第2話「運命の二人」2 小林昭人
「遠いぞ、最短距離でも地球から月の1.5倍だ。今は離れつつあるから、巡洋艦でも五日はかかる。」
木星圏の広さを知らないのか、と、オネストはシャアに苦言を呈した。が、当人は気にする様子もないようだ。シャアは一年戦争で勇名を馳せたジオン軍最高のエースである。
「リゲルグで行く。増加燃料パックを搭載すれば、三日でイオに着くはずだ。途中の燃料補給は群小の衛星基地で行う。十分行けるはずだ。さっそく、準備させよう。」
ジオン艦隊副司令官、大将であるシャア・アズナブルには当然のごとく彼専用の赤色の外惑星航行船「ロットコメット(赤い彗星)」号が与えられており、その格納庫には当然ジオンでは数機しかない最高のモビルスーツ「リゲルグ(MS-14S)」がある。シャア専用機の塗色は当然鮭紅色(サーモンピンク)であり、指揮官機として角も三本付いている。木星艦隊標準の「ドムⅥ(MS-09F)」では、いかに彼でもこの提案はしないだろう。シャアの機体はモビルスーツのメカニックに通暁した彼が直々にチューンアップを施し、通常の三倍のスピードで飛行できると言われている。
「外惑星航行速度を惑星圏内で使うのは危険では?」
それでも、これは無謀だ。オネストが懸念を上官に表明する。
「並のパイロットにはな。それにイオ公使のヨハンセンは私の古い友人だ。便宜を図ってもらおう。」
シャアはそう言うと快活に笑いながら、司令官室を後にした。
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Another tale of Z 第一部 木星編 宇宙世紀0092年。一年戦争に勝利した地球連邦だったが、大戦に疲弊した大国に、ジ…
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