見出し画像

「結の会」のお寺の庭園〜結を訪ねて〜

幾度でも訪れたい庭と園
厳しい暑さがやわらぎ、秋の気配が漂いだすと
ようやく外へとお出かけできる心持ちになります
結の会にまつわる3つのお寺へ、お参りしてみましょう


写真:浅川敏

東京 新宿区 東長寺

今は目に見えない土地の記憶を思う庭

現在、外壁修繕工事のために囲いで覆われている文由閣。通常であれば、周囲の庭園には水が張られており、陽が出ている時間には水浴びを目当てにした小鳥たちが訪れるものですが今はそれが叶わず、がっかりしたように飛び去る姿が気の毒です。
かつて文由閣のそばには「紅葉川」という川が流れていました。いまは暗渠となり、当時の面影はありませんが、この文由閣の庭とよく似た光景が繰り広げられていたのではないでしょうか。また紅葉川にはたくさんの亀が生息しており、その数は千匹とも万匹とも言われていたそうです。「無数の亀がいる地」の記憶は、東長寺の山号「萬亀山」にその名残を留めています。当時の紅葉川の周囲には、その名の通り「きっと紅葉が色づいていたに違いない」と考え、文由閣創建時に楓の仲間が植えられました。親しみ深いイロハモミジに、すこし丸みのある葉が可愛らしいコハウチワカエデ、秋だけでなく春にも赤い葉を芽吹くノムラモミジの3種です。
文由閣の工事終了は10月末頃の予定です。覆いが外される頃に、綺麗になった文由閣に楓の紅葉が彩りを添えてくれるのを楽しみに、皆様のご参詣をお待ちしております。

紅葉の様子
庭の楓の色付きに合わせ彩りが変わる文由閣の御朱印。

幾度でも訪れたい庭と園

千葉 袖ヶ浦  真光寺

真光寺 山内空撮

里山に還りゆく園で東長寺との絆に触れる

なだらかな丘陵地を抱く真光寺の境内。上の写真を見て、この周辺がかつて竹林に覆われていたと想像することは、今では難しいかもしれません。竹は日本に古くから自生する植物ですが、ときに驚異的な成長速度が他の多様な植物の成長を阻害し、浅い根が土地の保水力を低下させることがあります。岡本住職がこの地で本格的な活動を始めた当初、「必死になって取り組んだ」のが竹の伐採でした。ある時、東京から東長寺縁の会の方々が真光寺を訪れた際に、裏山の竹林伐採中、竹の束を動かせなくなっていた住職を見かけて、皆で綱引きのように引きずり下ろし「大歓声が上がった」というエピソードも残されており、「大勢の方々の御助縁で現在の真光寺があるのだと思っています」と岡本住職は語られています。現在、真光寺の樹林葬地は、どのエリアも植樹する木をお寺が選び、適切に植え管理することで、里山らしいバランスが保たれています。
どんなものでも自らの手で作り出してしまう岡本住職が再生した山内は、今も少しずつ進化中。2020年に完成した「慈嶽堂」を筆頭に、東長寺ゆかりのものがたくさん活用されているのも特徴です。山内を気ままに散歩する寺猫たちとの交流とともに、お参りの時はぜひ境内めぐりをしてみてください。

東長寺先代住職からその名を受け継いだ慈嶽堂。建物の木材も内部の天蓋も、東長寺ゆかりの品です。

宮城 気仙沼  清凉院

清凉院 樹林葬埋葬地

健やかな森を育み人々をおおらかに迎える園

お客様をお迎えすることが大好きな清凉院。坐禅会やコンサート・イベントなどの会場となる境内を、お寺の皆様がはりきってお掃除をなさる様子が、僧侶の三浦正道師が手がける清凉院のフェイスブックではたびたび投稿されています。イベントの訪問者や参詣の方の笑顔の写真と並んで投稿に登場するのが美しく整えられた清凉院の庭園です。
様々な木々が整えられた庭はもちろん、結の会の樹林葬埋葬地も、ひと目見ればお寺を護る三浦光雄住職とご子息僧侶方々の心を込めた作務を感じずにはいられません。
結の会発足時、清凉院の樹林葬埋葬地は、樹木を切ることで、過密な木々を調整し、森を健やかにすることを目指し整備されました。8年が経った今、森には明るい陽光が差し込み、地面には多様な植生が展開するようになりました。
この秋、結の会の新規入会の方を主な対象に、清凉院を訪れるツアーが開催されることが決まりました。これまで、結の会の皆様を埋葬してきた正道師は、その思いを「願わくば生きていらっしゃる時に、少しでもおしゃべりしたかった……」とおっしゃっています。ぜひ実際に訪れて、この場所を知り、そこで過ごすこと、そして三浦師三僧侶方々と交流することを楽しみにご参加いただければと願っています。

樹齢450年と伝わる大銀杏は清凉院のシンボルツリー。
公園のように美しく心和む庭園は、BBQなど地元の交流の場になることも。

『萬亀』No.143(2023年9月号)より


<お問い合わせ連絡先>
東長寺結の会事務局 
電話:03-5315-4015(9:30~17:00)
メール:toiawase@tochoji.org