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くつろいでいると、「来る」

 これまで数回書いている、ご近所さんの続報。症状が進んでいるのか、ときおり窓から世間に向かって叫ぶ内容が、過激さをさらに増してきた。

 もし具体的に「自分がご近所のあなたがたを、ぶっ殺します」とでも言うならば即座に警察沙汰だが、主語がぼやけていて、天罰またはヤクザなどにより、周囲の人間はみんな死んでいくとか殺されていくとか、そういう内容を、演説口調で蕩々と語ることも…。

 その声と内容が一番よく聞きとれてしまう場所が、実はわたしが日に何度もくつろいでいる部屋だ。珈琲を飲んだり、電子書籍を読んだりと、ぼーっと過ごしていると、その奇声である。突然にはじまる。2〜3日に一度、「そういう日」がやってくると、日に何度もはじまるのだ。

 以前は静かな日が4〜5日くらいあって、たまに「そういう日」だったのだが、間隔が狭まってきている。

 話の内容や行為を具体的に書いてしまうと、もしやわが家のご近所にお住まいの方がお読みであれば支障があるので、ここでは「暴言のほか、変わったことをはじめた」とだけ、書いておくしかない。

 以前にも書いたが、この件である場所に相談をしたところ、いちおう、わたし以外の人も状況を多少は気にかけていて、これからは状況把握をしたいと考えているとお返事があった。そして、もし身の危険があれば、警察にも相談してください、とのことだった。
 いまのところ、気分が悪いだけで、身の危険はない。だがもし自分が精神的に参ってしまったらという、漠然とした不安はある。

 だから、もう、この際だから笑ってしまうことにした。

 奇声と奇行がはじまると、手元のメモ(電子的な)に、ありったけ書く。タイピングの速度が追いつかないほど奇妙なことを言うが、ありったけ。そしてファイルには日付と時間を添えて、フォルダに放りこむ。さらにその直後、家にいればだが、家族のところに「今日は、○○なんだってさ〜!!」と、妄想の具合を話しに出かけて、へぇ、そうなんだと、一緒に笑う。

 …こうでもしないと、やっていられない。

 現在の家は借家だが、おそらくあと数年は、ここにいる予定だ。それに、まったく知らない人がああなったのならばとても耐えられないが、普通の人だった時代を知っている。怖いと同時に、あの状況をお気の毒と思う。

 この件に最初に気づいたのは去年の2月末で、もうそろそろ11ヶ月になる。そして頻度は高くなり、叫ぶ内容は悪化した。
 最初のうちは「家の前で見かけたら、挨拶してみよう」と思っていたが、去年のあいだ、3回くらいしか見なかった。それも、たがいにちらっと会釈するかしないかの、短い時間のみだ。

 以前は、こちらを見かけたら、立ち止まってでも世間話しようとした話し好きな人だった。

 この件、どうなるかわからないが、いつか笑い話としてネタを活用できる日を願って、これからも聞こえたものはメモしていこうと思う。

家にいることの多い人間ですが、ちょっとしたことでも手を抜かず、現地を見たり、取材のようなことをしたいと思っています。よろしくお願いします。