【短編小説】和解
7回目の父の命日が来た。
僕は父との暗い過去を思い出していた。
かつて父の命令は絶対だった。
僕は学校には行きたくなかった。
父は行けと命じたので、僕は重い足取りで家を出た。
父に画家になりたいと夢を打ち明けたのは高校に入る直前のことだった。
父はテーブルを殴打した。
それから僕に何かを投げつけた。
僕は夢を諦めた。
あれから長い歳月が過ぎた。
父は僕と解りあえないまま死んだように思う。
僕は今でも父にはいい気持ちがしていない思いがする。
父の墓前に来た。
花を持ってきた母とともに線香をつけた。
線香を備えるとき、ふと父の記憶がよみがえった。
手を合わせて線香の備え方を教えてくれたこと。
小さい僕を愛おしむように入浴させてくれたこと。
生まれたときに誰よりも喜んでくれたこと。
僕の目にはいつしか熱いものが流れていた。
こんなにも父に大事にされて育ったのを、すっかり忘れていたと思った。
僕は墓前から離れるとき、心の中で何度もありがとうと呟いた。
父との思い出は死ぬまで忘れたくないと思った。
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