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僕の住む街にはプロ野球がある【6/14 対ホークス戦●】

先発するL.モイネロが順調なピッチングを披露していると、僕の後ろのほうから声が聞こえてきた。

「気合い見せろ-!こっちは大阪から来てるんやー」

(……こっちはこの試合を見るまで2年間待ってたんですけど-!!)

状況説明しないと伝わらなそうなので、叫ぶのはやめておいた。

僕が福岡の街に引っ越してきたのは、ホークス主催の交流戦が終わった後の夏。会社の都合とはいえ、引っ越してきたタイミングが悪かった。

空港も新幹線駅も近いから、交通のアクセスは不自由しない。一人暮らしで自由な身であることあって、試合に行くペースはそこまで変わらなかった。だけど、僕にとってタイガース戦は「仕事終わりに行くもの」から「しっかり準備して遠征して見に行くもの」に変わった。感覚レベルの話で表現が難しいのだけれど、今までの観戦とは、何かが変わってしまった気がした。

よりによって、この日の夕方までに仕上げないといけない仕事が2つあった。朝8時前から会社に来て、眠い目をこすってPCを立ち上げる。昼食も持参した弁当を自分の席で食べた。こうすれば買いに行く時間も食べる時間も節約できる。福岡に来てから1番気合いを入れて働いたかもしれない。

期日の仕事は無事終わった。だけど移動中に試合は始まってしまいそうだ。できれば最初から見たかったが仕方ない。東京で働いていた頃もよくあった。

地下鉄に乗って最寄りの唐人町駅を目指す。移動中はスポナビも開かないし、中継映像も見ない。試合がどう進んでいるかドキドキしながら向かうのも、楽しみの1つだ。ドーム横の建物の大型ビジョンで映し出されている中継映像がうっかり目に入りそうになったが、すんでのところで回避した。

既に座っているお客さんに協力してもらいながら、自分の席までの道を空けてもらう。席に座ると、ちょうど3回が終わったところだった。スコアはまだ動いていない。お楽しみはこれからになりそうだ。

結果を見た人ならご存じだろうが、試合は0-2でホークスが勝った。先発の伊藤将司はよく投げた。ホークス相手にたったの2失点でひとりで投げきった。
決勝点がホームランになったから、きっと「1球に泣いた」とか言われるのだろう。けれど、そもそもあのホークス相手に1球で勝敗が決まるギリギリのところまで持ち込んでいる。これがなかなかできないから、今季はどのチームもホークスに苦戦しているのだ。伊藤将はすごかった。いつもの伊藤将が戻ってきた。それを今日は相手のモイネロが上回った、それだけのことだ。

先発の伊藤将司 ※OP戦で撮影

強がりでも何でもなく、楽しかった。
夜の試合を見るために、朝の時間から働いている時間まで逆算して動くこの感じ。そして想定通りに進められたときの達成感。試合も始まってまばらになっている球場へ向かう道を急ぐあのワクワク感。これは遠征では味わえない感情だ。いつもより集中して仕事をするから疲れるけど、球場でグラウンドを見ていたらそんな疲れも吹き飛んでいく。

僕の住む街にはプロ野球チームがある。
2年間かけて、やっと実感できた気がした。

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