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🎧夕闇に知る

夕闇。夕暮れ。
日が沈み、月明かりが出るまでの宵闇。
昼でも、夜でもない、ほんの一瞬の時間。

空が燃えるように赤かったのは、今日一日頑張ったことへのご褒美かなと、そんなことを思いながら、地平線に消えた太陽を思う。

あの光は今、どこの朝日になっているんだろう?

くたくたになって帰宅するバスの中、ありったけの体力を使ってようやく1日を終えたのに、明日、あの太陽はもう一度上がってくるんだよなぁと、ぼんやり思った。

夜が来たら来たで、やらなきゃいけないことがたくさんある。
ご飯を食べて、お風呂に入って、宿題もあったし、ああ、そういや、あの子に借りたCDを返さないと。ダビングしなきゃいけないけど、まだテープあったかな。

ああもう全部、面倒臭いな…赤い空を見つめたまま、このままバスに揺られているわけにはいかないかな。

「ただいまぁ…」

「おかえりー!ね、今日さ、カレーなんだけど、お母さん常会でこれからすぐ出かけなきゃいけないのね!だから、ルー入れて仕上げといてくれる!?」
「あ!そうそう、お風呂なんだけどさ、さっきお母さん、水入れすぎちゃって!いつもよりたくさん燃さないとぬるいと思うわ!」
「あっ!お父さんの分のカレーは残しておいてね!」
「それとさー!…ん?何言おうとしてたっけ!?」
「あっ、そうだ、よしが部活から帰ってきたら、汚いから先風呂入れって言ってね!」

夕暮れ時、どれだけセンチメンタルになろうとも、明日になるのが待てないような母の騒々しさに、迫る夜の闇は、宴のような時間に切り替わる。

「いいから早く行きなよ」
「なんかあったら、小島さんち電話して!電話番号わかる?」
「わかる、わかるし、もう何にもないよー」
「そういう油断がね、事件につながるのよっ!」

事件て何や。ミステリー読みすぎぞ。

言われた通り、カレールーを探す。
「あ、辛口がいいって言ったのに、また中辛」
野菜と肉たちが煮えているスープの香り。
気づけば、鼻歌混じりで鍋をかき回している。
「あ、この間にCDダビングしとこっと」

外にはそろそろ月が出る。

夕闇の時間、そのまま漆黒の闇に囚われてしまわないのは。
夜の闇が、柔らかく優しいものであるならば。

夕暮れ時に感じる、誰かの愛情のおかげかもしれません。


なんて、愛されてる幸せを見落としがちだった思春期をさらっと振り返りつつ。
本日のすまいるスパイスは、ピリカ文庫より『夕闇』の朗読をお送りします。

私が朗読させて頂いたのは、めーさん『月が出るまで』



…いや待って。おもしろワードが多すぎる。

シリアス、からのブーメランパンツ。
睾丸石、からの、落ちてた石蹴ったら野良犬に当たって追いかけられた時につまづいた石。(もう、どの石を集めていいかわからない)
そして、北斗神拳!からの秘孔封じ。
貯金使い込みの発覚。

軸にあるのは、大変に辛い出来事のハズ、いや絶対そう、そのハズよ!?

しかし、要所要所でおもしろワードくるものだから、どのテンションで朗読したらいいのか、私、軽く夕闇の中で迷子なりました!笑
この世界観、初めての快感…!

そのうえ、この飄々としているりょうくん、読めば読むほどタイプです。
闇に飲み込まれない彼となら、きっとどんな夜も越えれられそう。
そして、美奈という、太陽のような女性もまた、タイプ。
夕暮れ時の空を柔らかく照らし、月を照らし、そして必ず翌朝には天真爛漫の顔で登ってきてくれる。

もう、あれだ、好みのタイプだ、お前ら大好き!というテンションで朗読だ、よし!
愛おしい2人の夕闇時、読んでいる私も幸せな気持ちになっていくのでした。

闇夜、恐れるに足らず。
夕闇の闇は、そんなに闇じゃない。
そうおっしゃるめーさんワールド、愛に溢れた心地よい夕闇の景色、ぜひ楽しんでください。


そして、こーたさん朗読。
泥部五郎さん『夕グレ』


『タグレはゆうぐれ、と読む。だぐれ、ではない。』

最初の一行で、これほどまでに持っていかれることあります?
っていう。
いや、「たぐれ」だろ?って思うし、だとしたら、タグレって何?ってなります。

そして、一行目で、散々振り回されるのに、そこから『夕方になるとグレるからそう呼ばれる』って、どゆこと?夕方だけグレちゃうってどんな人??

さらに、そのグレかたが、なんとも魅力的。

ちなみに、私はブルーハーツがものすごく好きで、中学生の時、その歌詞を書き出して部屋の壁に貼ったりして、親にちょっと心配されたりしました。「僕の右手を知りませんか?」

さて、タグレです。
夕方になるとグレる彼は、人生の夕暮れ時もグレます。
その傍らには、夕闇さん。彼女もまた、夕暮れ時から夜の間だけ目が見えないという、不思議な設定。
タグレと、夕闇の物語は、人生の夕暮れもすぎ、終焉に向かって進みます。
だけど、こちらの作品もまた、闇にのまれることが決してありません。
随所に光るユーモアがまた、なんたるセンス。

こーたさんの声もまた、まろやかな夕闇を思わせます。
一度もタグレをたぐれ、と読み間違わなかった!声に出して読むとわかります、集 中 力!


それにしても、今回、お二方とも、随所にふふっとつい笑ってしまうワードを散りばめながら、愛情に溢れた絶妙な夕闇、美しい時間、センスが迸ってて、ピリカさん、こーたさんと惚れ惚れ溜息出しました。
こんな時間をありがとうございました!

夕闇。
夜の闇に向かってまっしぐら、そんな時間じゃないのですね。


それから、それから!
ペンギンカフェオープンです!
紫乃さんがゲストにチリンチリン♪

旅に出る時の、紫乃さんの荷物の少なさに驚愕しますよ!
私は、marmaladeさんがおっしゃる「ネズミの子一匹入らないトランク」派です!笑
こないだの夏の帰省だって、紫乃さんの荷物の5倍ぐらいあったハズ。
何がそんなに違うんだ?
またぜひ聞かせてほしい、そんな耳に心地がいい、ペンギンカフェ3人トークです♪



すまスパ、どんどん更新されてます!
私、シルバーウィーク堪能しすぎて、全部間に合っておりませんが、のんびり更新、ぜひお付き合いくださいませ。てへ。


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