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#44絶対彼女

飯田エリカさんと共にやっているPodcast"保健室"に、「ほろ酔いのまいぷにさんと世の中の歪みや女の子の仕事の誇りについて語らう、保健室」というエピソードが更新されました。

前回、前々回から引き続き塚本舞さん(まいぷにさん)がゲストに来てくださっていて、これまで恋愛観を中心に楽しくトークをしていただいていました。3回目の今回は、そこからまたもう一歩深いところへいって、性的な話題を含む女性の方からのお悩みに関わる投書を読んでお話をすることになりました。

投書を要約すると、「性に関わる仕事をしているけれど性に関わる話をするのは苦手な私に、プライベートでのセックスやオナニーに関する質問を気軽にしてこられること/それについて口にすることに抵抗がある」という内容でした。

それに対して塚本さんは、「お金発生してないところでそんなサービストークしなくてよくないですか?」と優しくきっぱりと言い切ります。私も職業柄、SNSなどで販促の一貫やサービスとして、性的な質問に答えたり、自宅で私物の下着姿で自撮りをして載せたりしていましたが、当時のマネージャーのとある一言によってそのスタンスを改めることにしました。

 当時出演していたネット配信の番組で、水着や露出度の高い衣装を着用する際、そのままだと角度によっては危ういのでニップレスやアンダーショーツを着用する必要があるな、と思いどこに用意があるか聞いたところ、「事故を期待しながら撮りたいから、付けないでほしい」と言われたことがありました。ここでの「事故」は、「うっかり水着の中が見えてしまう=望まないヌードが映像に撮られること」です。詳しくはPodcastの中でお話ししているのですが、これはただの一例で、まったく釣り合っていない対価と口車によってお得に性的興奮を得ようとする例はいくらでも見受けられます。FANZAのセールなら200円くらいで正当なルートで買えるのにもかかわらず。……当時のマネージャーはとてもまともな人で、衣装として用意されていないなら自分の下着は見せてはいけないし、安全に撮影できるような用意が番組側でされていないのはありえない、ときっぱり言い切ってくれました。よく考えたら当たり前のことなのですが、それから、対価とあまりに釣り合っていないサービスについては、自分の精神の健康のためにも抑制するよう努めるようになりました。

 そういった姿勢は、どんどんサービスをしてファンを増やして自分の市場価値を高めていこうとする全体のムーブメントとは異なり、わたしはいささか面倒で、思い通りのサービスをしてくれない頭の硬い女優と思われるようなことにつながっていった気がします。そのことを、本当にこれでいいのかと後悔しそうになる日ももちろんありましたが、今回塚本さんとお話しできて、その強い意志と、折れそうになりながらも"セクシーな職業"としての矜持を守るすがたにとても勇気づけられました。

 塚本さんのいたグラビア業界や、わたしのいるAV業界の女の子たちはもちろん、性風俗で働いている女の子たち、SNSに下着姿の自撮りを載せていいねをたくさんもらっている女の子たち、彼氏に尽くしすぎてしまう女の子たち、アイドルやコンカフェで働いている女の子たち、とても色々な立場の女の子たちが、女の子として生きていると必ずといっていいほど直面するおおきな問題について、塚本さんと飯田さんと三人で語り合っています。

 それは男性にとっても、仕事や人間関係などあらゆる場面で置き換えられる話かもしれないし、はたまた無自覚に世界の歪みに加担していることに気づいてしまう瞬間さえあるかもしれません。それでも、誰かの人生を強烈に否定したい気持ちで喋っている人はここにひとりもいなくて、どうか苦しいひとが一人でも減って欲しい、必要以上に、釣り合っていない対価でなにかを差し出し続けなければ承認を得られないこの世界の苦しさについて、ほんの少しでもいいから一緒に考えたい、できるだけあなたと助かりたい、という祈りが込められた対話です。

 飯田さんが言っていたお話しですが、今回のこの塚本舞さんの語り口の気高く"かわいい女の子"の人生を生きる姿は、わたしが初めてまいぷにさんを生で見た数年前の大森靖子さんのライブで、「絶対彼女」を歌っている姿に重なりました。わたしは自分のことを女の子、とあまり強くは認識しておらず、たとえば「女の子って最高!」という歌が聞こえてもそれ自体は最高だな、と思いつつもピンポイントで自分のことを鼓舞してくれているとはあまり思えないたちなのですが、それでもあえて、自分たち、と言う意味で「女の子」という言葉を使うべきだと感じるときがあります。女の子として生きることには、あまりにも苦しみがつきまとうからです。ほんとうは自分の生まれた属性を憎むなんてこと、ハッピーじゃないからしたくないけれど、それでも「女の子」であることを悔しいと思うようなことがあまりにありました。これは、きっと本当に多くの女の子が近い気持ちなのではないかと思います。それでも、あの時塚本舞さんが、まいぷにさんが大森靖子さんと共に歌っていた「絶対彼女」の「絶対女の子がいいな」という歌詞は、嫌なものになりかけている「女の子」という概念をもう一度、好きになれるように歌い直してくれるもののように感じました。泣きたいくらい悔しくても歌い直して、それでも女の子がいい、と言い続けたらいつか大好きなピンク色も着られるかもしれないし、かわいいって言葉が呪いじゃなくなるかもしれないし、苦しかったことよりもこれでよかったと思う気持ちのほうが強烈に光るときがやってくるかもしれないから。

 そんなふうに、「絶対彼女」を聴いてなんとかがんばってきた女の子たちにぜひ聴いて欲しい回になりました。塚本さんゲスト回、#41から今回まで計4回に渡ってアーカイブが残っているのでぜひお時間作って聴いてみてください。もちろん今回の#44から聴いていただいても大丈夫です。


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