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月が綺麗なんて 洒落たセリフなんかいらないから ただ二文字、好きをくれるなら 私死んでもいいわ

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      ブレーキばかりより、アクセル全開のほうが魅せられる。 車も人も。 そんなふうに自分を乗りこなしたいと思っても中々できなくて、 何年アクセルの危機が悪くなるばかり

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        初めはなんとなしだった。  そこにあるから手を伸ばした。 準備が要らなくて、文字を追うだけで楽しめる。 そして続きを待たなくていい。 めんどさがりの私にぴったりだった。 ゲームやインターネット、スポーツでもなく 小説を選んだのは、そんなもんだった。 そんなやつがこんな長い付き合いになるとは。 いや、そんなやつだから、なのかもな。

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          産まれ受けた使命を全うせずに死ぬことは 果たして不幸せなのだろうかと 床に転がる綿棒を見て思う私は何かが末期 君はサッシの掃除に使うとしよう

        月が綺麗なんて 洒落たセリフなんかいらないから ただ二文字、好きをくれるなら 私死んでもいいわ

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          布団の中で過ごす時間が増えた。 自分の温もりですら離しがたくなったことで、 本格的な冬が近いことを実感する。 昨日、友人カップルの家に遊びに行った。 プロポーズが成功して、今度結婚するらしい。 そんな純粋な笑顔を見たあとだからか、少し感情的になっているのだろう。

          女は忙しい。 お金は自分で稼ぐもの。 脱毛は当たり前。 歯は白く整っているのが良い。 髪はサラツヤで、頬は毛穴ひとつないこと。 そりゃ、パパ活もしたくなるだろ。 普通のOLがそれら全部を手に入れるなんて、どれだけ大変なことか。 そんなに大変なら、そんな誰かの声など無視して何もしなければ良いと言われるだろうが、私はそれを捨てられるほどの気概がない。ありのままを受け入れて欲しいとは言えない。 だって結局ツルスベ肌の柔らかでスレンダーな女性のほうが求められているから。 そんな

          隣に誰もなくたって、ラーメンは美味いし、ケーキは甘いし、イルミネーションは綺麗だ。 けど、誰か隣にいてほしいと願うのは、隠さず浮かれ倒したいからで。 11月15日を過ぎると、市街地からクリスマスが始まり、すぐに街中が輝き出す。 円安とか、電力不足とかはどこへ行ってしまったのか。 あんな暗い話ばかりしていた人々はどこへ行ったのか。 こんな能天気でいいのか。 なんて思ってしまうが、私はこの浮足だった街が好きだ。 昔の人の楽しそうなことにとりあえず乗っかる軽さと、作られたロマン

          シューズクローゼットに備え付けられた姿見でマスクと前髪を整えながら、今日のスケジュールをざっくりと思い浮かべる。 昨日承諾が出た契約書の処理と支払いの手続きはマストだが、それ以外に急ぎの用はないはずだ。 大丈夫、今日も完璧だ。と心の中で呟き、カバンを覗く。 あ、 一瞬迷って靴を脱ぐ。そして部屋右奥のサイドテーブルに置かれた文庫本を手に取る。 最近本が手元にないと落ち着かないのだ。 通勤や昼休みに必ず読むわけではない、そもそも通勤は徒歩だし、昼休みはスマホを眺めて終わ

          地下鉄に揺られながら、ドアの脇に佇む壮年の女性2人から目を離せなくなる。 特に騒がしいわけでも、派手な装いなわけでもない。マスクもしている。 ただ、全く同じ服装をしているだけだ。 服だけではない、髪型もアクセサリーも、カバンについたスヌーピーのキーホルダーも、マスクの色さえ全く一緒なのだ。 完璧な双子コーデである。 背格好や目つきさえも同じだから、本当に双子なのかもしれない。 だとしたら尚更どういう意図なのか。 ふと、何かの衣装かとも思ったが、カバンから取り出され

          服のままベットに上がる君が嫌いだった。 そんなこと言わなかったけど 結果は変わらないのに 君に合わせてばかりだ Netflixのお気に入りも見尽くして おすすめされたドラマも観てみたけど 僕には甘すぎて、少し胸焼け 桃の香りがする頬に見惚れて 話せなくなってしまった 離れない視線にうんざりするのに、 まだこのままで、、、 「こんなの初めて」って言葉に乗せられて 増えたレシピと調味料 思ったほど減らないな 君は忙しいんだね。 なんか綺麗になったね 新しい服かな、似合って

          淡い水色のキャンドを、皆一様に頬の横に掲げている。 社内サークルの活動写真が電子掲示板に投稿されていたのだ。 講師はいつもせかせかとパンプスを鳴らしている総務部の実家暮らしをしている40代の女性のようだ。 そういった催し物が開催されていることは電子掲示板で知っており、だれが参加するのだろうと薄ら笑っていたのだが、画面には12,3名の男女が並んでいた。 記事を開いてコメント欄までスクロールすると、賛辞と感謝が連なり、朝に食べたヨーグルトの酸っぱさが喉の奥に思い出されたが、右

          僕が大人になるにはまだ早すぎる。 20歳になった時の感想はそれだけだった。 合法的にお酒が飲めるとか、タバコが吸えるとか、選挙権がとか、 そんなものはどうでもよかった。 だいたい、20歳まで酒を飲んだことのないやつは多分一生酒を飲まないし、選挙権があったところで政治家が僕らのことを気に掛けるわけがない。 ただ、僕はそんなことを考えてしまうくらいに子供であるという自覚があった。 だから、「20歳=成人」は僕には適用しないでいただきたい。 そもそも、年齢と人間的成熟度は一致

          今日は紫か。 東京に来て2年。 エレベーターホールから見える東京タワーが、紅白以外に染められていると気づいたのは、入社して3日目のことだった。それから毎日、逆三角形のボタンを押して、扉があくまでの時間、ぼんやりとその光を眺めるようになった。 この2年何も変わらなかった。 田舎から憧れの東京にでてきて、髪を切って、銀座で買った服を着て、芸能人に会って、ライブや舞台に行きまくって、シーシャなんかにも吸ったりして。 でも結局眠りにつくときは、あか抜けない2年分老けたの自分のまま

          あちこちから再会を喜び、この後の予定を確認する声が聞こえる中、入り口で配られたA4両面刷りの研修資料に目を落とす。 今日は入庁して6か月目の同期研修である。 半年前はピシリとしたリクルートスーツに身を包み、新たなコミュニティに疲れをにじませていた面々も、多少の華やかさが増した衣装で、通常業務から解放されたことに対する喜びをにじませていた。 みんなそんなに仲が良かったのかと驚く。 研修なんて半月しかなかったし、いつもメンバーは入れ替えられていた。 私の配属された部には同期が

          「従妹のしんちゃん、結婚するらしいわよ。あんたショックなんじゃない?」 あぁこの人は幸せなんだろうな。そう思わずにはいられない。 昔からそうだ。 またそんなぬいぐるみにお金使って。帰ってくれば?あんたの良さをわかる人が見つかればいいんだけど。そんな仕事いつまで続ける気? 自分が正しいと思うものが、全世界共通事項と信じている。いや、全世界とは言いすぎかもしれないが、自分が育てた人間はそう思うであろうと疑わないし、それを押し付けることが傲慢で痛々しいことだと気づかないのだ。