今日は紫か。

東京に来て2年。
エレベーターホールから見える東京タワーが、紅白以外に染められていると気づいたのは、入社して3日目のことだった。それから毎日、逆三角形のボタンを押して、扉があくまでの時間、ぼんやりとその光を眺めるようになった。

この2年何も変わらなかった。
田舎から憧れの東京にでてきて、髪を切って、銀座で買った服を着て、芸能人に会って、ライブや舞台に行きまくって、シーシャなんかにも吸ったりして。
でも結局眠りにつくときは、あか抜けない2年分老けたの自分のまま。たいそうな仕事もしていなければ、恋人もいない。友人だってできていない、冴えないただの人。

東京には染まれなそうにない。
悲しいかな。今だって東京で一番好きなのは東京タワーだ。

「大人になるとあっという間に時が過ぎる」と、うざいほど繰り返された言葉に込められた、若さへの嫉妬と優越感に最近共感し始めてしまったのが少し悲しい。

このまま、染まれないまま、時間だけが過ぎていくのだろうか。
東京タワーは今日もそこにある。