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【報酬未払いで逃げた取締役】中村が中村を追う7話

前回までのあらすじ 報酬未払いで取締役の中村は消えた。音信不通、会社も移転。0スタートになってしまったライター中村が次に打つ手は?

中村が消えて、会社も消えて。0スタートになってしまった。自分のせいだとも言えるし、中村のせいだとも言える。

手がかりがなくなってしまったため、一定数の未払い被害者たちで話し合い、刑事訴訟をするのが一番ではないかという結論に達した。

そこで、弁護士に依頼するために債権回収に強い弁護士事務所を調べて連絡をとった。そこで、これまでの経緯を説明した。まず、第一声で言われたのが支払督促の取下書を出したことへの嘲笑。

「これだから素人はねぇ~」ってな具合だ(この段階で絶対この人には依頼しないと誓う)。「さっさと弁護士に頼んでれば、回収できてたんだよ」と、上から目線な発言に、私は「弁護士に頼まなくても、取下げてなきゃ回収できてたんだよ!」と心の中で彼をサンドバッグにした。

第2に、裁判に勝てても債権を回収できるかは別ということ。通常、内容証明や支払督促や民事調停(これは別のフリーランスが申し立てたが、中村が出廷せずに終わったと聞く)などを起こせば、何割かでも支払う意思を見せるという。

しかし、今回の場合は支払いから逃れるため、口座の差し抑えを食らってもいいように資金を別口座にうつし、会社を移転。すでに、ペーパーカンパニー状態にしていると推測される。

「会社、倒産しませんかね?」と尋ねると、弁護士は「現状倒産してないなら、しないんじゃない? 破産手続きだってタダじゃないし。わざわざ引越してまで継続するってことは、金がないとか、内部を開示されてバレたらまずいことがあるとかさ」

「バレたらヤバいって、なんですか?」
「さあ、そんなの知らないよ。ただ、取締役として損害賠償責任を問われるからね」と、教えてくれた。

さらに「倒産したら、裁判所から債権者宛に『破産手続開始通知書』がくるのでわかるはず」とも。この弁護士、口は悪いが案外いいやつかもしれないと思った。

実際に「破産手続き開始通知書」が届いたブログ

連載していた「GG(ジジ)」を発行するGGメディア株式会社が倒産してしまったのです。日経ビジネス『乗用車感覚で買うと、正直辛いと思います

また、夏川氏が中村と交わした念書の契約書をみると、法人としての念書であり、中村の個人資産で支払う義務に応じたとは見て取れないらしい(念書の契約書が実印ではなく、社印で押されていることなどが理由)。

一連の手口を見て、中村は手慣れていると弁護士はいう。会社をいくつも持っていることから考えて、「何度も同じことを繰り返している常習犯でしょ。お金が底ついたら次の出資者を探して、また次の会社を経営して、みたいな悪徳詐欺師のような人、稀にいるんだよね」といった。不労所得とか不労報酬で収入を得ているような人なのだろうと。

なるほど…。ここにきて、ようやく中村の悪徳っぷりが3割増しになった。そして、3つめに弁護士がいったのは、「この案件を受ける場合は、調査費用が前金で10万円、成功報酬は回収額の10%ね」である。

お金の話だ。つまり、集団訴訟を起こすにあたり着手金(耳がバカになっていて、寄越せに聞こえた)が必要だというのだ。グループに相談します、といって私は持ち帰ることにした。

未払いグループ(私もそこに入っている)は、20~30万円の小額グループだった。中でも、金額が50万を超えているのは、私とあと2人。

他の人は「回収できるかわからないのに10万円も払えない」という。グループには入っていないライターに声をかけたら「訴訟するなら乗っかります」という。

残りは法人のため、訴訟は会社に相談しなくてはいけないらしい。結局、集団訴訟で集まったのは3人…。

3人で話し合った結果、回収するには綿密な裏どりが必要だろう、という結論にたどり着いた。結局、弁護士も法律も味方ではないのだ。

弱いなぁ、無力だなぁ。フリーランスといういち個人が法人と闘う。相手には、弁護士、税理士、行政書士、専門コンサルタントなど、泥くさい仕事も受け入れて中村を支持するバックがついている。

今の時代「努力すれば報われる」だなんて熱い言葉が流行らないのがわかった。いろいろと面倒になってきた。というのが、正直な気持ちだった。

私は仕事に追われながら、空いた時間を見つけて、今回の起きた未払いについて同じような問題がないか出版業界の報酬未払いについて調べてみた。

・幻冬舎の編集者箕輪氏「ライターA子氏原稿料未払い&セクハラ問題」

3年経っても未解決幻冬舎・編集者箕輪厚介氏のフリーライター未払い問題だ。ライターA子氏が執筆した、エイベックスの松浦氏の自伝本の原稿料(約10万字に及ぶ)の未払いが文春砲にスクープされた。《CEO退任》エイベックス松浦氏が「偽装離婚で税金逃れ」を告白した“幻の自伝本”インタビュー音声を公開

箕輪氏のとライターA子氏記事を読んでいると、一定数ひどい人間がいること(松浦氏や箕輪氏の発言にかなり気持ちが沈んだ)、弱者は弱者であることを知った。

・起業家の西和彦氏がオーナー『GG』未払い騒動とともに休刊

次に、2018年。元LEON編集長・岸田一郎氏が編集長を務める『GG』の報酬未払い問題。雑誌のカバーモデルになった、俳優の石田純一氏も未払いを訴え、記事に取り扱われた。やんちゃなシルバー向け雑誌「ジジ」発行元が破産手続き開始。負債総額は債権者89名に対して約1億3700万円。最終的に西氏から100万円ずつ支払われ(全員かは不明)、その後はなしのつぶて。

・『小悪魔Agaha』などを発行していた『インフォレスト』倒産

2014年と少し遡ると、『小悪魔Ageha』などを発行していた『インフォレスト』が事実上倒産。負債総額30億円。取締役は総会での説明責任も逃れた。結局、社員の給与もフリーランスも未払いに終わった。

出版業界では、業務委託契約書を交わすことが少ない。「ページ単価を言わない」「金額がざっくりしてる」「条件など不明瞭」なことが多い。

これは下請法違反なのだが、未だ多くの出版社がフリーランスとの業務委託契約を締結しない。

フリーランス側は版元がクライアントであるため、立場上言い出しにくい。この状態が、すでにパワハラのような感覚

合意した後、または納期後に金額でもめたり報酬未払いになるなどのトラブルも多い。それを当然のように出版社側は「会社の規定なんで」という。社会は、不条理にあふれている。

グレーゾーンの知的障害者の家族のコミュニティや生活のあり方などをもっと広めたいと思っています。人にいえずに悩んでいる「言葉にしたい人」「不安」を吐き出せるような場所を作りたいです