「おとなしい」時の小池知事が一番危ない

 このところ、小池知事が借りてきた猫のように大人しくしています。正直、気持ち悪いです(笑)。

 重点措置が解除された3月22日には、電力需給逼迫を受けて都民に対して節電をしおらしくお願いする姿がありました。コロナ対策についても、4月24日までを「リバウンド警戒期間」と定め、引き続きの感染予防を訴えています。また、上野公園の花見も一方通行に制限するなど、社会活動の全面的な再開に対して慎重な姿勢を崩していません。そこには、トレードマークのドヤ顔はなく、低姿勢、平身低頭の態度が目立ちます。

 メディアの取り上げ方も政治家・小池百合子の動きに着目するというよりは、一自治体の首長としての言動をフォローするレベルに留まっています。小池ネタで情報発信している筆者にとって、この状況は痛し痒し。もっと暴れてよ、と思ったりもしますが、こんな「音ナシ」の小池知事こそ、一番危険であって、何を考えているのか分かったもんじゃないのです。

 1年ほど前のことを思い出してください。2021年の5月から7月にかけて、ふたつのことが同時並行で注目を浴びていました。ひとつは東京オリンピック、もうひとつは都議会議員選挙です。

 まず東京五輪。世の中は、1年延期された2020大会が開催されるのか中止か、はたまた再延期、いやいや無観客なのでは、と騒々しかった。ところが開催都市のトップである小池知事は、五輪への態度を鮮明にせず「粛々と準備を行う」と当たり障りのない公式見解を繰り返していました。ところが小池知事は突如、開会日になって「何としても大会を成功させる」と都議会臨時会の議場で大見得を切りました。

 状況が確定するまでは大人しくしていて、潮目が決まれば一気にそちら側になだれ込む。これが小池知事の行動原理です。

 そしてもうひとつの都議選。自らが実質的なオーナーを務める「都民ファーストの会」にとっては、所属議員全員が再選を目指す重要な選挙でした。ところが6月下旬、当の小池知事は過労を理由に入院してしまいました。選挙期間中の雲隠れには驚かされましたが、退院直後、選挙戦の最終日には都民ファーストの会の候補者20名の応援に駆けつけるという離れ業をやってのけました。

 入退院騒動と都議選もまた、小池知事の行動原理を発動された典型的な事例です。つまり、存在を消してひっそりしている時期こそ、(言葉は少々下品になりますが)小池知事が何か悪だくみを巡らせている時期に他ならないということです。そして今がまさに「その」時期なのです。

 なぜなら、まず3か月後に参院選が控えていること、これが大前提。それに加えて、足元のコロナ感染状況は落ち着きはじめ、開会中の都議会も大過なく議論が進み3月25日に閉会します。4月から6月まで都知事として大きなイベントは予定されていません。(6月開催予定の第二回都議会定例会は、年間を通じて一番軽い議会です。)

 小池知事はこれからの3か月間、都議会やメディアを気にすることなく、じっくりゆっくり政治的な企みに時間を割くことができるのです。大人しくなったからといって小池知事が政治的に「死に体」になったわけではありません。むしろ、夜な夜な刃を研いでいると見たほうがいい。大人しくなったからこそ、小池知事の動向から目をそらさないようにしたいと思います。

 

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