見出し画像

アイスピック

守るものがある人間は、失うものがない人間には適わない。失うものがないと思っていた頃の自分にも敵わない。それを知ってからすることは、勝ち負けの世界を生きることをやめること、価値観を自分の手のもとに引き寄せ、取り戻すこと。失うものがなかったはずなのに、たくさんのものを失ってしまったね。持っていることを知らされていないままの、素敵な持ち物というのは君にも絶対にあって、それはいつも、失くしたあとの空洞のかたちをなぞることでしか知ることができない。どんなふうに良かったのか、それさえも解らないままこの世界から失われてしまう。私は特別生きるのが下手なのだろうな、と思うのは、結局いつも誰かに触れようとするとき、傷つくことでしか終われないからだった。友達は作らない。いつまでも、いつまでも、自分のことを時空の歪みが生んだ黒い鉱物のようなものだと思っている。

ここから先は

1,592字
定期購読をしている方一人ひとりの存在が私にちゃんと更新をしなよと良きプレッシャーになってくれる気がするので、いちクリエイターの応援としてぜひお願いします。

個人的な雑記・iphone収録ひとりしゃべりラジオ・月1回の購読者限定ツイキャスのパスワード配信など、雑多で手作り感満載なコンテンツがお楽…

ありがとうございます!助かります!