新作オンラインゲーム『原神』に感じる『BotW』ライクなゲームの難しさ

 9月28日にリリースされた『原神」。
 サービス開始当初から、様々な面で話題になっている本作。筆者も早速友人に誘われ、あれよあれよと10時間ほどぶっ通しで雑談しながらプレイしてしまった。折角なのでその感想をここに記そうと思う。

これでもか!というぐらいに『BotW』

 筆者は『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』が大好きである。
 これは今回誘ってきた友人達も同様で、それぞれハイラル平原を駆けまわり、姫とは、滅びとは、そして勇者とは何ぞやと言わんばかりの寄り道っぷりを発揮しつつも、しっかり厄災ガノンの手に落ちたハイラルを救ってきた強者どもである。
 原神に話を戻そう。このゲームは、そんな『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』(長いので以下『BotW』)に大きく影響を受けているタイトルであると言える。これは実際にプレイして貰うと強く実感して頂けると思うのだが、フィールドにおけるキャラクターの操作感や移動手段など、いたるところに『BotW』のような息遣いを感じてしまうのだ。
 例を挙げるとキリが無いのだが、スタミナの許す限りは壁にしがみつき登ることが出来たり、素材をフィールド中に点在する鍋に入れると料理が出来たり、空を滑空するためのアイテムがあったり、そもそもグラフィックやBGMの雰囲気が似ていたり・・・などといった点である。10時間ほどプレイして、筆者及び友人の出した答えも「ほとんどBotWだなコレ」であった。どんな感じか興味がある方は、一度公式サイトにアクセスしてみてもいいだろう。少なくともそれでグラフィックとBGMの点はなんとなく理解していただけると思う。

しかしながら光る『原神』の特有の仕様

 先程から『BotW』に似ている、ということを声高に叫んでいるが、勿論改良されている部分や、『原神』特有の部分も存在する。
 例えば『BotW』中における料理は、わざわざ食材を手元に出しす必要があったり、まとめて制作することが出来なかったりと面倒な部分が多かったが、本作では火にかけてある鍋を調べるだけで料理が出来る。少し条件はあるが、複数個を一括で作成することも可能だ。この他にも雨天時のクライミングや、分単位での時間ジャンプなど、『BotW』では無かった便利な仕様が多く存在する。このプレイにおけるストレスの少なさは『原神』の特徴だろう。
 しかし、先ほどまで上げた相違点は、あくまで細かい部分に過ぎない。では大きな違いとは何かというと、やはり冒険者レベルの存在や、プレイアブルキャラクターが複数存在すること、そしてそのキャラクターを引き当てるためのガチャシステムが存在していることだろう。
 冒険者レベルに関しては、広くオンラインゲームなどで見受けられるものと大体同じである。これを上げることで受けられるクエストの幅が増えたり、機能が解放されたりするもので、多くのプレイヤーにとって、分かりやすいやりこみの指標とされるものだ。上げるにはサブクエストやデイリークエストの達成が主な手段になる。
 プレイアブルキャラクターであるが、このゲームでは主人公だけではなく、ストーリー中で追加される仲間や、ガチャから引いたキャラも同じく自分で動かすことが出来る。持っているキャラから4人を選出しパーティーを組み、フィールドで自由に切り替える仕様だ。勿論キャラクター毎に武器種、属性、モーション、スキルの効果などと、それぞれ特色が用意されている。実際にフィールドに表示され、同時に操作できるのは1人までなのだが、このキャラクターの切り替えによって様々な状況に対して柔軟に対応することが可能である。このように色々なキャラクターを操作出来ることは、『原神』の大きな魅力であると言えるだろう。
 ガチャシステムについても触れておこう。前述のとおり、プレイアブルキャラクターはガチャで入手することも可能である。同時にプレイヤー達が扱う武器もガチャで入手することが出来、ガチャの排出率はキャラクターに対して武器の方が出やすい設定になっている。キャラクターや武器はダブった場合、更なる性能強化に繋げられる所謂「限界突破」を行うことが出来る仕様だ。
 このガチャに関して、そんなに筆者に書けることは無い。なぜなら筆者はあんまりガチャを引いていないからである。勿論無償で貰える分はしっかりと引いてはいるが、まあ可愛い女の子が当たると嬉しい程度のものだ。勿論ハイエンドユーザー同士で何かやるのであれば、「このキャラとこの武器の最大限突が必須」といったことにもなるのかも知れないが・・・ひとまず10時間程度であれば、ストーリーで仲間になるキャラに嫌でも手に入るガチャ産武器を適当に強化して担がせるだけでストーリーの進行は普通に出来ることは断言させて頂く。
 この辺りの要素は、買い切りであり、オフラインで遊ぶのが前提のコンシューマーゲームたる『BotW』に対して、基本無料プレイのオンラインゲームである『原神』故に発生した特徴であると言える。

ゲームプレイにおける自由とは

 『原神』をプレイしている最中、途中からずっと違和感を感じていた部分がある。このゲームにおいて、自分は自由に行動している筈なのに、何故か自由では無いような実感がある。あんなに『BotW』では心の底から自由を堪能していた筈なのに、この感覚の違いは一体何なのだろう。
 少し考えてみたが、何とも単純なことであった。
 自分の中で、知らず知らずの内に「冒険者レベルを上げる」が優先順位として一番高くに設定されており、それらに関わる要素を見ると「やってもやらなくてもいいや」では無く「やらなきゃいけない」といった感情に置き換わってしまっていたのだ。
 前述の通り、冒険者レベルを上げるとクエストの受けられる範囲が広くなったり、機能が解放されたりする。これにはメインクエストも勿論関係しており、ストーリーを進めるためにはどうしても冒険者レベルを上げる必要性が出てくる。さらに、冒険者レベルを上げると、ガチャを回すための無償石が貰える。無料でギャンブルに挑戦できる、という分かりやすい報酬が発生し、より上げる事への明確な利益を意識させられる。筆者の場合は友人との協力プレイをするということも目的の1つであったため、その機能の解放といった理由も拍車をかけていた。
 このような冒険者レベルを上げることによる明確なメリットが提示されていることにより「冒険者レベルを上げる事は重要なことである」と自然と考えるようになってしまい、その考えが自分の中にある種の義務感を生んでしまったのだろう。

 オンラインゲームであれば、この冒険者レベルを上げるために色んなクエストを効率よくこなすことは、何もおかしな事では無い。実際筆者もこういった行為は好きであるし、過去に他のゲームで遊んでいた時は何ら不思議に思わなかった。
 しかしながら、この『原神』は『BotW』ライクのゲームであることを忘れてはならない。
 勿論『BotW』にもメインクエストは存在し、それらの存在は常に知らされてはいるが、冒険者レベルという分かりやすい指標があり、尚且つそれに対しての分かりやすい利益が存在する以上、『原神』では意識のさせられ方が全く違うと感じる。実際に筆者は、『BotW』をプレイした際、特に義務感のようなものを感じず「自由に選択肢が存在する中で、ストーリーを進める選択肢を取った。これもまた自由である」という意識のもとプレイすることが出来た。物語を進める上での精神的な自由がそこにはあったのである。
 勿論このゲームは『BotW』では無いし、オマージュ元だと明言されている訳でも無い(多分)。しかしここまで似て(あるいは似せて)いるのだから、自ずと比較先は『BotW』になってしまう。そうなると、どうしてもフィールドにおける行動の自由度や、『BotW』を思い起こさせる様々なゲーム内の要因が、精神的な不自由さを浮き彫りにさせてしまったのでは無いかと筆者は考える。
 基本無料のオンラインゲームである以上は、何かしらの集金機構や分かりやすい継続するモチベーションが必要である以上、『BotW』のように精神的にも自由になれるゲームはコンシューマーゲームで無ければやはり難しいのだろう。

結局『原神』は面白いのか

 結論を先に書くが、筆者は『原神』を十二分に「面白い」と考えている。
 さっきまで精神の不自由がどうたらと叫んでいた人間がまあ何様だという感じではあるのだが、そもそも面白いと思ってないと仕事でも無いのに10時間も無料のゲームをぶっ通しでプレイしないので納得していただきたい所存である。先程の項もただ単に引っかかったことを述べただけで、ゲームの面白さを決める上で比較を持って議論をするのはナンセンスであろう。うん。
 そして未だ筆者は友人間でのオンライン機能を試せていない。あの世界を友人達と遊べたらどんなに楽しいだろうか。期待に胸が膨らむばかりだ。

 纏めると、筆者的には非常に面白いゲームであると考えているが、少しばかり引っかかる部分もあるといった具合だろうか。そんなところである。

 まだまだやれていないことは沢山あるし、これからのアップデートも予定されている。色々言ってはいたが、筆者にとって『原神』のゲーム体験は、きっともっと楽しいものになるであろうことは、疑う余地も無い事実である。

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