第7波突入の今、都庁は”カンシ”の真っ最中

 先日、都庁職員で”カンシ”の1次合格者に話を聞く機会がありました。今は面接の準備に余念がないとのこと。
 ご承知のように都庁には2度の昇任試験があります。入都後約5年で受験資格を得る主任試験と、その後経験を積んだ後に受けられる管理職試験です。この管理職試験を略してカンシ(管試)と言い慣わしています。都庁業界用語の一つです。
 1次は筆記試験、この段階で約1.3倍に絞り込まれます。その後、8月の上旬に2回の面接があります。今年度は1回目の面接がオンライン形式で、2回目の面接が対面方式で実施されるようです。

 その昔は、たいていの職員が主任試験を突破し、ゆくゆくは係長(現在の課長代理)に昇格していくのが一般的で、やる気のある上昇志向組が難関の管試にチャレンジするという構図がありました。ところが近年はがらっと様相が変わり、主任試験の難易度が急上昇する一方、管試の受験者が減少しているのです。これは何を意味しているのか。
 ひとつは大量採用の時期が長く続いて主任試験の対象者が増えたにもかかわらず、主任の必要数は限定的であることから難易度が格段に上がってしまったことが考えられます。むしろ問題は、管試の人気が年々下がり受験者数が減少していることです。

 件の1次合格者はこんなことを言っていました。
 「同期の友人に聞いても管試を受けたという人があまりいませんでした。驚いたのは、局の総務や経理、人事と言ったエリートコースにいる同年代の受験対象者が軒並み受験していなかったことです。」
 受験の有無を聞かれた職員が照れ隠しで小さなウソをついた可能性もあるとはいえ、もし総務・経理・人事系の業務に従事する職員が管試を回避しているとすれば、都庁の組織として由々しき事態だと言わざるを得ません。

 推察するに、局の中枢部門に席を置いていればいるほど、局長をはじめとする上層部のドタバタ振りを毎日のように肌で感じているはずです。猫の目のように変わる指示、上司の口を突いて出て切るのは「つべこべ言わずにさっさとやれ」の叱責ばかり。部長は怒鳴りまくり、課長は駆けずり回る。管理職には残業代は出ないのに、深夜休日を問わず働かされている。ライフ・ワーク・バランスなど空しいかけ声に過ぎない。そんな姿を目の当たりにすれば、管試を受けよう、管理職になろうなどと思うほうが余程どうかしています。管試の受験者が減るのは当然です。

 一般職員の感覚を代弁すれば、こんな感じだと思います。

 主任試験は何とか突破して課長代理になれればそれで良し。有無を言わさず小間使いのようにこき使われる管理職になるなんて、今の都政を見ればアホとしか言いようがない。課長代理の地位に留まってじっくり専門性を磨いて残業代もそこそこもらって長い都庁人生を送るのが正解でしょ。

 もちろん、管理職のハードワークの一因が新型コロナ対応にあることは論を待ちませんが、それだけではない。この6年間の小池都政がもたらした必然の結果だと思います。小池知事のご機嫌を伺うことに終始する管理職、方向付けも決定もしない・できない管理職を大量に生じさせた罪は非常に重い。
 都庁の役人側も、小池知事の指示に唯々諾々と従うことしかせず、結果、将来の都庁を担う人材育成に穴を空けてしまっているのです。魅力的な管理職像を若手職員に提示できなくなり、管理職という名の柱をシロアリに侵食された組織の行く末が案じられてなりません。

 さて、件の1次合格者は、局が主催する模擬面接をやらされたそうです。本番さながらの模擬面接。これは昔から面々と続く都庁の慣習です。局から一人でも多くの管試合格者を出すことが「局益」にかなっているということです。コロナが拡大しようが電力がひっ迫しようが、どんなことがあっても、ああ、組織は組織の論理で動き続けているのだなあと、思わず失笑してしまいました。

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