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植物専門のイラストレーターになったきっかけのお話

こんにちわ!イラストレーターのトウドです。

最近お疲れ気味でご機嫌ななめの次男坊。
宿題に使うノートを学校に忘れ、取りに行き
帰宅してからもう1つ忘れ物があった事に気が付き
玄関先でふぬふぬ。(注 : ふぬふぬは次男坊がぐずっている時の表現です)
猛烈ふぬふぬ中の次男坊に優しく
「一緒に取りに行ってあげようか?」
となだめる長男氏。
猛烈にふぬふぬしながら家を飛び出していく次男坊を
「ちょっと次男坊君と一緒に取りに行ってくるね」
後からと追いかけて行きました。

完璧な神対応
お前は黄色い帽子のおじさんですか?

自分の忘れ物は絶対に自分で取ってこいのわたくしとは大違い うふふ

それでは、トウド家のとある日の出来事はこの辺にしてわたくしが植物を専門的に描くようになったきっかけのお話をしていきたいと思います。
 今日も長くなるわよ  ニヤリ


・本当に大変なのは2作目だった(涙)

絵本作家さんや文学作家さんなどはデビューより
早い段階で2作目を出版できるかの方が大変で、大切だと教わった事があります。

デビューしても尚、まだ自分が何者なのか理解できていなかったわたくしはとにかくやみくもに営業をかけます。
けれどもちろん何1つ響かない。
当たり前なんです。
だって自分でもよくわかっていないんだもの(笑)
「100%運」だけでデビューしてしまったわたくし。
1人で仕事をしていくという事の大変さをようやく理解しつつありました…

会社であれば経理、営業、制作など手分けしてやることを全ての1人でやらなくてはいけないのですからね。

「従順に言うことを聞いていた」だけでデビューを果たしてしまったが故に自分に自信もなく…
行く先々でけちょんけちょんに貶されても何も言い返せない日々(涙)

年齢的にも若く、女性というだけでハラスメント的な事はしょっちゅう言われましたし、最終的にはデビュー作を出版して下さった版元さんの悪口まで言われ
泣きました。情けなくて。
東京のど真ん中の路地裏で。
膝を抱えて泣きました。
自分が至らないせいで版元さんまで悪く言われてしまったのが申し訳なかった…
でも立ち止まるという選択肢はなかったんです。
もうそれしか残されていないと思っていたから。

・猛勉強の日々

そんな日々の中、わたくしは画力はもちろんの事
発想、柔軟性、そして人としての知識や経験、全てが自分には足りないと実感し、猛勉強を始めます。

とにかく1人で仕事をしていくに当たって必要と思われる学問はひと通り本を読み漁りました。経済心理学、行動心理学、児童心理学、歴史等々…
特にマネジメントに必要と思われる学問は熱心に学んだ記憶があります。

元々言語情報の処理能力が低く、子供の頃にはほとんど本を読まず、読む楽しささえ知らずに育ってきたので
子供時代や学生時代に読んでおくべき名著と呼ばれる類いものも、この時代に読みました。

同時に自分の特性とも向き合わなければない時期でした。
その方が効率よく学べるのではと考えたからです。
何が苦手で、何が得意なのか洗い出し、精査し対処法を模索していく。
まさしく自分の育て直し、セルフエデュケーション。

そんな当時の無学なわたくしに勇気を与えて下さったのが「虚数の情緒」という吉田武さん著の全方位独学法の本です。
「全方位」というだけあって科目分けせず国語算数歴史など基礎から学べます。
こちらの書物
「さあ諸君、勉強を始めよう勉強を,」というお言葉から始まります。
何から手を付けたらよいのかわからない程無学なわたくしにとって、この全方位独学方がという本はまさしく
こういうのが欲しかった!と言える内容でした。
一部引用します。

「凡そ勉強なんてものは、何だって辛くて厳しい修行である。然しそれを乗り越えた時、自分でも驚く程の充実感と、学問そのものへの興味が沸き起こってくる。(中略) 思い切り苦労して、一生懸命努力して、素晴らしいものを身に付けようではないか」
どれほどこのお言葉に勇気付けられたか。

尚、この最初のページにはすべての漢字にルビがふってあります。
2回目からはルビが無くなるので、本の最後のページにはほとんどルビがなくなるという読みながらに実は漢字の勉強にもなっている仕様になっておりまさしく全方位。
気になる方はチェックしてみてくださいね。

かなりボロボロになったわたくしの「情緒」


それから辛い時いつも勇気づけられたのが
宮沢賢治さんの「稲作挿話」という詩。

「(前略)これからの本統の勉強はねぇ
テニスをしながら商売の先生から
義理で教はることでないんだ
きみのやうにさ
吹雪やわづかの仕事のひまで
泣きながら
からだに刻んで行く勉強が
まもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない
それがこれからのあたらしい学問のはじまりなんだ
ではさようなら

  ……雲からも風からも
    透明な力が
    そのこどもに
    うつれ……」

わたくしのように無学でお金もない子供達への
賢治さんの愛情溢れるこの詩にも本当にいつもいつも勇気づけられたのでした。

この頃他に好んでよく拝見していたのは

・アストリッド・リンドグレーンさん
(長靴下のピッピやロッタちゃんシリーズの著者)

・カール・ラーションさん(スウェーデンの画家)

・ノーマン・ロックウェルさん(言わずとしれたアメリカの国民画家ですね)

・佐々木マキさん(わたくしはひつじ男のクリスマスでハマりました。)
等々。

佐々木マキさんやヴィークランドさんの影響で太めの
インク線を多用していた時期のイラスト


この時期にはまた、改めて「体が資本」という言葉を思い知り、病後の回復も良いという事で体作りも始めました。
運動不足解消の為様々なスポーツをしたり
トレーニングの効果を上げる為ストレッチやヨガを学び始めました。
人間、思いの外体を使っていないものです。
絵ばかり描いていると可動域も狭くなってしまうので毎朝ヨガをしたり、隙間時間にもストレッチやトレーニング。と今でも続いている習慣です。

・植物画との出会い


そんな猛勉強の日々の中、また件の編集さんからご依頼を受けます。
これがわたくしと植物画との出会いとなり、自分の進むべき道を示してくれる仕事となるのでした。

この本は編集さんの発案で企画されたもので
葉っぱの形で草の名前を調べる本でした。
今では形から調べるという調べ方はメジャーになりましたが、この当時は難しいとされていました。
というのも植物というのは同じ個体の葉っぱであっても生える部位によって葉の形が変わるものも多く、分類は不可能と言われていたのです。

ですがこの本は後に20年近く重版を重ねるヒット作となるのです。

20年選手。本当にありがとう


科学系の児童図書は重版したらラッキー
1万部売れたら大ヒットと言われていましたが
長い時間をかけ、この本はそれを大きく上回る程
版を重ねました。
制作に携わった誰もがよもやこんなに売れるとは思いもしなかったでしょう(笑)

・自然と植物画のご依頼が増えた

この本を出版後ありがたいことに「あの本を拝見して…」とお声をかけて頂く事が徐々に増え
いつの間に「植物専門」の冠がついていました。

それにはいくつかの理由があると思いますが
1番はやはりわたくしが植物が好きだったことに尽きると思います。
好きだと思えたからこそ沢山描き、そして自然と生態に詳しくなってきた。
例えば植物図鑑を制作するとしても担当の編集さんが植物に明るいとは限りません。
編集さんもイラストレーターに依頼するに当たって沢山勉強していらっしゃいます。
ですが専門画家であればあまり詳しい説明や資料は必要なくオーダーが楽ですよね。
加えて恐らく修正なども少なくて済む。
そこを突いたんだと思います。

この頃から後にライフワークとなる教科書のイラストにも携わらせて頂く事になります。
初めて自分の創作性の高いお仕事に携わりそして「トウドさんにお願いして良かった」と言って頂きました。
その時初めて、それまでにない「やりがい」のような物を感じました。
そしてそれを一生大切にしていこうと心に誓うのですが
それはまた長くなりますので(笑)
いずれまた「イラストレーターとして大切にしていることのお話」で後述したいと思います。

本当に今回も長くなりましたがお付き合い下さりありがとうございました🙏

ではではまた!


  Illustrator  トウド  ヤヨイ  (^_^)ノThanks!☆





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