小池知事のオンライン記者会見が「言論封殺」に一役買っているようです

 先日、都内某所で横田一(よこた・はじめ)氏と偶然、遭遇しました。横田氏と言えば、知る人ぞ知る「小池百合子キラー」のジャーナリスト。定例記者会見の場で小池知事に食い下がり、無視されても質問を続けることで有名な方です。なかでも、2017年秋の衆院選を巡って、希望の党を立ち上げた小池知事から「排除」発言を引き出し、小池知事の国政復帰の野望を打ち砕いた実績は業界では広く知られています。

 そんな横田氏ですが、筆者が現役時代(中央卸売市場次長)には、まったく真逆の立場で対峙する関係、有り体に言えば敵対関係にありました。当方は何とか築地市場を豊洲に移転させようとする一方、横田氏は役人と小池知事の欺瞞を暴くのに躍起になっていました。したがって、現役時代の筆者は横田記者のことを「いやな質問ばかりしやがって。いい加減にしてくれ」と苦々しく思っていたわけです。

 先日の遭遇はほんの数分の立ち話にすぎませんでしたが、筆者が当時の状況を笑い話風に伝えたところ、横田氏も軽く受け流してくれました。その上で、こんなことを話してくれました。
 毎週金曜の定例会見がオンラインで実施されるようになって、自分の出番がますますなくなった。画面上で知事に指名されない限り発言の機会はない。当然、自分は小池知事にマークされているので指名されることはない。オンラインなので知事が会場を去る際に声をかけることもできない。

 コロナ感染拡大に伴い、通常は都庁第一本庁舎6階の会見室に記者を集めて行われる記者会見がオンライン形式に変更されて久しい。そうなると、リアルで対面して質疑をする以上に、小池知事は会見を思うままにコントロールできるようになった。
 中継放送で映し出されるのは小池知事の姿であって、あとは質問する記者の声が雑音混じりに聞こえるだけ。小池知事の前に据えられたパソコンのモニター画面はのぞき見ることはできません。オンラインの弊害として臨場感は無きに等しく、質疑も表面的なやり取りに終始する傾向が強まりました。核心を突いた質問はめっきり鳴りを潜めてしまったのは言うまでもありません。
 こうして小池知事は、コロナを口実にして、あるいはオンラインの普及を理由に、実は自分にとって不利な質問を完全に排除できる状況を作り出しているのです。そして、自分にすり寄る取り巻きの記者を適当に指名して当たり障りのない質疑でお茶を濁す。イメージ操作は磐石ということなのでしょうね。

 横田氏は最後にこう漏らしていました。「小池知事はいつまでこんなやり方を続けるのでしょうか」と。おそらく横田氏の本音は「オンラインに名を借りた言論封殺だ」と言いたかったのではないかと思います。形だけのオンライン会見は誰にとって好都合な手法なのか。横田氏との遭遇で改めて痛感させられた次第です。

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