【短編小説】念願の果て


涙が止まらなかった。
私は大歓声の起こるリングをうつむきながら立ち去った。



ついに念願のデビュー果たした今日この日。

興奮と緊張が入り混じるリングだった。
私は思っていた以上の洗礼を受けた。


練習とはまるで違う相手の攻撃と動きに、戸惑うことしかできなかった。
ほとんど一方的に攻撃を受けて、何度も倒れてしまった。


私が3度目に倒れたとき、観衆の声援が胸に響いた。

私はカウントが終わるギリギリのところで、歯を食いしばって立ち上がった。
そこで、歓声がいっそう高まった気がした。

私は決死の思いで反撃にでた。
腕が赤くなるまで練習した技だ。


私の技は相手に通じなかった。
私は一瞬、呆然としてしまった。

そこへ相手の必殺技が決まる。
私はもう立ち上がれなかった。


鐘が鳴り響き、私の敗戦が決まった。
私は目頭から熱いものがじんわりと流れるのを感じた。
リングから引き上げるときは、嗚咽に代わっていた。


私は二度とこんな思いを味わいたくないと思った。
次の試合では必ず勝利をつかむと誓った。

そして、これまで以上の熱を込めて練習に打ち込むだろう。


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