2020年 獣害対策レポート ~獣害忌避装置GKSシリーズによる忌避音を使ったアプローチ~

1.目的 忌避音を使った獣害対策

2020/1/24から、GKS-02,GKS-10を用いた獣害忌避効果の検証を開始する。
うまく忌避効果があるなら、本学の遠隔センサーモジュールと連携させたい。

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2.方法 設置場所や検証を考える

・福井県奥宮谷地区にて忌避装置を設置し、忌避効果を確認する。
この地区は、森側に柵を設置し、各田には電気柵も設置しているが、獣害被害が減っていない場所
・2019年からはスーパーモンスターウルフを設置して検証中
・ネットワークカメラを数台設置し、動物の出現状況を確認していく

実験地1:奥宮谷地区 放棄田中央(土地所有者には設置許可を得て実験)
柵の内側、昨年は特に鹿を中心に動物が多く出現した場所

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実験装置:GKS-10

実験地2:奥宮谷地区 山林間 ぬたば
柵の外側、猪、鹿さまざまな動物が多く出現した場所

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実験装置:GKS-02

忌避装置設置場所:以下の通り

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カメラ設置場所:以下の通り

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3.結果 動物出現状況の年度比較

2020年1月から5月の動物の出現状況について、2019年の結果を踏まえて簡単に報告

実験地1:奥宮谷地区 放棄田中央

まず、2019年の出現状況はこのような感じ
2019年の奥宮谷地区 放棄田中央

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かなりの頻度で鹿が出現していることがわかる。
放棄田にはクローバー等の雑草が茂っており、冬のうちは、それらを日常的に食べにきている印象。
いつ行ってもフレッシュな糞がおちている状況であった。

2020年の奥宮谷地区 放棄田中央
2019年に比べて、GKS-10を設置した2020年の出現状況はこのような感じ。

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昨年度と比較して、かなり鹿の出現頻度が減ったことが伺える。
しかし、このGKS-10設置から200m離れた地点では、鹿の出現数が冬から春にかけて急激に増加している。
この地点は、GKS-10設置から200m離れた放棄田である。
昨年度のデータがないため、確実なことはいえないが、2月、3月に鹿がかなりの頻度で出現しており、こちらに鹿の出現位置が流れた可能性がある。

実験地2:奥宮谷地区 山林間 ぬたば

まず、2019年の出現状況はこのような感じ

2019年の奥宮谷地区 山林間 ぬたば

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イノシシと鹿が頻繁に出現しており、その他の動物も出現する。
常に水が溜まっており、動物たちの水場となっている。

2020年の奥宮谷地区 山林間 ぬたば

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2019年の同時期と比較して、動物の出現数自体は少なくなったが、4月は逆に増えており、劇的な効果が見えたわけではないことがわかる。

このぬたばの結果について考察していく。

ぬたばの考察

効果があったと考えられるイノシシのケース

この動画のように、近くまで動物が来た場合、忌避音と光によりイノシシが逃げていることを確認できた。
この動画の場合は、忌避音というよりも、光に驚いて逃げているように見受けられる。
また、忌避装置と動物との距離は1~2m程度

効果があったと考えられるカモシカのケース

この動画では、カモシカがセンサーに反応し、逃げている。
明るい時間帯であることから、光ではなく忌避音により逃げていると考えられる。
また、このようなケースの場合、逃げ方が多少ゆっくりであることもわかった。

4.実験地1、実験地2から見える課題と今後の方針

センサーの感知範囲の問題は早々に対応する必要がある。
特にぬたばのケースでは、山林間に設置したことから障害物も多く、相当に近づかないことにはセンサーに反応せず、忌避効果はないようである。

特に、上記動画のように機器から10m程度離れている場所では通常通り動物が出現している。
10mは忌避音の効果範囲であるが、センサーによる感知が届かないため、本来の機器のパフォーマンスを発揮しきれていないと考えられる。
また、実験地1(放棄田)については、高い効果を示している。しかし、実験地から200m先の地点では動物の出現回数が増加している。
地区全体を守るためには、忌避エリアを広げることが重要となってくる。

本年度は、弊学が開発している遠隔センサー型獣害モジュールと多地点メッシュネットワークを構築し、面でエリアを守る検証も同時並行で行っていく予定である。

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 ※2019/5/24 草が伸びすぎて誤検出が多くなったため草刈を実施(↓土井三太郎)

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©ABIKO Lab.2020