窮ち

口が喋っている、手が書いている

窮ち

口が喋っている、手が書いている

最近の記事

  • 固定された記事

松明

 自分の考えを集めて文章にする。文章は文意を帯びるから、考えていることよりもずっと逞しくなってしまう。  考えていることはいつもころりと身体から飛び出る。そして飛び出た考えはからだの外を転がって、自分の知らないどこかへいってしまうけれど、文章だとそうはいかない。文字にした瞬間にその考えが確実に世界に存在して、何かの形で消去するまでそれが変わりないことになってしまう。  これは、由々しき事態。自分がそこからいなくなっても、自分の名札が付けられた文章があっちにもこっちにもある

    • 他人の連絡網 10/19,20,21

       10/19 希望とガラスの店ルージュ。店の前にちょこんと立てられた看板は古ぼけた赤色をしていて、アルバイト代がきちんと払われるのか今から不安になる。  10/20 満月みたいなその顔をつねってやりたいと思った。私の指と指の間にあなたの丸い頬を挟んで引っ張ってその形を歪めてしまえることが唯一残されたプライドであったから。赤い座布団に座ったあなたを真正面から捉えると、変な顔のわりにどうなっても受け入れられるような器の大きさを感じていっそう腹が立ってきた。私はあなたより何倍も大

      • 工場の薮 10/17,18

         10/17 東京にお墓は作らない。5歳の頃家族に連れられた箱根のホテルのロビーで、初めてそのこけしと目が合った。受け付け台から自分を見下すようなその位置取りは不愉快で、きいっと睨み返した。父親が受け取った旅館の鍵は家の鍵とも車の鍵とも違う音で、これから自分のものでないところへ行くのだと何となく思った。  今日の13時にモンシロチョウが大教室の中に入ってきて、みんなは私語厳禁といった表情のままそのチョウの行方を追っている。お昼ご飯のためにと、とっておいたお金をピコピコハンマ

        • 連作10首『覚えのない花』

          国道のカップラーメンの残骸を動画で撮った夜が今来る 夕方のはなまるうどんの店内でひとりでうどんすする はなびら この先揺れますのでご注意ください あと2駅だけの結論 先生の折りたたみ傘はみずたまで晴れてる日ほど思い出します 向日葵は今年も枯れてゆくきっとわたしが太陽だったとしても 天井に指を突き立て書く君の漢字ドリルに載らない名前 パーセントバルーン 鳥が風船を割る前のふぞろいな羽音は なんとなく掃除機に話しかけてみる、我が家の中で最もペット よく見えるわけで

        • 固定された記事

          何らかの神話

          相手の指が自分の目に入ってもお構い無しに盛り上がり続ける男子小学生 ピットストップの度にピットクルーにサーキットの感想を伝えている、最下位のカーレーサー クラTを着ている詐欺師 一日中自身の遊園地で遊んでいるリスのマスコットキャラクター 自分で縫製したサッカーボールを思い切り蹴ることができるブラジルの少年 左目が描かれる時に「右目が描かれますように」というパラドックスを思いついているダルマ 「僅かに好き」「少し好き」「好き」と、花弁を摘む毎に好転していくポジティブ

          何らかの神話

          言葉を知ること

          言葉を知ること

          後で記入

          後で記入

          日き 7月後半

          7月17日 一度埋めた芋を掘り返すように再開、テスト期間中のエスケープゾーン。メモの様相を呈す。空いた電車内で対面している人の距離が近くて知り合いかと思う。グループワークで黙りこくって各自スマホをいじり始める時のゆるい絶望。morgenとたむらかえ2のコラボ動画、これがしたいからデートがしたい。この動画のデートって恋愛ど真ん中なのに付き合う未来がなくて羨ましい。阿佐ヶ谷姉妹の関係性ってかなり理想だ。アトピーは前世の罪が原因なのではと思う、過去を洗いたい気持ちが掻きむしる行為に

          日き 7月後半

          何らかの隠喩

          ルールやペナルティを一切参照せずに場を丸く収めた審判員 ドアが好きなドアマン 自分で割った瓦の一欠片に日付を記して、自宅へ持ち帰った空手家 「勉強させて頂きます」と言って舞台袖でシス単を開く落語家 サイレントであることが前提のため右端のブロックに「FREE」と書かれているイロモネア 葬式早々死んだ喪主 「好きにやりなさい」という意味の、空の色が灯っている信号機 勉強と受験を両立できなかった浪人生 窯に投入する前の失敗作を床に叩きつけ、床に接触しなかった部分をこ

          何らかの隠喩

          好きな歌詞を紹介①

           自分の好きな歌詞を他人に熱弁することは気が引けてきたのでここで思い切り紹介したい。尚、枚挙に遑がないので5種盛りで一本、この先何本も投稿できたらそれは良いことだと思う。その気持ちを考慮してタイトルに①を、追記。  もちろん全てに音楽があったほうがいいので必聴。 ①-1 旅行/柴田聡子  旅行中の楽しさが伝わって最高。お気に入りのポイントは、下らない会話の中に自然と「世界は一つだよ」が挿入されるところ。「は一つ」を「はあつ」と誤読して、それにつっこんで、和んでいく。その

          好きな歌詞を紹介①

          態度

           大切なこととそうでないことは手短に伝えるのが肝要という潮流が渦巻いており、私はこの七つの海をシルバードーン或いはゴーストシップよろしくのらりくらりと航行することで誰も彼もの興味と体力を掘削していきたい。  真面目に生きている人の中で忙しくない人がいて、該当者は大抵悩みを抱えて生きているはずだと思う。これは退屈の功績で学問の扉で三途の瀬だと踏んでいるが、当該の私も度々ぐるんと思索が擡げる。どこまでも根拠の欠落した内観は正しく空虚であることが通例、果敢にも無謀にもその輪郭に食

          何らかの美談

          難しいマジックから順に発表する、ラストが1番饒舌な手品師 既婚者であることを隠すため右手側の観光名所のみを紹介するバスガイド ステージの上で緊張した時に、客席を自分の畑に見立てたジャガイモ農家 「トイレでもスマホ見ちゃうんだよな」という、トイレで大便の動画を見ている人 YESなら「トリック」、NOなら「トリート」を選択するハロウィンのフローチャート 騎乗位になった途端、馬の物真似を始めたAV男優 コイントスを題材にバトル漫画を作る際、表か裏以外の性質を持つキャラク

          何らかの美談

          どうとでも

          どうとでも

          日き 2月13日のみ

          2月13日  送別会が解体されて夕方から暇になったので、街へ繰り出してみた。電車に乗車するも目的が定まらず各地の上映スケジュールをザッピングしていた。決まらないまま新宿駅のホームでうろうろしていると中央線下り快速電車がやってきたので小さく駆け込む。  中野と高円寺が好きだから、阿佐ヶ谷駅に初めて来てみた。病み上がりの影響下の花粉症をひきずって改札を出ると、アーケードが見えて心底嬉しくなった。アーケードの下にいくと想像したものよりずっと理想的な商店街が目に見えて展開されていて、

          日き 2月13日のみ

          日き 2月上旬

          2月1日 大会の本番。早くに公園に集い打ち合わせ。浜田山会館でのリハーサル前、関係ない一目惚れをして、イーゼルを広げて畳んだ。浜田山駅周辺には音楽が絶え間ない。下高井戸の鏡の前で練習を重ねて本番へ向かうも、控え室に諸先輩方がいて緊張。袖でテープの音を立て、舞台で薄らと笑いを取り再び控え室へ。伏し目がちで気遣う余裕もなく集合写真、お寿司を食べようと提案された瞬間の年の功、浜田山駅周辺の変な音楽。レポートのために早退した先輩の、頼んでいたネタが好きだった。ラウンドワンで恐竜のぬい

          日き 2月上旬

          悲しいときに悲しかったことを伝えられる人がたくさんいて、浮ついている

          悲しいときに悲しかったことを伝えられる人がたくさんいて、浮ついている