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2人目の”おかえり”【9/3 対巨人戦●】

待ち望んでいたときが訪れた瞬間、甲子園球場は静かだった。

7回の守り、前のピッチャーが失点を重ねて点差が広がったこともあり、その名前がコールされても拍手はまばらだった。
甲子園球場に島本浩也が戻ってきた。復帰したタイミングが長期ロード中だったこともあって、1軍復帰したタイミングと甲子園のマウンドに上がるタイミングがズレた。最後に彼の名前が甲子園でコールされてから実に3年の時が経っていた。

才木浩人と島本。ふたりは側副靱帯再建術を受けた。いわゆるトミー・ジョン手術。手術が成功してから実戦復帰できるまで1年~1年半程度かかるとも言われる。才木と島本のふたりは同じ病院で同じに日に手術を受けた。6歳年上の島本は才木の病室を訪ねて、揃っての復活を誓ったらしい。手術を受けたこの年、ふたりとも慣れ親しんだ背番号から3桁の番号に変わった。

才木の復活劇は感動的だった。バンテリンドームナゴヤでの対ドラゴンズ戦の先発登板で1軍復帰。大山悠輔のプロ通算100号などもあって白星を掴んだ。ヒーローインタビューで大粒の流したその姿は、多くのファンの心を動かした。

一方の島本も8月5日の東京ドームで1軍復帰。大差で負けていた試合での中継ぎだったが、1回を無失点に抑えた。ここまでビハインドの起用は続いているが、安定感光る投球が続いている。


前のピッチャーが打ち込まれ、ランナーが塁上にいる中でのマウンドだったけれど、島本は落ち着いていた。わずか2級でバッターを追い込むと、最後は得意球のフォークで引っ掛けさせた。
続く回のマウンドにも島本は上がった。外野フライ2つと空振り三振。甲子園での復帰マウンドを自らの好投で飾った。

ホームユニを着た島本が甲子園のブルペンカーに乗って、甲子園のマウンドに立っている。その姿を見て、本当に戻ってきてくれたと思えた。やっと、やっと、心の底から「おかえり」と言えた気がした。

あとひとり。
僕は復帰を心待ちにしているピッチャーがいる。ふたりと同じくトミー・ジョン手術を受けた高橋遥人だ。

今年の4月、高橋遥はトミー・ジョン手術を受けた。才木や島本のことを考えると、マウンドに戻ってこられるのは来年の夏以降になるだろう。
ピッチャーがボールを投げられない。この辛さは想像を絶するものなのだろう。僕のようなファンにはとうてい想像できない。才木はリハビリ中、何度も挫けそうになったと取材で明かしていた。
周りに手術歴があるピッチャーがいるからといって、その辛さが和らぐわけじゃないけれど、才木と島本の復帰が高橋遥に勇気を与えてくれていたら良いなって思う。ベイスターズも同じく手術を受けた田中健二朗が、東克樹や平良拳太郎のことを励ましていたと聞いた。経験した者同士にしか分かりあえないことが、きっとあるのだろう。

才木も島本も、強くなって甲子園に帰ってきた。時間はかかったけれど「おかえり」って言えた。


あとひとり。高橋遥にも「おかえり」って言える日が来ますように。
ずっと、待っているから。


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