【短編小説】新しい扉




ネオンの光が薄暗い道を照らしていた。
私の心は大波の押し寄せる海だった。
彼のほほえみ、彼に触れられた指のぬくもり。
私を癒やし、別世界に連れて行く唯一のもののはずだった。

彼と出会ったバーで思いを打ち明けた。
彼は私の思いを受け止めることはなかった。
「僕、女性に興味ないんだ」
彼は右耳だけにつけたイヤリングに触れた。


私の脳は事情を受け入れるのを拒否していた。
私は両耳をふさぎ、目を真っ赤にした。
この恋は禁断の果実であると思い知った。


私は別のバーで酒を飲むことにした。
飲むたびに、彼の顔が脳裏に浮かんだ。
彼の思い出が私の心に深く根をはっているのを思い知った。
私の心は彼の破片を求めて疼いていた。
彼の幻影をアルコールの中に求める儚い日々を過ごしていた。
最初から彼と結ばれない運命であったと悟った。。。


ある日私は酒を飲むのを辞めることにした。
彼の思い出は酒とともに葬り去ることにした。
永遠の苦悩は終わりを告げるはずだ。


そして私は新しい扉を開ける。

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