MLBドラフト2024に向けて好きな選手を紹介する(カレッジ編)

本年度のMLBドラフト対象選手から私のお気に入りの選手を何人かピックして紹介します。やる気と時間さえあれば最低200人くらいは語れる自信がありますが,ドラフトまで日もないので泣く泣く数を絞らせてもらいました。
投手野手バランス良く,1巡候補から3日目レベルのタレントまでそれなりに幅広い層から選手を選べたと思います。基準として,ある程度の回数中継で見た選手,そしてよりMLBでの活躍を本気で期待している選手絞っているので所謂パワー5レベルのチームからのピックになってしまった点はご容赦ください。順番には対して意味はありません。


Jac Caglianone(ジャック・キャグリオン) 1B, Florida

本名 Jeffrey Alan Caglianone Jr. 
カレッジベースボール界の大谷翔平として時たま日本メディアでも取り上げられる,フロリダ・ゲイターズの大スターにしてドラフト全体1位候補。

高校では早い段階から恵まれたフィジカルとそこから生まれるパワーに注目が集まっていましたが,体が成熟するにつれて投手としてもエリートレベルに成長し,ドラフトでの位置づけとしてはTop50~100位くらいの評価でした。TJ手術を受けたことからフレッシュマンイヤーは打者としてのみ出場,480ftのHRを放ったりポストシーズンでも活躍したりと,シーズン終盤からのデビューでしたがカレッジレベルへの適応力を見せました。

翌2023シーズンにCagsは大きく飛躍を遂げました。18先発で防御率4.34 87K/55BBという数字だけでもソフモアとしてはまあ上出来ですが,それに加えてバット規定変更後の記録を塗り替える33HRというのは圧巻の一言。パワーでは80グレード評価を受けるほど絶賛されましたが,58Kに対して17BBというアプローチが大きなネックでした。

  そして2024シーズン,彼はその弱点を部分的に改善してみせました。HRは前年を上回る35本(Condonに次ぐ2位), 9試合連続HRという離れ業も見せながら,BBを58まで増やし,かつKを26まで減らしました。「部分的に」というのは,Chase%が平均を大きく上回る一方,Contact%を大きく改善させた,ということによります。素人目に見ても下半身を工夫して動かしながらタイミングをとることが上手くなったことがよく分かりました。識者によってはこの以上に高いChase%は比較的改善が容易であるとも意見されますが,やはりこのウルトラアグレッシブアプローチが彼を全体1位から遠ざける大きな要因であることには間違いありません。
  ただ,あらゆるコースの球を右へ左へとスタンドに放り込む様はまさしくホームランアーチスト。バッティングでのポテンシャルなら同世代の出世頭・Jame Woodに比肩するのでは,と贔屓目まじりながらもそう思わさせられる魅力があります。

  ディフェンス面について,彼の最大の特徴でもあるツーウェイという点はドラフトにおいて懐疑的な論調が強まり,基本は1B専念とされています。今季は昨年とほぼ同じスタッツを残しましたが,スターターとしてはコマンドが鈍く,かといってリリーフとしては空振りを奪う能力が弱いという評価を覆すほどのパフォーマンスは見られませんでした。原因は不明ですが,今季終盤には球速が90マイルほどに落ち込む時期もありました。
  とはいえ,あまりにも傑出した「打」の方に目を奪われがちですが,2年連続でSECのスターターをコンスタントに務めた実績は十分に評価されるべきで,類稀なフィジカルを無理しすぎること無く扱い,フルタイムでカレッジ最高級のスイングを続けながらそれを成し遂げた彼の並々ならぬ努力に私は敬意を表せずにはいられません。

MLBでも彼の守備位置は1Bになるのでしょうが,その上手さが認められてなのかフロリダではDHではなく1Bを積極的に守らされていました。フィジカルがネックになり,フィールディング動作にもたつくような場面をよく見かけますが,彼のスピードは1Bとしてはかなり早く,かつ彼のアグレッシブな姿勢も合わさって通常の1Bでは成し得ないようなプレーが頻繁に見られることも事実です。いっそコーナーOFをさせた方が良いじゃないかと私は考えていますが,カレッジでは負担を避けてしなかったのか,そもそもそれほどのレベルでは無いのか,というのはよく分からず,気になる所です。

余談ながら,彼はイタリアやプエルト・リコ代表として国際試合に出場する資格があります。イタリア好きとしてはやはり, 彼が再び"青い"ユニフォームに袖を通してくれることを期待してしまいます。



↑ CWSでの先発&HR(2回オモテ)



Griff O’Ferrall (グリフ・オフィラル) SS, Virginia

バージニア不動の1番ショート。
ドラフトランキングでは30~45位,モックドラフトでは1巡後半での指名も予想されています。

Baseball-Referenceより

高校では無名に近い存在でしたが,初年度からSSのレギュラーに定着。3年間大きな浮き沈み無く,カレッジでも特に安定した優秀なショートでした。2年連続CWS出場はこの人の貢献があってこそのものと言っても良いでしょう。

身長は6'1"でSSとしては標準的な体系。身体能力がずば抜けているわけではありませんが,ヒットツールと守備に定評があります。バットコントロールが良く全方向にそれなりの速さの打球を飛ばせることから,打線の起爆剤と呼ぶに相応しい働きをバージニアでは勿論,日米大学野球でも果たしました。(シリーズは負けたが)  変に金属の利点を生かした打ち方で無い分,木製バットとの相性の良さを感じさせます。欠点はディシプリンが良くないこと。分の悪いコースのボールに手を出し,なまじバットコントロールが良いせいで中途半端なポップフライになることが多い印象です。今年は長打を増やそうとしたのか,シーズン中盤以降にスイング判断が若干崩れた時期がありました。

守備に関して,カレッジレベルでは間違いなくエリートレベルのSSです。今年は63試合でエラーは4つ,他の指標でもDⅠトップクラスの数値であり,ゴールドグラブ賞を受賞しました。ハイライトで映えるようなプレーというよりかは,際どい球を簡単に見せる堅実なプレーをします。彼のスローイングの正確さには一際目を瞠るものがありますが,フィジカル的な理由からMLBでは他のポジションに回る必要があるかもしれません。ただ,彼のオフェンスプロフィールと合わせると,SSも無難にこなせるプラトゥーンに近い役割が上手くハマると思います。David Fletcher的な。



Khal Stephen(カール・スティーブン) RHP, Mississippi State

6'4"のスリムなSECスターター。リリーフとして活躍したPurdueから移籍して初年度の今年は8勝 96IP 107K 3.28ERA。
ショートアームからライジング気味の91-96程度のFFと空振りの取れるSL&CHのコンビネーションが好み。キラーピッチと呼べるほどの球種が無いため奪三振はそこそこに留まりますが,コマンドの感覚に優れており強豪チームを相手取ってもQS並のパフォーマンスを安定して見せました。
バックエンドスターターレベルへの成長が見込まれていますが,何かきっかけを掴めば一つ格を上げられそうな選手です。



Drew Beam (ドリュー・ビーム) SP, Tennessee

常勝軍団テネシー・ボランティアーズを3年間牽引したエース右腕。

高校時代は怪我などもあり全米ランキングTop250~500位くらいでしたが,QBとしても活躍しており運動能力とスター性には折り紙付きの評価がされておりました。その期待通り,ノックスビルでは初年度から先発で8勝1敗 76イニング WHIP0.934 と大活躍を見せました。同じテネシー生まれのフレッシュマンChase Burnsとのローテーションは当時敵なしの黄金世代だったテネシーの象徴の一つでしたね。この2人に加えてChase Dollander, Blade Tidwellといったドラフト上位投手がいたんだから本当にとんでもないチームでした。

2年目以降は防御率といった数字は悪化したものの,課題だったK%の低さを改善し,今年のそれは22%でした。シーズンを通して被HRの多さから前年までより失点がかさむ試合が続いていましたがCWSでは2試合に先発し計9イニングを2失点に抑え,堅実な投球でチームのシリーズ制覇に大きく貢献しました。それ以前もポストシーズンで普段以上のパフォーマンスで試合を作る投球を幾度も見せており,そういった勝負強さもBeamの魅力です。

FBのベロシティは平均して90マイル前半,最高で97マイルくらいとMLB基準だと平均的な数値です。安定してゾーンに投げ込める上にクオリティも平均以上で,Whiffが30%を超えるCHとCBと組み合わせて打者を手球にとる投球が彼のスタイルです。ただ,カレッジレベルではどれも優れた球種ですが,MLBのスターターとして見るとどれもまだ物足りず,今後の開発が望まれます。コマンドの感覚は確かなものであり,フレームもしっかりしているのでぜひバックエンドスターターとして定着して欲しいです。
ドラフトランキングでは40~60位程度で2巡前半までには指名されるでしょう。

彼は珍しい紫色のグローブを使用していますが,これは彼の妹が患っている脊髄性筋萎縮症を認知してもらうためのものです。こう言っていいのかわかりませんが,爽やかなBeamの雰囲気とマッチしていているこのグローブが私はとても好きです。



Brady Tygart (ブレディ・タイガート) RHP, Arkansas

Hagen Smith, Mason Molinaに次ぐカレッジ最強Arkansas投手陣の3番手。

高校時代は全米50位~100位評価を得ていた注目のフレッシュマンとして1年目からリリーフとしてフル回転でした。24試合の登板で全てリリーフとして37.2イニング,8SV/ 3.82ERA/ 51K-21BBというスタッツで前年のゴールデンスパイク賞が抜けた穴をカバーしました。
2年目はシーズン途中に肘の怪我で離脱。2ヶ月後には先発として復帰し,6試合でそれぞれ5イニング弱ながら計5失点でした。ジュニアイヤーの今年も怪我での離脱はありましたが,先発として13試合を投げ3.94ERA/ 69K-36Bbというスタッツを残しました。

Tygartといえば93マイル前後のFBとハイスピンでブレーキが大きい70マイル中盤のCBが最大の特徴です。怪我以前,リリーフだったころはCBよりもSLが軸で空振りを狙う投球でしたが,それ以降は遅いCBでカウントを稼ぎながら長いイニングを投げることを重視したようなスタイルに変化しました。今年は終始コマンドに苦しみ,BB%もドラフト候補の中ではかなり高いのですが15 HBPや7 WPという数字も非常に気になります。

投球の特性上,元来抜け玉が目立つだけで基本的なコマンドはそこまで悪くはない投手なだけに,怪我以前の感覚を取り戻せればリリーバーとしても先発としても将来を見込めると思っています。
ランキングではシーズン前こそ100位以内に入っていましたが今は150~200位となっており,2日目中盤での指名になるでしょう。場合によってはフェイエットヴィルへのリターンも有り得そうです。


Carter Mathison (カーター・マシソン) OF, Indiana

1年次に19HRで同大の新人記録を更新したフージャースの1番CF。
3年連続で二桁HRを記録しましたが,この2年はOPS0.9未満とドラフトでアピールするには不十分な数字に終わり,昨夏のCapeでは0HRに終わったことからパワーツールの評価が落ち続けており,スカウトの注目はチームメイトのDevin Taylorにすっかり奪われてしまった印象です。

今季はスタンスをやや高くとりセンターから左方向への長打も増えましたが,やはり武器になるのはプルサイドパワー。50グレードと見積もられることもありますがおそらく55グレードでしょう。低コンタクト%&低Chase% & 低ゾーンスイング%というプロファイルはカイル・シュワバーを彷彿とさせます。

足はそこそこ速いですが盗塁は通算で16。CF守備は上々ですがMLBではコーナーが適正かもしれません。
ランキングは200位以内~圏外と幅広いですが,2日目中盤の指名になるでしょう。


Logan Bravo (ローガン・ブラーボ) 1B, Duke

NCAA5年目のシニアプレーヤー。昨年まではアイビーリーグのハーバードでキャプテンを努めていました。今季Dukeに移籍すると1年を通してクリーンナップに座り17HRをマーク,OPSはキャリアハイでした。43BB‐62Kとアプローチもまずまず。とはいえ25歳の1Bという属性を考慮するとドラフトで指名されるラインかは怪しいところです。一昨年夏のCapeで大苦戦したことも大きなマイナスポイントでしょう。ランキングも尽く圏外ですし,シニアサインとしても注目度は低いようでおそらくUDFAか,私が知らないだけで野球を続けることはないのかもしれません。

Elijah Hainline (イライジャ・ハインライン) SS/3B Oregon State

今年Bazzanaと二遊間を組んだSS。昨年まで2年間Washington Stateでプレーしていましたが,その頃から守備力は絶賛されていました。昨年と今年はOPSが0.9以上と打撃でも成長を見せています。アスレッチックでアジリティに富んだフィールディングはまだ粗さが目立ちはしますが,将来的にMLBでもバリューが出せるものになると見られています。39BB/60Kというアプローチも,これから磨きをかければプラツーンINFとして大きな武器になるでしょう。2日目後半以降の指名が予想されています。




Jacob Kmatz (ジェイコブ・クマッツ) SP Oregon State


Aiden Mayはドラフト1巡で指名されてもおかしくない逸材ですが,チームメイトのKmatzも負けず劣らず良い投手です。3年間コーバリスで15先発前後をこなし通算20勝を挙げました。今年はワンランク上の投球をするようになり26 K%/ 6.3 BB%と安定度が増しました。最後のPac-12チームとしてのポストシーズンでの活躍も印象深いです。

球速は91~94程度ですが,体格的にまだアップサイドが見込めます。6'4"の長身ながらゾーンに投げる感覚に優れており,かつ緩急の使い方も併せ持っているためスターターとしてのポテンシャルがとても高い投手です。ランキングでは評価が分かれていますが100以内に位置づけるメディアもあり,実際に1日目の指名があってもおかしくないでしょう。遅くても2日目の中ごろにはいなくなっていると思います。


Dylan Carey (ディラン・キャリー) SS Nebraska

昨年はハスカーズから2人の内野手が上位指名されましたが,カレラとともに内野を守っていたのがこの選手です。3BからSSに転向し無難にこなしましたが,打撃の方では良くも悪くも代わり映えのしない成績に終わりました。ヒット・パワーツールともに非凡なものがありますがアグレッシブアプローチのためにBBが20未満とポテンシャルを大きく制限してしまっています。まだソフモアであり若い部類なのでプロでの改善に期待したいと思います。

Hunter Cranton (ハンター・クラントン) SIRP Kansas

JUCO→SDSUからカンザスに移籍したシニアのパワーリリーバー。昨年まで先発もしていましたがブルペンに専念してから球速が5マイルアップ。100マイル近い球を何度も記録しています。威力あるハイファストボールで空振りを量産する様は圧巻です。

長い腕を大きく使うデリバリーに疑問が呈されることもありますが,今のところBBは常識的な範囲内に収まっており,大きく問題にはならなそう。 スロットセーブのためのシニアサインに最適な選手の一人としてBAが挙げています。


Émilien Pitre (エミリアン・ピトレ) 2B Kentucky

今年初のOmaha行きを決めたUKの中心選手。この2年のCatsの打線はPitreを中心に回っていたと言っても過言ではないと思います。
フレーム不足でMLBレベルで傑出したツールは持ち合わせていませんが,優秀なバットコントールと選球眼があり,走攻守にバランスの整った選手です。今季は10HRでBB>Kであったりと攻撃面で成長を見せました。ケベック出身で入学時には英語をほぼ話せなかったそうですが,今では流暢にインタビューをこなせるくらいになっています。ドラフトでは2Bに限定されそうなことから評価が低めですが,2日目の早い段階で指名もあるかもしれません。



Jacob Walsh (ジェイコブ・ウォルシュ) 1B, Oregon

高校時代から身体能力に優れオフェンス面の評価が高かった1塁手。オレゴンでの3年間で40HRを記録しましたが209Kという大きな代償がつきました。アプローチは年々改善されているものの,いわゆる危険水域的なゾーンを脱しきれていません。ただやはり彼のRawパワーは魅力的で,外野が立ち尽くすような飛距離のホームランを何度も見せられた身としては彼の将来に期待せずにはいられません。安直ながらコンパリゾンにJosh Bellを挙げたいと思います。ドラフトでは2日目終盤での指名になるでしょうか。





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