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第2話「運命の二人」2 小林昭人

 本作は2005年に小林昭人さんがホームページにて連載していた小説で、作者の許諾を得て、飛田カオルが本サイトに再掲するものです。 

「遠いぞ、最短距離リーニエでも地球から月の1.5倍だ。今は離れつつあるから、巡洋艦クロイツェルでも五日はかかる。」
 木星圏ユピテルラオムの広さを知らないのか、と、オネストはシャアに苦言を呈した。が、当人は気にする様子もないようだ。シャアは一年戦争グロッセクリークで勇名を馳せたジオン軍最高のエースである。
「リゲルグで行く。増加燃料パックを搭載すれば、三日でイオに着くはずだ。途中の燃料補給は群小の衛星基地で行う。十分行けるはずだ。さっそく、準備させよう。」
 ジオン艦隊副司令官トライブン大将アトミラールであるシャア・アズナブルには当然のごとく彼専用の赤色の外惑星航行船「ロットコメット(赤い彗星)」号が与えられており、その格納庫には当然ジオンでは数機しかない最高のモビルスーツ「リゲルグ(MS-14ツーパー)」がある。シャア専用機の塗色は当然鮭紅色ラクスローザ(サーモンピンク)であり、指揮官機として角も三本ドライ付いている。木星艦隊標準の「ドムゼクス(MS-09F)」では、いかに彼でもこの提案はしないだろう。シャアの機体はモビルスーツのメカニックに通暁した彼が直々にチューンアップを施し、通常の三倍ドライマルのスピードで飛行できると言われている。
外惑星航行速度インテプラネタールを惑星圏内で使うのは危険では?」
 それでも、これは無謀だ。オネストが懸念を上官に表明する。
「並のパイロットにはな。それにイオ公使のヨハンセンは私の古い友人だ。便宜を図ってもらおう。」
 シャアはそう言うと快活に笑いながら、司令官室を後にした。

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8,063字

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