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「地球(テラ)へ…」全話レビュー(23)地球へ
あらすじ
同族であるミュウを殺したことで思い悩むトオニィ。ジョミーは通信で、交渉をすべきとキース・アニアンに呼びかける。キースはグランドマザーに報告するが、彼女はキースに判断を委ねた。彼はなぜSD体制構築の際ミュウ因子を取り除かなかったのかと問いかける。
Aパート:キースの交渉受諾、ジョミー演説、地球の姿、メギド発射準備
Bパート:話合いのため地球へ、フィシスとの再会、データ送信、交渉へ
コメント
ジョミーの養父母とスウェナの娘レティシアを登場させ、ミュウとして拘束し、その収容所を木星に落とす、と脅しをかけたキース・アニアンだったが、ジョミー率いるナスカチルドレンの超強力サイオンパワーの前にはなすすべもなく、結局「ドッキリカメラ」程度の騒動で済んでしまった。
そして本丸、いよいよ地球である。ここにもまさか、「ドッキリカメラ」が仕込まれているとは思わなかった。その顛末を、もう少し掘り下げていこうと思う。
キースのもとへ、ミュウの長ジョミー・マーキス・シンの呼びかけの通信が入る。「こちらには話し合う用意がある、互いに交渉のテーブルにつく時期にきたのではないか」という内容だった。キースはグランドマザーに、ジョミーの言葉を伝え判断を仰ぐ。だがグランドマザーは交渉するもよし、焼き払うもよし、と判断をキースに任せ、そんなことはありえない、とキースは驚愕する。そこでキースはマザーに尋ねた。SD体制を確立するにあたって、なぜミュウ因子を取り除かなかったのか、と。
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原作では、ナスカのあとにマザーに問い、まだその答えを知る資格はないと言われたために、答えを得るべく国家元首にまで昇進を重ねていったキースである。それが本作では、ようやく今、はじめてその問いをキースは口にした。遅い、遅いよキース、と言わざるをえない。
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解説すると、キースの問いは、SD体制で生まれてくるすべての人間の遺伝子と出生を人工的に管理しているのなら、生まれたミュウを抹殺するのではなく、生まれる前に遺伝子レベルで処理すればいいのではないか、という意味だ。
生きているミュウをすべて排除する、というのがキースに与えられた使命なのだが、彼だってサムやマツカ、シロエの死を悲しんだ感情があることからもわかるように、ミュウという種族を虐殺せねばならないことには、良心の呵責を感じていたはずだ。冷酷に見えるその表情の下に、そうした思いを隠し持っていることが、「なぜミュウ因子を取り除かなかったのか」という疑問から感じ取れ、それが原作ではキースという人物に奥行きを与えていたのだが、今までそれを伏せていたことで、キャラの魅力が半減してしまっている。
自室に戻ったキースは、SD体制に思いを馳せていた。自らの欲望を律することができないために、人類は完全な管理体制であるSD体制を必要とした。だが、それでもなお、自らを律することができない者がいる、そのため、人類の理性の要であるSD体制をあくまで守り抜く、ミュウの主張は断じて受け入れられない、と考える。
そして、セルジュを呼び出し、ミュウの交渉に応じること、会見場所はテラのリボーン本部、と伝える。そして、グレイブに、オペレーション・リーブスラッシュの発動を伝えろ、と命じる。
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ジョミーはキースの交渉受諾を伝え、全軍に向けて演説したのち、地球に向けて最後のワープを命じる。しかしそこには、エメルギーの重点を完了した惑星破壊システム「メギド」が待ち受けていた。
ここからわかることは、結局キースはミュウを焼き払うことに呵責を感じながらも、結局、交渉に応じるとしてジョミーらをおびき寄せ、ワナにはめてメギドで焼き払うことに決めたのだ。23話に仕掛けられた、一つ目の「ドッキリカメラ」である。
地球を目前にしたジョミーらは、その姿に愕然とする。地表は広範囲で砂漠化、海水のpH値4.2と酸性に大きく偏り、大気汚染も深刻で人類の生息可能レベルを超えている。青く美しいと思っていた地球でなかったことで、ジョミーらは失望を隠せなかった。
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わしらはこんなもののために犠牲を払ってきたのか
これが23話に仕掛けられた、二つ目の「ドッキリカメラ」である。
いやー、これは突っ込むどころでしょう。確か第2話でミュウの船に連れてこられたジョミーが、そこで教授から「本当の歴史」を学んだとき、環境汚染された地球を再生するため全人類が植民惑星へ移民したのは1100年前って言ってましたよ。 一体、それからの1000年間、リボーン再生機構とかいう、都市再生機構みたいな組織は何をやっていたんですかね? そりゃー老師だって「わしらはこんなもののために犠牲を払ってきたのか」と言いたくもなるだろう。
でも結局、
人類とはこれほどまでに愚かな生き物なのか、
自らを育んだ星をこんな姿に・・・
だが行こう、地球へ
過去は変えられなくても、未来は築けるはずだ
ぼくらと人類の間に横たわるSD体制を打破するために
というジョミーの前向きな一言で、この「ドッキリカメラ」は済まされてしまう。
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そして、交渉で引き寄せてメギドで焼き払う、というキースの作戦も、結局は「判断を任せる」というマザーの言葉で迷いに迷ったキースが、止めてしまう。
地球が青くなかった、という話も、メギドで焼き払ってやるぜ! という話も、結局は視聴者を「ドッキリ」させるためだけに仕込まれたエピソードであって、ストーリー全体の結末を導くためには少しも機能していないんじゃないか、というところに、なんだかがっかりしてしまう。
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嫌な予感として残るのは、キースの言葉にあったように、「自らの欲望を律することができないために、人類は完全な管理体制であるSD体制を必要とした。だが、それでもなお、自らを律することができない者がいる」というところだ。これはもしかして、最後にダメな人類を罰する流れだろうか?
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自らの判断でジョミーとの交渉にのぞんだキースは、ついにジョミーとグランドマザーとを対面させる決断をくだす。地中深くで養育されている「カナリア」なる子供たちが不気味だ。
用語解説
ユグドラシル
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地球再生機構「リボーン」の総本部。巨大な樹木のような形状をしている。名前は北欧神話に登場する架空の木、世界の中心にありすべての世界を内包する存在で「世界樹」などとも呼ばれる「ユグドラシル」から命名されている。マントルに達するほどの地下深くにグランドマザーが「いる」。
カナリア
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ユグドラシルの地下深い場所で養育されている子供たち。地球が人類生息可能なまでに環境が再生されたときには、最初に地球に出ていくべく、隔絶された環境で育てられている。
評点
★★
目先の「ドッキリ」改変で話を盛るのではなく、きちんと一人ひとりの思いや背景を描きこんでほしかった。
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