成功するパネルディスカッションイベントの企画方法とテンプレート
こんにちは。株式会社才流でマーケティング部門長をしている轟(https://twitter.com/BizTodo)です。
最近はパネルディスカッション型のウェビナーがかなり増えてきたな、と感じています。体感、お誘いいただく大型イベントの7-8割がパネルディスカッションです。
イベント担当者がパネルディスカッションを選ぶ理由はいくつか考えられます。
自社でテーマを決めてゲストに依頼する都合上、ゲストが都合よく講演資料を持っていない可能性が高い。ゲストに資料作成まで依頼するのは忍びないため、パネルディスカッションが選ばれる。
ウェビナーの企画にマンネリ化していて、パネルディスカッションにトライしている。
せっかく複数人集まるのだから、プレゼンだけだと勿体無い。共催のメリットを最大限活かしたい、など。
パネルディスカッションは、上手く企画すればとても盛り上がるイベントになります。
しかし、パネルディスカッションの企画や準備のメソッドはほとんど世に流通しておらず、プレゼン形式のウェビナーに比べ多くの課題があると考えています。
企画の打ち合わせをしすぎて、内容が予定調和的になる
大枠のテーマだけが指定されていて、パネルテーマについてはゲストに丸投げ運営
その結果LP記載のテーマから逸れたパネルディスカッションになり、受講者の期待値とズレる
抽象的な話が増えすぎて、受講者にとって得られるものがない
残念ながら、こういったパネルディスカッションも増えていると感じています。
このような課題感に基づき、この記事では才流で実際に運用しているパネルディスカッションの企画方法と、企画のテンプレートをご紹介します。この記事でご紹介しているメソッドは、オフライン・オンラインいずれのイベントにもご活用いただけます。
2023年7月に主催したPMFカンファレンス2023は、実際にこの方法で企画運営しています。
なお、パネルディスカッションのテンプレートについてはLIGのまこりーぬ(https://twitter.com/makosaito214)さんが使っていたものを参考にさせてただきました。ありがとうございます!
パネルディスカッションイベントの企画テンプレート(Googleスプレッドシート形式)をダウンロードする
パネルディスカッション企画の「難所」
パネルディスカッション企画の最大の難所はずばり「何をどこまで準備したら良いのか、ゴールが見えない」ことでしょう。
プレゼンテーション形式のイベントは、「当日に向けて資料を準備する」というわかりやすいゴールがあります。しかし、パネルディスカッションには明確なゴールがないため、途端に何をどこまで準備しておけば良いのかわからなくなるのです。
ゴールが見えなくなったときにやってしまいがちなパターンは2つです。
1つは、「ぶっつけ本番に任せる」という、いわば準備を放棄するパターンです。ファシリテーター、パネリスト含めパネルディスカッションに慣れていればなんとかなるかもしれませんが、おすすめはしません。大きく失敗するリスクがあります。
そしてもう1つはその逆。入念に準備しすぎるパターンです。パネルディスカッション初心者は、このパターンの方が多いでしょう。「当日の流れが読めず不安なあまり、入念な打ち合わせを何度も実施してしまう」というのは、パネルディスカッション初心者がやりがちなミスです。
詳しくは後述しますが、パネルディスカッションにおいては準備のしすぎも毒になるのです。準備のしすぎには「準備のときに面白い話が出てしまい、当日盛り上がらなくなる」「セッションが予定調和的になってしまう」などのデメリットがあります。
準備しなさすぎてもだめだし、準備しすぎてもだめ。つまり、パネルディスカッションにおいては「準備の勘所」を抑えることがとても重要です。
本記事でご紹介するパネルディスカッションの企画シートは、まさにこの「準備の勘所」を抑えられるような作りになっています。
パネルディスカッション企画のポイント
パネルディスカッションの企画テンプレートをご紹介する前に、まずは企画のポイントをご紹介します。
1. パネルテーマを具体的にしすぎない
最初から具体的なパネルテーマにしてしまうと、回答が限定されてしまいモデレーターも広げようがなくなってしまいます。伝えたいメッセージから逆算してパネルテーマを考えると、こうなる傾向があります。
最初はバクッとしたテーマを投げかけておいて、パネリスト全員で掘り下げていくほうが参加者の理解が深まりますし、掘り下げ方にバリエーションが生まれるためセッションが盛り上がります。
パネルテーマを考えるときは、いったんパネリストに聞きたいことをブレストしてから設問を抽象化・集約していく流れがおすすめです。
たとえば、当社が開催した「PMFカンファレンス2023」の「大企業×新規事業〜社内を巻き込みモメンタムを生み出す秘訣〜」のセッションでは、以下のようにパネルテーマを検討しました。
このままだとパネルテーマが具体的すぎるため、これらを集約したり抽象化したりします。
そのほか、才流がパネルディスカッションを開催したときのパネルテーマ例を記載しておきます。設問の粒度を考える際の参考にしてください。
2.セッション全体のストーリーや盛り上がりを意識する
たとえば、「新しい市場をどのように開拓するか」をテーマにパネルディスカッションを企画したとします。
上記の例には、大きく2つの改善点があります。
1つは、盛り上がりの観点です。たしかに市場を攻略する上でのリスクや撤退の考え方は視聴者の興味かもしれませんが、最初からリスクや撤退について切り込むのは盛り上がりにかけそうです。
もう1つは、それぞれのテーマの関連性・脈絡が薄いことです。撤退ラインの話から製品価値の話になり、最後に営業の話になっていますが、それぞれに関連性が薄いためどこか違和感のあるセッションになってしまっています。
これを改善すると、以下のようになります。
市場参入→市場開拓→後発への対処法→撤退基準やリスクの考え方、という流れが作れているため、違和感のない全体セッションになっています。
3.企画の打ち合わせをしすぎない
パネルディスカッションイベントに慣れていなかったり、準備の方法がわからなかったりすると、「とりあえず打ち合わせ」になりがちです。冒頭にも述べましたが、これはパネルディスカッションのアンチパターンだと考えています。
パネルディスカッション企画のよくある現象として「打ち合わせほど面白い話がでてしまい、打ち合わせで大盛り上がりしてしまう」というものがあります。
そして、「この話、そのまま当日に使えますね!これで行きましょう笑」となるものの、当日に同じ話を同じテンションでするのは難しいのです。
1度パネリスト同士もモデレーターも聞いている話なので、最初に話したときのように盛り上がらず、どこか予定調和的になってしまう。打ち合わせしてしまうと、当日にとっておくべき話を、打ち合わせの場で消化してしまうリスクがあるのです。
そのため、当日話す内容の打ち合わせは最小限にとどめ、ゲスト同士の面白い話は本番にとっておきましょう。
ただし、ゲスト同士が完全初対面でも緊張して話づらいと思いますので、顔合わせは実施しておきましょう。顔合わせでは、当日ディスカッションする内容を詰めるというより、ゲスト同士の相互理解を深めることに重点をおくと良いです。
パネルディスカッションの企画シートの使い方
この章では、企画シートの使い方をご説明します。
企画シートは、こちらからダウンロードください。
B列「パネルテーマ」欄には、想定パネルテーマを記載します。
パネルテーマは少し多めに記載しておくことをお勧めします。たとえば、1時間のパネルディスカッションなら当日扱えるテーマは4〜5問程度ですが、6〜7問程度用意しておくと安心です。
多めに用意した中から当日盛り上がるものを選ぶためです。パネリストが複数人いれば、かならず「この設問は答えづらい」といったものがあるはずです。
多めにテーマを記載しておくと、どのパネリストも回答しやすく、盛り上がりやすいテーマを選べるようになります。パネリストが答えやすい質問は、シートを埋めて貰えばすぐにわかります。
C列には、パネルテーマの補足説明を記載します。ここには、パネルテーマの意図を記載したり、特にパネリストに回答してほしいことを記載したりと、パネリストに対するメモ欄として活用します。
G列はモデレーターのメモ欄です。ここには、モデレーターが深掘りしたいところや、運用上の注意点などを記載していきます。
シートが埋まったら、シートをパネリスト各社に送付します。期日を設けて回答してもらいましょう。回答は箇条書きでも文章でもどちらでもいいですが、簡潔に要点だけ記載してもらうようにしましょう。
シートが帰ってきたら、モデレーターのメモ欄に深掘りしたいところや、どの会社に何を振るのかなど、頭の中でシミュレーションしながらメモしていきましょう。
モデレーターは、当日こちらを進行台本がわりにすると良いでしょう。
パネルディスカッションに関するよくある質問と回答
パネルテーマはいくつ用意しておけば良いでしょうか?
1時間のイベントなら7つ程度を目安に用意しておきましょう。1テーマ10分〜15分と考えると、実際に消化できるトピックは5つ程度と思われますが、多めに用意しておくことで盛り上がるトピックを選べます。
パネルディスカッションにおける質疑応答はどのように設計すれば良いでしょうか?
パネルテーマに関連する質問であれば、ファシリテーターが拾ってパネリストに質問すると良いでしょう。関連しない質問を拾ってしまうと、話が発散してしまいます。
パネルテーマに関連しない質問であれば、いったん置いておき、最後にまとめて回答するQ&Aの時間を設けると全ての質問に対応しやすくなります。
さいごに
本メソッドがパネルディスカッションイベントのクオリティアップに役立てば幸いです。よいイベントライフを!
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