五輪談合事件、組織委OBの本音は「やり方が稚拙だっただけ」

 五輪スキャンダルは、高橋元理事の逮捕に始まり、談合事件では組織委の元次長と電通関係者らが逮捕されるところまで来ました。これによって「カネまみれオリンピック」の評価は完全に定着した感があります。
 そういえば、あんなに五輪・五輪と成果を強調していた小池知事も、この頃はレガシーってまったく言わなくなりましたね。五輪には負のレガシーしかないことが都民・国民にバレてしまったわけですから。

組織委OB曰く
 その一方で、当事者だった方々はこの事態をどう受け止めているのでしょうか。組織委の幹部だったOBの方に直接聞いてみました。彼曰く・・・・。
 「大会を成功に導くには、あれぐらいしなければダメだったのではないか。ただし、談合罪に問われてしまったのは、やり方が稚拙だったと言うことに尽きる」
 大会成功という大義を貫徹するためには、少しのズルは致し方ないという認識だったと思います。「大事の前の小事」、必要悪には目をつぶるというヤツです。
 筆者も30年ほど東京都の職員をやっていた手前、契約における公平性の確保と契約不調による事業執行への悪影響のどっちを取るのか、そのバランスの維持に苦労した経験があります。それゆえ、組織委OBの意見を一刀両断に批判しづらい面もあるのですが、それにしても、森元次長と電通関係者のやり口は度を超していますし、そもそも税金が投入されていることへの配慮の欠片もない、競争原理の導入や公平性の確保に対する認識がまったく感じられない。これは完全にアウトです。

森本次長は世間知らず
 件の組織委OBはこんなことも言っていました。
 「森元次長は陸連のエースとして組織委に送り込まれてきた人物。期待もされていた。でも、スポーツ関係者にありがちな『世間知らず』だったのだろう」
 もっとうまく立ち回ればこれほど大事にはならなくて済んだのに・・・・という恨み節にも聞こえます。であるなら、世間知らずの元次長のやり方をコントロールする上役はいなかったのか。すべて元次長に任せっきりだったのか。
 そんな組織などあるはずがない。ましてや、国や都から大挙して出向者が送り込まれ主要なポストを牛耳っていた組織委なのです。役人たちがそんなヘマをするハズはない。つまり、元次長のやり方を「是」としたのは、彼の上司達、都から出向していた局長やもっと上の幹部達、場合によっては武藤事務総長(元財務相事務次官)だったと考えるのが自然です。

「電通が多すぎるな」
 実際、元次長の直属の上司である組織委大会運営局長は、元次長の作成した一覧表を見て「電通が多すぎるな」と一覧表の修正を指示したと報じられています。この局長こそ、都からの出向組であり、現在は都の枢要局長です。
 彼の人となりは筆者もよく存じ上げていますが、「電通が多すぎる」とはどういう意味なのか。役人経験者なら即座にピンときます。つまり、何でもかんでも電通に任せてしまっては後々、公平性に欠けるなどの批判に晒される。だから適当に他社もちりばめて、外見上の体裁を整え、公明正大にやってますという姿勢が見える形にしろ、と指示しているのです。と同時に、自らの保身も図っているのです。
 この解釈は筆者だけの見解ではなく、現役の本庁管理職に聞いても同じお答えがかえってきました。「彼ならそう言うでしょうね」
 ちなみに、元大会運営局長は任意の取調べに対して「知らぬ存ぜぬ」を押し通しているそうです。

 今回の五輪談合事件、元次長の逮捕で幕引きが図られるとすれば、トカゲの尻尾切り以外の何物でもない。元次長が全てを差配し全てを決定していたなどと考える脳天気なヒトはどこにもいません。

 


 

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