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第6話「エウロパの休日」2 小林昭人

 本作は2005年に小林昭人さんがホームページにて連載していた小説で、作者の許諾を得て、飛田カオルが本サイトに再掲するものです。

 それから数十年後、彼らの関係について、後にオルドリン大学で文学博士号を取得し、「マシュマー研究家マシュマティシャン」として著名になったエゼルハート・カーター博士は、自分の知る限りの事実と膨大な情報を精査した後、著書で次のように記している。

「それは、危険な関係デンジャラスであった。しかしながら、彼らは各々の立場でそれを守り通したし、危険を承知で互いを庇ったことも一再ならずあった。彼らの間に何らかのノットがあることに気づいた者は少なくなかったが――― 私はその最初の一人である。概して一般にはほとんど知られることがなかったことは、ジオンが恐怖の専制国家オーターキーであったことを考えても驚くべきことであった(中略)、、そして、このエウロパでの逢瀬を最後に、この関係は未熟児のまま消失するものと誰もが考えた。それが当人たちの考えだったとしても、あながち外れてはいなかったはずである。」

エゼルハート・カーター「ジオン公国の興亡(宇宙における貴族国家の実験)」
宇宙世紀0120年 オックスフォード大学出版局 273頁

 それから二日後、ハマーンはエウロパのバッカス宇宙港からジオン本国に旅立った。展望デッキから船が空の彼方に消えるまで見送ったマシュマーは、それまで肌身離さず身に着けていた銀のペンダントを首から外してポケットに収めた。ペンダントのもう一方の片割れは、彼女の手紙と一緒に共に語り合ったホテルの部屋の鏡台にある。
「終わったな、、」
 上昇する宇宙船からの飛行機雲がたなびく、エウロパの青い空と白い雲を見上げながら、彼は呟いた。

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7,710字

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