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短編小説

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自作の短編小説をまとめて表示するためのマガジンです。
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2019年12月の記事一覧

透明な家

 大晦日だ。帰省する場所もなければ大掃除をするほどの広さもない家で、玄関だけ片付けてドア…

杜地都
4年前
1

粉雪と、おおまが

 暖冬と思いきや粉雪が舞う夕暮れ、客が帰ったあとのテーブルを拭いていると、人の気配があっ…

杜地都
4年前
1

うまい話と、その内側

 夕暮れに自宅近くで人が立ち話をしていた。珍しくはない光景だが、こちらの姿に声をひそめた…

杜地都
4年前
1

12月のライオン

 あまり活動していないが決まりなのですみませんと、近所の店が町会費の集金にやってきた。つ…

杜地都
4年前
3

たい焼きの味

 もとは客として顔を出していた店を引き継ぐことになって十余年、いまの客の多くはわたしが二…

杜地都
4年前
5

やはり知り合いでは、ない

 用件のわからない突然の誘いにも、断る理由が思いつかないほど退屈していた。今週は仕事もな…

杜地都
5年前
4

ふたたび、くねり

 固定電話はめったに使わない。ひさしぶりにそれが鳴ったとき、初秋に病院から問い合わせのあったKを思い出していた。熱中症の疑いということだったが本人は否定した、あの日のことだ。  奇しくも電話の主はKと共通の知人で仮にアキモトという。連絡を取りあっていなかったため、固定電話しか知らなかったらしい。近くに来ているというので、わたしは上着を手に家を出た。  住宅街のためさほど喫茶店もないのだが、アキモトはなぜか徒歩圏内のコンビニの先にテーブルが用意されていることを知っており、そこ

風さんからのたより

 田舎から電話があったが、用件をなかなか言わない。具合でも悪いのか、困ったことがあったの…

杜地都
5年前
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