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私たちが【新古本】を販売する理由。

戸田デザイン研究室は、2018年から自社ホームページにて「新古本販売」をスタートしました。

どこか耳慣れない【新古本】と言うことば。
「新しくて古い本?それは一体なに?」「古本と何が違うの?」という疑問を覚える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では【新古本】とは何なのか、なぜ私たちが新古本販売を始めたのかをお伝えできたらと思います。

■少しのダメージで販売不可になる本がある。

本には[上製本]と[並製本]があります。
[上製本]は、硬い表紙の本。ハードカバーとも言われます。文芸書や美術書などの多くがこの形です。絵本などはほとんどがこれに含まれます。

[並製本]は、いわゆるソフトカバーのもの。文庫や新書、ムック本、実用書なども多くがこのタイプです。

本の仕事をしていると、製造途中や輸送過程や流通現場で、本に傷や汚れが付くことは珍しくありません。
その時、並製本は本の3辺をキレイに削り復活させることができますが、上製本はそれができないため少しのキズや汚れがあると「不良品・販売不可」とされてしまいます。

絵本はプレゼント需要も多いので、その選別は仕方ないと思うのですが、その「販売不可」とされた本の多くは、最終的には処分されてしまいます。

■立ちはだかるコスト問題。


長年、絵本を作り 、販売してきた私たちの作品の中にも、少しの傷や汚れで販売不可となり、断裁となったものがたくさんあります。

そうした現実を目の当たりにする度に、「手塩にかけて作った本たち。十分、読めるのに もったいない!」と強く思ってきました。

さらにお客さまからのニーズも感じていました。
少し傷があってもそれでいいと思う方もいるだろうし、例えば幼稚園や保育園の備品などでは多少の傷よりもできるだけ安くたくさんの本を集めることも必要な場合もあるでしょう。

「そこまで分かっているなら、どんどん売っていけばいいのに!」と思うのですが…ここで大きな問題が立ちはだかります。それはズバリ、手間=コストです。

傷や汚れの程度に関係なく「販売不可」と判断された本たちは、まとめて不良本として戻ってきます。

その不良本すべてに目を通し、使えるもの・使えないものを選別し、使えるものを通常の新本とは別の在庫として再び流通させていくというのは大変な手間(コスト)がかかる。
つまりは処分や丸ごとどこかに寄付した方が経済的には効率が良いのです。


■価値のあるものを、適正な価格で販売していく。


もちろん、まだ十分に読める本を寄付することも大きな意味があると思います。

ただ私たちは、そのモノの価値も十分にありニーズもありそうなモノには、まず、キチンと相応の値段を付けて販売していくのが筋ではないか、と考えます。

それがこの仕事を生業とすることであり、そういうことをキチンとしていくことがムダをなくし、ひいてはモノの価格を適正なものにしていくことにつながると思うのです。

【まだ誰も読んでいないのに、少しのダメージで販売不可となった本を私たちの手で売る】。
長年考えてきた構想ではありましたが、2016年に自社ホームページを作ったことをきっかけに、その準備を始めました。

■効率を超えて見えてくるもの。


前述の通り、【まだ誰も読んでいないのに、少しのダメージで販売不可となった本】を再び販売可能な状態まで持っていくには、かなりの手間がかかります。

私たち戸田デザイン研究室は小さな会社です。費用のかさむシステムをドンと投入、人材を集めてすぐに解決とはいきません。
しかし、きちんと意義を理解し、できることから小回りを効かせてコツコツと進めていくことは得意!

ある程度の冊数が溜まった不良本を事務所に引き上げ、「子どもと普通に読むのに問題ない」を基準に、まだ販売可能な本をスタッフが1冊ずつ検品・選別。基準をクリアしたものを【新古本】とし、通常の半額以下で販売することにしました。

正直に申し上げて、効率の良いサービスではありません。
私たちの力の及ぶ範囲から始まる小さな取組みであり、社会的インパクトがある訳でもありません。

けれど、デザイン・モノ作りを生業とする私たちが、まず行動すること。それが、これからのモノと人との関わりを考えるきっかけになる。そう信じてサービスを継続してきました。

サービスを始めてから約5年、施設関係の方や、年齢の近い兄弟・姉妹がいるご家庭など、たくさんのお客さまからお喜びの声をいただくと共に、私たちの取り組みへの共感の声もいただいてきました。とても有難いことです。

書籍を取り巻く一つの問題を お客さまと一緒に解決している感覚も味わうことができ、大きな喜びとやりがいを感じています。

■これから求められること。


SDGsと言うことばもよく耳にするようになりましたが、近年、あらゆる業界・企業に社会をより良くするための取り組みが求められるようになってきました。

今の社会を考えても必要な流れだと思いますが、こうした動きを一過性のものにしては意味がありません。

そのためには根幹を見つめ続けること。
自分たちの本業は何か。何を大切にし、どんな価値をお客さまに届けているのか。
そして時に自分たちが属する業界の問題は何か。社会や環境に対し、どんな負荷を抱えているのか。

自分たちの存在意義や行いを、客観的な視点を入れながら問い直す作業を丁寧に繰り返し、できることを一歩ずつ形にしていくことが必要だと感じます。

ですから私たちも【新古本販売】を始めた目的や意義を見失うことなく、このサービスを大切に育てていきたいと思っています。


■『いつものもしも CARAVAN 池袋』で新古本を販売します。

「防災×健康×アウトドア」をテーマに、株式会社良品計画が開催するイベント『いつものもしも CARAVAN 池袋』。

大人も子どもも楽しく防災を学ぶきっかけに開催される当イベントのバザールブースに、弊社も出店します。
通常、自社ホームページのみの販売となる新古本を取り揃えてお待ちしています!

・開催日:2022年5月21日(土)ー22日(日)
・時間 :10時ー16時(両日)
・場所 :としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)

■弊社の新古本販売についてはこちらをご覧ください。