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「匠の技の可視化」で目指す、学びの質の向上

このコーナーでは、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングによる「戸田市未来の学び応援プロジェクト」について、「匠の技の可視化」に取り組んだ小学校の実践について紹介いたします。


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1.そもそも「匠の技の可視化」とは?

 業務量の増大により教職員の研修時間の確保が困難であること、ベテランの大量退職に伴う若手の大量採用などに直面している現状において、教職員の指導力向上は喫緊の課題です。

 さらに、優れた教職員の指導技術「匠の技」はその教師の経験や感覚に基づく属人的なスキルになりやすく、伝承や普及が困難になることが予想されます。

 戸田市では「脱・経験と勘と気合(脱・3K)」を教育改革のスローガンの一つに掲げ、授業改善を進めており、まさに匠の技の可視化は、他の教師への効果的な伝承を可能にし、子供たちの学びの質の向上に繋がるものであると考えております。

 そこで、戸田市では令和3年度より、ハイラブル社のたまご型レコーダーを使い、匠の技の可視化に向けた研究を進めてきました。

2.たまご型レコーダーでできること

たまご型レコーダー

 「たまご?」と思われた方もいるかもしれませんが、この「たまご」、見た目のかわいさからは想像できない力を持っています。

 グループごとに話し合いをする際、このたまご型レコーダーをグループの中央に置き、簡単な初期設定をすると、「誰が」「いつ」「何を」話したかを記録することができます。さらに、会話を定量的に見える化してグラフやレポートにすることで、子供たち自身や教師が話し合いを客観的に振り返る手掛かりとなります。

ハイラブル株式会社HPより

3.対話量の可視化から見えてくるもの

 これまでの実証から次のことが見えてきました。

(1)児童生徒の学習時の発話量の時間変化より

 上グラフによると、教師の精選した意図的な発問により、話合い活動において児童生徒の発話量が増える傾向が見られました。

特に、以下のような発問の際に高い数値となりました。

「〇〇さんは、なぜたし算をしたのかな(つなげる発問)」
「〇〇さんは、何に着目したのかな(深める発問)」

 また、教科の特質に応じた見方・考え方を児童生徒が働かせている様子も見られました。さらに発話量からも主体的な話合いが行われている結果が見られました。

(2)話合いデータを児童生徒が活用した取組より

 児童生徒が自分たちの話合いをデータに基づき客観的に把握する時間を授業内で意図的に設定し、教師による中間指導も含め、グループ内の関わり合いや発話量について確認をするようにしました。

 そうすることでその後の話合いの見通しがもてるようになり、多くのグループで前半の話合いより主体的に関わろうとする児童生徒の様子が見られ、行動の傾向分析からもその変化を見ることができました。

(3)発話の関わり合い(ターンテイクより)

 多くの授業において、話合いのグループが4~5人で編成されていましたが、ターンテイクを見てみると、グループの多くで、上データのように主体的に話合いに参加できないメンバーが必ず1名以上存在することが分かりました。3人グループの際には、比較的関わり合いのバランスがよく、個人的な発話量、重なり度、盛り上げ度についても伸びが見られました。

4.誰でも「匠の技」を手にすることができる時代が!?

 そして今回、戸田第二小学校では、たまご型レコーダーの新しい「マップ機能」を活用した実践に取り組みました。

 これまでも、教師は各グループの話し合いの状況(発話量)を手元の端末で確認することができましたが、1グループ毎の確認にとどまり、適切な教師の働きかけをするためには、教師の状況把握する力選択する力が求められていました。

 そのため、あるグループへ重点的に支援をしていましたが、実はそのグループ以上に話し合いが停滞し、支援を必要とするグループがあった、ということも稀にありました。

 今回の「マップ機能」では、各グループの話し合いの状況が、一覧で示されるとともに話し合いの内容もテキスト表示されます。さらに、発話量が少ない児童がいるとアラート通知されるため、教師はその児童やグループへピンポイントで支援することができます。

 話し合い活動が活発に行われる授業を創り出すことができる、指導力の高いベテラン教師は、ある児童やグループに関わりながらも、その他の周囲にも目や耳を傾け適時適切な支援をする「匠の技」をもっています。

 このツールはその「匠の技」に代わり得るものになるのかもしれません。

 発話量の可視化&マップ機能をどのように場面で取り入れ、どのように活用するか、引き続き研究を深めていきたいと思っています。

5.子供たちの声

 最後に、今回たまご型レコーダーを活用した児童の声を紹介させていただきます。

「最初に使ったときは、自分のことばかり話していることがわかってとても驚きました。何回かやるにつれて相手の話に重ねて話すことができたり、聞き手に回ることもできたりしてとても話し合いが上手になったなと思いました。」
「ハイラブルのおかげで自分の話し方がわかったからこれから上手く話せるコツがわかった」
「自分は話し合いのときによく話していると思っていたけれど自分はあまり話していなかったことに気づいた。これからの話合いでは自分から話に参加したいと思いました。」

「匠の技の可視化」についての研究は、まだまだ現在進行中です。「脱・経験と勘と気合(脱・3K)」のスローガンのもと、他の教師への効果的な伝承を可能にすることで、子供たちの学びの質の向上に繋がるものであると信じ、これからも研究を進めてまいります。

今後も戸田市の取組に御注目ください。

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