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第1話「木星沖海戦」2 小林昭人

 本作は2005年に小林昭人さんがホームページにて連載していた小説で、作者の許諾を得て、飛田カオルが本サイトに再掲するものです。

モビルスーツ「アライアンス」 マシュマー機 15時

 白いモビルスーツとそれに続くドムⅣの発艦により、強烈な砲火が一時怯んだおかげでマシュマーのモビルスーツ隊は避退ドローバックの余裕を得た。あのままだったら全滅させられたかもしれない。俺もまだまだだな、頭を掻きつつ隊を纏めて合流地点に急いでいたマシュマーだったが、先ほど見た白いモビルスーツがずっと隊を追尾していることは気にしていた。その機体が速度を上げ、迎撃コースを取るのを見た彼は無線を僚機に繋いだ。
「ヘルシング少佐、C─CAMのデータを君に渡す。」
「ジオンの白い奴ですか、迎撃コースを取っていますね。」
「あと70秒で会敵する。私が殿(しんがり)で防ぐから、君は責任持って隊を母艦レイキャビクに帰せ。」
「お供しますよ。」
「こういうのは一人の方がやりやすいんだ。いざとなったら、あそこに降りるさ。」
 アライアンスのマニピュレータが遠くにあるイオを指差した。まだ距離はあるが、少なくとも地表が識別できる距離になっている。マシュマー級のパイロットになると、むしろ単機ソロの方が都合が良いことはヘルシングも知っていた。
「予定時間を一時間経過したら、マーロウにガニメデに帰投するように伝えろ。それ以上は艦が持たないだろうからな。」
「了解しました。木星に呑まれないようにしてくださいよ。」
 交信後、彼は機を翻すと、接近する機体に向けて速度を上げた。ヘルシングは代わりに先導を引き受けると、編隊を纏めて合流ポイントに急いだ。回避運動イベイディングにエネルギーを消耗したため、各機とも戦闘の余裕は余りない。

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8,892字

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