見出し画像

[ナカミチの考察(VOL.16)]680ZX – 最初のオートアジマス機能搭載機

ナカミチと言えばアジマスへのコダワリ。そのアジマスを自動で調整する機能を最初に搭載した680ZXの紹介です。


はじめに

680ZXの前モデルである680で録音ヘッドアジマスをツマミで手動調整できるようにしました。これは当時FMエアチェックが盛んに行われていてFMの音声帯域上限が15KHzでしたから、録音時間を倍にできるハーフスピードでこの周波数上限15KHzを狙うために必須となる録音ヘッドのアジマス調整機構を組み込みました。それを自動化したのが、680ZXです。

アジマス制御について

これまでナカミチのカセットデッキはZX-7、CR-70、1000ZXL、DRAGONの4機種について記事にしましたが、アジマス制御に関しては以下の様な分類になっています。

 ・録音ヘッド制御
 自動調整 1000ZXL/700ZXL/700ZXE/682ZX/680ZX
オシレータを使った手動操作 ZX-9/ZX-7/680/1000/700

 ・再生ヘッド制御
自動調整 DRAGON
マニュアル操作(電動制御、リモコン制御可) CR-70
マニュアル操作(手動調整) CassetteDeck1/DR-1

680ZXはナカミチの1000ZXLが発売されるまではフラッグシップ機であり、後の1000ZXLと同一の選別ヘッドを搭載していました。選別ヘッドとアンプ技術によって、ハーフスピードで驚愕の15KHZをマークしていました。

オートアジマス機能

カセット中心窓に小型した録音ヘッド、再生ヘッドが配置され、カセットの違いによる垂直調整はほとんど必要が無いところまで達していましたが、680ZXに採用されたハーフスピードによる15KHzまでの録音再生はスタンダードスピードでは2倍の30KHzにまで及びます。このことはより角度ずれによる損失が大きなものになるために、680ZXでは自動的に調整する方式をとりました。基本的には、内蔵された400Hzテストトーンを録音再生して、その信号を矩形波に直し、左チャンネルと右チャンネルの位相検出をすることによって、左チャンネルに対する右チャンネルの位相の進み、遅れが生じたときモーターを時計方向または反時計方向に回転させ連動されたギアから図のように録音ヘッドを左右に傾斜させるものです。録音ヘッドのスリットギャップが磁気的に再生ヘッドと合致したときに位相差もゼロとなって、モーターは停止します。この間わずか1-2秒、これで角度ずれによる高域損失がなくなり高い性能がキープされるのです。

録音アジマス調整のメカ模式図
オートアジマスユニット

ハーフスピード

当時カセットテープのバリエーションで最長はC120タイプの120分でした。これでハーフスピードを組み合わせると片面で2時間となりますが、C120はテープ厚が薄くなるので、高性能テープはほとんどなく、ハイポジションタイプやメタルタイプは大抵C90タイプまででした。当時、FM放送の番組の多くは1時間でしたから、ノーマル速度+C90テープでは45分で切れてしまうところが悩みどころですね。どんなに素早くリバース動作が出来たとしても、曲中(又はトーク中)で音が途切れてしまうので片面の録音時間が重要になります。C90テープ+ハーフスピードでは片面90分ですから、ほとんどの番組が片面で途切れることなく、録音できることになります。両面で2週分が録れますね。

イ録れますね。定について触れます。通常はハイポジションテープ、メタルテープのイコライザー設定は70μsなのですが、ナカミチではハーフスピード時はノーマルテープを含めて120μsに設定して使用します。こういった仕様についても厳密に規格を守ることを条件にコンパクトカセットの基本特許の無償公開したフィリップスに駄目出しされたのではと思います。

RAMM

1000ZXL/700ZXLに搭載されたRAMMとは異なり、曲間のブランクを検出する方式です。680ZXでは前後18曲までの頭出しが行えました。なお、680ZXはマニュアルキューイング機能も搭載されており、FF、REW中にポーズボタンを押すとスピードが約1/3にダウンして再生が可能です。この状態でFF、REWボタンを押すと更にスピードが1/6になり曲の頭出しが可能です。私はヘッドの摩耗が気になるので、ほとんど使用しません。

シリーズバリエーション

[660ZX]

680ZXと同一の規格を満足しながら簡略したもので、録音・再生と専用のヘッドを持ち、録音・再生増幅器を兼用しています。このために同時録再で、オートアジマスアライメント、レベルキャリブレーションは可能ですが、アフターモニターが出来ません。左右独立およびマスターボリュームによる録音レベル調整、メタルテープを加えた3ポジション・テープセレクタ、9曲までの自動頭出し、キューイング、ピッチコントロール、レックミュートなどの機能が含まれています。レベルメーターは指針式-40dB~+7dBのピーク指示となっています。

660ZX

[670ZX]

680ZXと同一の規格を満足し、スタンダートスピードのみとしたもので、専用の録音ヘッド、再生ヘッド、増幅器を持ち、同時録音モニターが出来ます。レベルメーターは指針式-40dB~+7dBのピーク表示で、正確なピークを表示します。9曲までの自動頭出し装置、キューイング、ピッチコントロール、レックミュートなどの機能を備え、オートアジマスアライメント、レベルキャリブレーション、そしてメタルテープを含めた3ポジション・テープセレクタにより、それぞれのテープでベストの性能が確保できます。

670ZX

[680ZX]

先の2スピード・カセットデッキ680にさらにオートアジマスアライメント機能を加えたものです。0.6ミクロン、クリスタロイ再生ヘッド、周波数分散型ダブルキャプスタンDC録音アンプ、ダブルNF回路などを基本に、18曲までの自動頭出し、キューイング、ピッチコントロール、その他数多くの機能を持ち、VUレベル、ピークレベル、キャリブレーションと多用途の蛍光ディスプレイを備えています。このシリーズの最高級機です。

他社はVUメーターかVUメーター+数ポイントのピーク表示LEDな製品が多かったですが、ビジュアル的に指針式に惹かれます。ナカミチは他社よりもオーバーレベルでのクリップ耐性は高いのですが、ピーク表示はレベル調整し易いのは間違いないですね。

スペック

[660ZX/670ZX/680ZX共通]

トラック型式 :4トラック・2チャンネル・ステレオ方式
ヘッド      :3(消去x1、録音x1、再生x1)
モーター     :PLLサーボモーター(キャプスタン用)x1、DCモーター(リール用)x1、DCモーター(アジマス用)x1、DCモーター(メカコントロール用)x1
電源 :100V、50/60Hz
消費電力 :最大30W
テープ速度 :1-7/8ips(4.8cm/s)
ワウフラッター :0.04%以下(Wrms)
周波数特性 :10Hz~22kHz ±3dB(ZXテープ)
総合SN比     :66dB以上(3%THD、WTDrms、ドルビーNRin、70μs)
総合ひずみ率 :0.8%以下(400Hz、0dB)
消去率 :60dB以上(飽和レベル、1kHz、ZXテープ)
チャンネル・セパレーション :37dB以上(1kHz、0dB)
クロストーク :60dB以上(1kHz、0dB)
外形寸法 :幅482x高さ143x奥行340mm
重量 :約9kg

[680ZXハーフスピード]

テープ速度 :15/16ips(2.4cm/s)
ワウフラッター :0.08%以下(Wrms)
周波数特性 :10Hz~15kHz ±3dB(ZXテープ)
総合SN比     :60dB以上(3%THD、WTDrms、ドルビーNRin、70μs)
総合ひずみ率 :1.5%以下(400Hz、0dB)

まとめ

1979年10月に新製品発表から後継モデルとなる682ZX/681ZXが発売される1981年までと発売は短命でしたが、個人的には大型筐体の1000ZXL/700ZXL/700ZXEよりも通常のコンポサイズ、ラックマウント付きでブラックを基調とした精悍なフェイスの68シリーズがナカミチらしいと感じますし、後継モデルの682ZX/681ZXでアジマスカバープレートの文字がゴシック体に変更される前の筆記体というのも良かったですね。
それと、フィリップスに怒られて(?)このモデル以降はハーフスピード機をやめてしまうことになりますので、最後のハーフスピード機という点でも貴重なモデルだと思います。

2024.1.13

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?