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ガンダム精神世界探索(8)Zガンダム あらかじめ傷つけられた世代

 アムロ・シャアをはじめとする主要キャラクターの行動からその心理を読み解き、ガンダム・ワールドの神髄に迫ります。 (2000年から2006年にかけて、本サイト「MUDDY WALKERS」で連載していたものを再掲)

心に地雷原を持つ主人公、カミーユ・ビダン

 アメリカでも日本でも、今心を病んでいる若者が非常に多いといわれている。特に顕著なのが、いわゆる「キレる」という言動である。これは、心理的には、ささいな出来事によって怒りが爆発し、自分の感情がコントロールできない状態に陥ることをいう。「機動戦士ガンダム」の続編である「機動戦士Zガンダム」の主人公、カミーユ・ビダンもまたそうした「キレる」少年の一人であった。

 こうしたことをふまえて、Zガンダムの1~2話を見てみよう。ストーリーとしては、スペースコロニー<グリーン・ノア>で暮らす少年カミーユ・ビダンが、コロニーに謎の赤いモビルスーツが侵入して攻撃を始めたのをきっかけに、<ティターンズ>の所有するモビルスーツ「ガンダムMk-II」を強奪し、侵入者である謎の人物、クワトロ・バジーナ大尉とともに宇宙へ旅立つまでが描かれている。
 ストーリー構成としては、通称ファーストと呼ばれる前作「機動戦士ガンダム」と非常に似ているが、ここに3つの大きな相違点がある。この違いが、今後の展開で作品の根幹をなしていくものと思われるので、ここに明記しておく。

 (1)ストーリーの発端時、戦争状態でない。
 (2)コロニー侵入者の所属・立場が明確でない。
 (3)主人公カミーユの「怒り」の理由がわからない。

 このうち、(1)(2)はひとまずおくとして、(3)について詳しくみてみよう。
 前作同様、本編でも、戦争と関わりのなかった少年が、敵の急襲など突発的な事件によってガンダムに搭乗し、激戦の渦にまきこまれていく流れが作られているのであるが、主人公カミーユの「怒り」は、前作の主人公アムロのそれとは異質である。

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アムロ・シャアをはじめとする「機動戦士ガンダム」の主要キャラクターの行動からその心理を読み解き、ガンダム・ワールドの神髄に迫ります。 Vol.2では、Zガンダムの主人公、カミーユ・ビダンと彼を取り巻く少年少女の心理を掘り下げています。付録として、「Zガンダム再構築」を掲載。

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