大学生に「太陽光パネル設置義務化」の是非を聞いてみたら意外な結果が・・・

 10月18日、都内のある大学で行政分野を学ぶ60名ほどの学生を前に話をする機会がありました。外部講師を招いての連続講座の一環ということで、午後5時過ぎから8時半過ぎまでの2コマ続きの長丁場。『東京都庁 ~誰も知らない「巨大地方政府」の内側』と題して正味3時間超、立ちっぱなし喋りっぱなしでホトホト疲れました。

 話の内容は、アカデミックな講義というより雑談・雑学を交えての小池都政批判(?)が中心。有り体に言えば、筆者のYouTube動画をマイルドにして一般化した感じです。そもそも、自治体ネタや政治ネタがどこまで今の大学生に刺さるのか、全く読めない(というか、期待せず)。
 実際、夜の時間帯と言うこともあって、突っ伏して寝ている学生も少なくありませんでしたが、ごく少数、熱心に筆者の話に耳を傾けてくれた学生もいたのがせめてもの救いでした。

 さて講義の最終盤、小池知事が進める「太陽光パネルの設置義務化」について取り上げてみました。当然、この問題に精通している学生がいるとは思えず、前振りとして事の経緯や制度の概要、さらに賛否それぞれの主な理由などをレクチャーしました。例えばこんな感じです。
 
 賛成の主な理由:家庭部門のCO2削減が進まない中、再生可能エネルギ  ーである太陽光の利用拡大が必要 電力危機や災害時にも有効利用できる

 反対の主な理由:初期投資や維持費用が消費者の負担に 廃棄コストや災害時の危険性が未解決のまま 大半が中国製のため人権問題という視点も

 さらに、都が8月1日に公表したパブリックコメントの結果も合わせて提示。「賛成が56%、反対の41%。年代別では、10歳代以下の86%、20歳代の77%が賛成 一方で50~60歳代は反対が多数」

 こうして下地を作った上で、義務化に賛成か反対かを学生に問いました。考える時間は3分間。ネット検索で調べるのも可としました。意思表示は挙手方式。さあ、その結果は。。。

 賛成15 反対45

 意外な結果でした。筆者は事前説明で偏った先入観を学生に与えないようそれなりに注意を払ったつもりだったのですが、まさかパブコメの若年者の傾向と正反対の比率になるとは思ってもみませんでした。賛成にもっと多くの手が上がると予想していただけに、正直驚きました。
 なぜ多くの学生が反対だったのか。前列に座っていた反対派の学生に理由を聞いてみました。
・ 買い取り制度がいつまで続くのか不明、採算が取れるかわからない
・ 台風等の災害でメガソーラー施設が破損するなど、パネルが長期の使用に耐えられるか疑問
・ 住宅の屋根に重量のあるパネルを設置して、火事や大規模地震の際などに大丈夫かetc

 実は、太陽光パネル義務化の問題の前に、もうひとつ学生に別の質問を投げかけていたのです。
「都に取り組んでほしい施策は何か」
 以下に列挙した項目から3つを選ぶという方式で行いました。

 コロナ対策 物価高対策 少子化対策 高齢者福祉
  デジタル化推進 地球温暖化対策 多様性社会の実現
  起業家支援 女性の活躍促進 文化・スポーツ振興
  大規模災害対策 都市インフラ整備 その他(自由記載)

 最も多く手が挙ったのは物価高対策と少子化対策。なるほど。。。以下、大規模災害対策、デジタル化推進、都市インフラ整備と続きました。都市インフラ整備がランクインしたのにはちょっと意外の感はありましたが、ここまでは各項目15人以上の学生が手を上げています。
 その一方で、太陽光パネル義務化に直結する地球温暖化対策に関しては、わずか3名。多様性社会の実現より少なかった。
 もちろん、ザックリとしたアバウトなやり方ですから、どこまで的確に同世代の傾向を示しているのかはわかりません。それにしても、60名の大学生が3つずつ選んだ事項の中で、地球温暖化対策にたった3人しか○をつけなかった意味は軽くはないと思います。

 先走って結論めいたことを申し上げれば、メディアが取り上げるほど、若年世代は地球温暖化問題に関心を持っていないのかもしれない。むしろ、目の前の物価高問題のように直接的に自分に悪影響を及ぼす事項、そして少子化や大規模災害などに対して強い危機意識を抱いているのではないか。

 だとすれば、地球温暖化対策の進め方も考え直す必要が出てくるかもしれない。ましてや、小池知事がゴリ押ししようとしている太陽光パネル義務化については、もっともっと丁寧に説明を尽くした上で、指摘される問題点をひとつひとつ取り除く努力を続けなければ、民意とかけ離れた代物になってしまうと危惧します。
 太陽光パネル義務化に関して小池知事は、若い世代からより多くの賛同を得ていると自信をのぞかせていますが、はたして本当にそうなのか。そこに世論操作はないのか。義務化条例案の都議会への上程は、12月に迫っています。

 

 

 




 


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