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夏を制する者

友人からピロンとLINEがきた。
「あ、そろそろ旅行の話かな?」

療養期間もそろそろ終わりというころ、夏休み最後のお楽しみとして友人家族と旅行にいく予定だった我が家は、「療養も明けてる頃でよかったよかった」
そう思いながらLINEを開いた。

『ごめん、小学校最後のイベント控えているから、今回の旅行キャンセルにしてもいいかな、本当にごめん!』

ニュースを見るたびに、数字が伸びる。
実際家族全員が罹って思ったが、本当に都市伝説じゃなく、ある日突然、あの数字の一部となる恐ろしさを知った。

返事に戸惑うことは一切なかった。
『もちろんだよ!落ち着いたらまた計画立て直そう!』

…問題は娘だ。
夏休み入ってすぐの頃こそ、次々と友人や従姉妹が遊びにきて楽しんでいたものの、8月入ってから、3年ぶりの実家帰省の計画のために、割と慎ましく宿題などをして過ごしていたはずなのに罹患。
最後のお楽しみの旅行までがキャンセル。
夏休みの思い出が、完全にコロナ一色で終わろうとしている。

「ええと…ごめん、旅行、中止になった」
かなり控えめかつ、優しさ溢れるボイスで言ったものの、彼女は瞬間湯沸かし器のように「うわーーーーーんっっ!!」と。
本当に、うわーーーーーんっという文字を口から吐き出すみたいに泣いた。


ああ。切ない。
誰も悪くないのに、こんなに泣かせなきゃいけないのが切ない。
「だってしょうがないでしょう」って言わなきゃいけないのが切ない。

「せっかく治ったのにー!!」
うん、せっかく治ったのにね…うん、治った、ね…?


あ、そうだった!我が家はもう治るのだ!
わんわん泣いている娘を片手に抱きながらカレンダーをチェックする。
なんとかなるんじゃないか。
習い事は休ませよう。


「私、実家帰らせていただきます!」
すぐさま夫に叫んだ。
10日間、夫の顔を見続けてうんざりしていた…訳じゃないですいやほんと、ほんのちょっとだけですって!!

夫は号泣する娘を見ながら、「なるほど!そりゃいい!」と、これまた10日間嫁と一緒にいすぎたために、いささか嬉しそうなホッとしたような声で言った…訳じゃないですいやほんと、ほんのちょっとそう思っただけですって!!

娘の顔がパッと輝いた。
「じぃじばぁばのとこ行くの?」

「うん行こう!その代わり、夜行バスは諦めてね、体に負担がかかりそう」

娘は、夜行バスというワードにちょっぴり反応したけれど、それでも「うんわかった!」とさっきの「うわーん」と同一声帯とは思えない弾んだ声を出した。

夫は、留守番。
「久しぶりに1人!何食べよう!」って、乳飲み子抱えて24時間耐久レースしている主婦みたいなセリフを言っていた。
なんにせよ、人間ひとり時間は大切だ。私も療養期間イライラしてたしな、羽をのばしてくれたまへ!あ、仕事も始まるんだった、頑張ってください。


夏休み。
長い夏休みは、正直体力も奪われるし、ご飯作りも大変になるし、リズムも狂うしで大変なことが多いけど。
なんだかんだといつも楽しみにしているのは、私の方なのだ。

海に、川に、田舎の景色、花火、プール、スイカ割り。
映画に買い物、夏のワンピース。
汗まみれの子供の匂いを嗅ぎながら、今日もたっぷり遊んだねぇと眠りにつくひととき。
おそらくは、もうあと残りわずかな日々だち。
この一瞬を、ポッと出のウィルスに奪われてたまるかと、そう憤りながら丸2年、なんやかんやと勝利宣言をして過ごしてきた。


今年も「楽しかった夏休み」
そう言わせてみせるから、任せとけ!

お母さんはそんな気持ちで新幹線の予約をした。

そして今、ひとまわりほど小さくなった両親と「明日は何する?」と思いの外忙しく過ごしてます。
ようやく会えた夏、しばし満喫してからnoteに戻ります♪


↓去年の夏の勝利宣言






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