに飲み込まれることなく間接的な恩恵を受け、これからも出会った人にとってかけがえのないものとして残り続けるのかな、と思った。

これは推しビジネスに直結だけど、それに対しやや否定的な自分とすれば、うまいこと「推してない」人に受け入れられるか、軽めの感情で足を運ぶ導線を用意するべきなのか、ということが気になったりする。まぁこれは別の話題。

個人的に思ったことは、演じる前の舞台設定を説明しているときの照明の光がとても柔らかく、



影が映らずホリゾンで壁の存在も希薄で本当に「何もないがある」不思議な空間だった。


実際の演目では SL-60Wの固い光で役者の影の存在があり、




もし柔らかい光だけだとしたらまた演じる内容も変わるのかな、と妄想した。

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