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かぞかぞ④ 何かお手伝いできることありますか?

なんで毎回Noteに書いてまうんやろ?書くって決めたわけでもないのに…でも、みたら何か書きたくなる。『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』はそんな不思議なドラマです。

ドラマっぽくない演者たち

「かぞかぞ④」は手をつないで道を歩くひとみ(坂井真紀)と耕助(錦戸亮)から始まる。ひとみのお腹には七実がいる。
耕助「大丈夫?」
ひとみ「大丈夫。歩くのはお腹にもいいんよ~」

過去と現在のカットバック多めの回で、様々な困難を湿っぽくならずに乗り越えてゆく気持ち良い物語だ。2人の足元のカットに車椅子の車輪がインして現在に切りかわるが、錦戸亮特有の歩き方がほんのり残っていた。速足でたったかヒョイヒョイ歩く。収録が終わるやいなやサ~ッと前室を抜け、エレベーターに向かう感じを思い出し、懐かしい(笑)。
回想では、2人で手をつなぎ坂道をのぼっていくが、独りで坂道を車椅子でのぼろうとするひとみは力尽きて途中で休み、涙が出そうになる。通りすがりの女性が声をかける。
女性『大丈夫ですか?』
ひとみ『大丈夫です』 
女性『よかったら押しましょか?上でいいですか?』
ひとみ『はい』  
七実のモノローグ『パパとママが2人で歩いてきた道を、見てきた景色を、私は知らん』

七実役の河合優実さんが、普段どんな感じか全く知らないけれど、七実の普段の姿が「徹底的に普通」なのがとてもいい。着こなしも「衣装」というより「着てる服」にみえるし、歩き方や眠そうだったり半目だったりの表情など「全くドラマっぽくない」のが素晴らしい。LAMB CHOPと入り羊がチョップする絵のTシャツも、いったいどこで買ったか分からない独特なテイスト。これは、おばあちゃん(美保純)のTシャツ趣味の隔世遺伝かも(笑)。

ポロっと出る言葉がポジティブ

大学の教室で『ルーペ(Loupe)という名の会社を起業しました。よろしくお願いします』と車椅子で演説する首藤颯斗(丸山晴生)の言葉に閃いた七実は、早速、自分を売り込む。あなたは、何が出来ますか?と問われ、「デザインが得意なのでホームページを作りれます!スタイリッシュな」と、デザインなど出来もしないのに断言する。盟友、マルチとのやり取りも健在で嬉しい。ルーペの2人が去った後、マルチに「手に入れたいもののためにウソをつくようになりましたか」と言われても七実は

「このウソは真実に変えられるウソや。それにこの出会いは運命や。あの人たちとやったらママのために世の中を変えられる」
とブレない。
七実「虫メガネ軍団(ルーペのこと)の仲間に入れてもらわんと」
マルチ「真実も運命も思い込みから始まりますもんね」
七実「せや」

余談だが、身振り手振りの大きいマルチのアクションに添えられるSE(効果音)は、ピチャッ💦という水の音なのもいい。マルチのサクセスウォーター(成功水)からのイメージか?うん、なんか好きだ。

何気ない描写も秀逸

「かぞかぞ」には隙が無い。ちょっとした何気ない描写も秀逸なのだ。
家で、ベッドに横たわるひとみの世話をした七実の足元を俯瞰で映し、足元に落としていたティッシュをポイっとゴミ箱に捨て、足でどかし部屋の外に行く。ひとみがベッドで使ったティッシュを捨てようと手を伸ばすが届かないか、、と思った瞬間、戻った七実がティッシュを手に取り、ゴミ箱に捨ててベッドサイドの定位置にもどす。短い2カットだが、色んなことを当たり前に、流れでサッサとこなす日常の様子がよく分かる。

ルーペで会議をする際、七実が逐一リアクションで喋っていたら、七実は『黙ってメモを取るように』と言われ、
七実『ハイハイ、黙って、心で喋ります』とエコーをかけた声でモノローグ
そのあと、心で喋りまくるエコー声がまた、オモロいのだ。ホント、隙あれば何やかや放り込んでくるドラマだ。飄々とした流れに、肝になるやり取りがスルリと挿入される。気が抜けない。

首藤「なんでそんなに頑張るの?」
七実「母を喜ばせるためです」
首藤「お母さんの喜びは岸本さんが頑張ることなん?」

画面の隅々まで見事に描いてある&集団コント

病院のリハビリ室が広く映し出され、ひとみと看護師がいて、下手にはおばさんと兄さんが、上手には車椅子にぐったり座っている男性がいる。そこで
母のひとみから、ポジティブな言葉が出る。


ひとみ「フリしてたらホンマに笑えるようになるんです。辛い時こそ笑うフリしてました。主人が亡くなった時、知人に言われたんです『子供の前では大丈夫なフリせえや』って。『お父さんが亡くなってしんどいのに、お母さんが泣いてるのを見るんは同じくらいしんどいんや』って。でも私、大丈夫なフリして笑うだけでいいんや!って、ホッとしたんです」

ひとみの話を聞いていたリハビリ室の人たちは深く納得し、一斉に「笑いましょう!」と声を合わせる。すると、上手にいた車椅子の男がスクッと立ち上がり、患者の男/きづき『立った‼‼‼』と大声。皆は『ひとみさんの奇跡や!』と驚き、そこにいた女性は『今朝死んだハムスターが生き返った!』と叫び、皆、声を出してまたそのキセキ驚く。
と、そこに男が観葉植物に倒れかかって登場し、看護師/田山由起 が『佐々木先生か‼‼びっくりした‼‼』と叫ぶ。佐々木先生(男)/佐藤貢三 は、立ち上がった奇跡の男を指差し『あれはぐっすり眠っていた研修医や!しかも25歳や‼』と大声でこたえる。ま、単なる偶然が重なったというだけだが、そのテンポや間合いもバチっと決まった集団コントシークエンスはお見事でした。大事なことをオモロく伝える大九監督の手腕と、演者たちのチームワークに一寸、感動した(笑)。

かつての耕助(錦戸亮)の回想と余談

パパ耕助が生きている時の回想もたっぷりあった。気取らない、気張らない錦戸亮がまた、いい。家族みんなで乗れる大きい車を買ったパパは言う。
耕助「北欧の車、VOLDO」 
どう見てもVOLVOなのをVOLDOというNHK独特の感じがまたツボでした。
余談だが大九監督は錦戸亮の趣味も程良く取り入れてるような気がした。

VOLDO

【余談】ずいぶん前(「ごめんね青春」か「オルトロスの犬」の頃)だが『アメ車買うたんや、はよ乗りて~』って言ってて、デカめの車が好きなんは、6人家族で育ったからかも?とか思った。ある時は『これ、革ジャン買うたんや、なんぼやったと思う?』『〇〇万円?』『ちゃう!〇〇万円のを〇万円‼‼(笑)』『いい買いもんしたね、ちょうだい』『なんでなん、いやや(笑)』みたいな会話も思い出した。 戻ります。 

耕助の何気ないが、いいセリフもあった。
耕助「楽しくない日なんてオレが許さへん」

余談ついでに、錦戸亮がカバーした吉幾三のとも子を貼っておきます。語り部分も含め、見事なパフォーマンス。錦戸亮に興味がない方々には必ず見てもらう動画だ。皆、驚く。

草太から教わったこと

七実とひとみに荷物が届き、草太が受け取る場面が2つある。毎回『ありがとうございます』とハッキリ、丁寧にお辞儀をする。2回でてきたので思ったんだけど、ついつい挨拶が口先だけに、おざなりになりがちだなぁ、と反省してしまった。これからはもっとキッチリ挨拶をするようにしたいと草太をみながら思った。草太がサッカーで活躍し、パパママが喜ぶ回想場面や、立派な行動をして周りに褒められる場面もあり、草太の良さが描写される。

首藤のことば

「人からありがとうと言われた時、もちろん言って欲しいわけじゃないよ。車椅子になった時もう人から感謝されることはないと思っていたから人から感謝されると嬉しいんだよね」
「障害者にとって嬉しいことは、誰かに何かをしてもらうことではなく、誰かの役にたつこと」                     「お母さんの喜びは岸本さんが頑張ることなん?」

バリアフリー化する駅ビルのコンペ

ルーペの広報として採用された七実は、コンペで母ひとみにスピーチしてほしい、とひとみの足を洗いながらお願いしてみる。嫌やと断る母になんで?と理由を聞くと
ひとみ「なんでって、人前なんて出たない。恥ずかしい」
七実「ママの世界も広がると思うよ」
ひとみ「広がらんでええわ」
七実「ママの存在が必要やねん」
ひとみ「必要って…もの珍しい目で見られるだけや。七実もこの足見て(瘦せ細っている)変わったことに驚いたやろ?そんな風に色んな人に同情される様な目で見られたくない」
七実「同情?同情なんてしてないわ」

七実と一緒に草太を迎えに行った帰り、あの坂道にさしかかる。途中まで七実が車椅子を押していたが、ひとみが「自分の力でのぼってみたい」と言い出す。力を振り絞って坂道の上までたどり着き、喜ぶ。そこで、コンペを引き受けると決意する。
ひとみ「しゃーない!やったるか‼‼」
その瞬間、3人の後ろを路線バスが通過する。ひとみの決意した心情とシンクロしてバスが現れたのは、収録のミラクルだと思った。うまくいく時は、色んな偶然が重なって、映像の魅力が増すことがある。大切な場面はヒキ絵でみせる(その方が集中して言葉や遠くの表情に集中したりもする)ことがあるが、この場面はバスのタイミングがバッチリだったのでロケ現場が盛りあがったような気がする(笑)。

ひとみナレーション「障害のある人も無い人も、困っている人がいるとき『大丈夫ですか?と声をかけがち』だと思うんです。そうではなくて『何かお手伝いできることありますか?』と聞くだけでずいぶん変わると思います。大事なのは困っている方が答えやすくすることです」

ひとみのスピーチのお蔭で、プレゼンが成功して仕事が決まった。そしてルーペの人たちや皆が口々に「ありがとうございます」とひとみに感謝する。それを聞きながら、まるで自分がありがとうって言われているような気持ちになりました。

七実ナレーション「ルーペのアドバイザーとして、ママが見てきた景色を人に伝える仕事を手に入れた。パパがいなくなってもママは歩けなくなっても、ママとパパが歩いてきた道は続いていた。私と草太、家族みんながこの先ずーっと歩いていくんやろう』

来週が待ち遠しい!
P.S.
おばあちゃんのショートヘアーがズラだったという不意打ちには吹いた(笑)

可愛いTシャツ好きのおばあちゃん

家族だから愛したんじゃなくて、愛したら家族だった
【出演】河合優実/岸本七実,坂井真紀/ひとみ,吉田葵/草太,錦戸亮/耕助,美保純/大川芳子,福地桃子/マルチ(天ケ瀬環),丸山晴生/首藤颯斗,奥野瑛太,佐藤貢三/佐々木,きづき,森岡龍,田山由起,ほか 草太担当:安田龍生【原作】岸田奈美,【脚本】市之瀬浩子,鈴木史子 他【演出】大九明子


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