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受講レポート③ :「アーティストインレジデンスを学ぶオンラインレクチャー」(2022/11/21)

11月21日のアーティストインレジデンスのセミナー、
今回のゲスト講師はポーランドの『BWAヴロツワフ現代アートギャラリー』のディレクター・マチエイ・ブエコ氏でした。

ポーランドの『BWAヴロツワフ現代アートギャラリー』は、ヴロツワフ市のサポートを受けて運営している文化施設です。

https://bwa.wroc.pl/en

『BWAヴロツワフ現代アートギャラリー』ポーランド国内でも有数の文化施設で、3種類のアーティストインレジデンスを企画しています。
BWAで実施しているアーティストインレジデンスの形は以下の3つで、それぞれ異なる目的、ターゲットを設定しています。

1. スタジオギャラリーでの展覧会開催のためのアーティスト招へい(国内外アーティスト対象)。海外のレジデンスと連携してアーティストを交換する形で実施。期間は予算により異なるが、6週間〜8週間。今年は写真家を呼んでフォトブックを制作。
2. テーマを決めて公募型でアーティストを受け入れ、オープンスタジオを実施(国内アーティスト対象)。期間は1ヶ月〜1.5ヶ月。今年は「母親」をテーマに子供を持つ女性アーティストを対象とした。来年のテーマは「ウクライナ難民」
3. 「Rereat Art Routes」というプロジェクトで、アーティストに休息の機会を与えつつ滞在地での交流や知識・経験のシェアを目的として実施するもの。対象はアーティスト・キュレーターに限らず、クリエイティブに関わる人全般とする。期間は1ヶ月。必ずしも展示やプロジェクトは行わない(2023年から実施予定)

マチエイ氏ご自身も映画を専門とし、写真に特化したアーティストレジデンスの運営経験などもあり、講義では豊富な経験をもとに、普段は聞きにくいアーティストインレジデンスの運営に関する非常に現実的なアドバイスをたくさんいただきました。

マチエイ氏からのアドバイスで興味深かったものをいくつかピックアップします。

・1〜3の形態のうち、一番始めやすいのは1。2、3になるにつれてどんどん複雑になる。
・相手の希望と自分達が受け入れられることの線引きをあらかじめ決めておくことが大事。
家族を連れてきたい、ペットを連れてきたいなど、受け入れ側が想定しない要望はたくさん出てくる。また、アーティストはそれぞれみんな期待値が異なる。どんな作品を作りたくて、どんなスペースが必要で、制作する上でどんなリサーチをしたいのか、1人で放っておいてほしいタイプなのか、いろんなところに連れて行ってほしいのか。向こうが望むことと自分達がどこまで付き合えるかの線引きは大事。
・予算は想定x20%増積んでおくことをお勧めする。必ず予算を超えることが出てくる。
・周りを巻き込んでプロジェクトの厚み・広がりを持たせることは大切。ペーパーワークやコーディネートを行うエキスパートの協力(欧米では調整役を外注するのは一般的だそうです)。言語の面では通訳等が必要。
・(プロジェクトが担う社会的責任と芸術的達成とのつながりを持たせているかとの質問に対して)公的機関から資金を得ていることから、プロジェクトが社会的責任を請け負っていると自認しているが、アーティストは必ずしもそういう意識を持ってはいない。運営側は考慮するが、制作内容についてはアーティストの自由に任せてバランスをとっている。

率直かつ実践的なアドバイスを伺って、IWCATも運営に携わっていた方々がいろんな苦労をしながら試行錯誤して続けてきたプロジェクトなんだろうなと、改めて思いました。
次回のセミナーは11月28日(月)です。また学びをシェアさせていただきます。

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