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植田海の打球、頭上を越えろ【2/25 対スワローズ戦〇】

同い年の選手に親近感を覚える人は多いはずだ。しかもその選手が自分と全く同じ日に生まれていたらどうだろうか。僕にとって、植田海はそういう選手だ。
俊足で堅守な選手は無条件で応援しているけど、生年月日が同じである事実が、彼を応援する理由をより強くさせた。

11日と12日に宜野座で行われた紅白戦。植田が守ったポジションは外野だった。2試合ともスタメンだったけれど、試合中に内野を守ることはなかった。ほかの選手の兼ね合いも当然あるだろうけど、もう内野のスタメンとしては考えていないんだろうなって考えてしまった。別に悪いことだとは思っていない。唯一無二の盗塁技術、俊足を生かした守備範囲、内外野を守れるユーティリティ性。植田の持ち味はベンチスタートでも十分に生かせるのだから。

外野でノックを受ける植田

オープン戦の初戦、僕が1番応援している選手が「2番・二塁」でスタメン起用された。思わずスポナビの一球速報アプリを二度見した。だって、もう内野のスタメン要員にはカウントされていないと思っていたから。
初回の攻撃、近本光司がツーベースヒットを放つ。いきなりチャンスで植田の打席が回ってきた。良い当たりが飛んだが、打球はレフトのグラブに収まった。3番の板山祐太郎に先制2点本塁打が飛び出して事なきを得たが、結果的に植田の打席でチャンスは拡大できなかった。

5回、近本のヒットで再びチャンスで植田に打席が回ってきた。今度は2死1,3塁。凡退したら攻守が交代する。自分が打たなきゃ点は入らない。先発の岩貞祐太が1点ずつを失い、試合は同点になっている。オープン戦とはいえ、この後の試合展開に大きく影響しそうな、重要な場面だ。

植田が打席に入るタイミングで、スワローズの外野手が前に出てきた。そりゃそうか。プロ9年でホームランは1本だけ。ツーベースも1軍の公式戦では2020年を最後に記録されていない。もし僕が試合の作戦の指揮を執る立場だとしたら、外野手を前に守らせるだろう。頭ではじゅうぶん理解している。

けれでも。「舐めんな」って気持ちが、心のどこかから湧いてくる。

フルカウントからスワローズ・石山泰稚が投じた7球目。真ん中近いボールに植田が反応した。打球がレフト方向に飛ぶ。レフトが背走しながら打球を追っている。

(頭越えろ!!)

レフトの濱田太貴が軽く飛び上がりながらグラブを差し出した― が、ボールをその上を超えて、芝生に落ちた。打球が内野に戻ってくる間に2人のランナーがホームインする。植田の2点タイムリーヒットで、タイガースが勝ち越した。このタイムリーが決勝点になった。

僕は、スタメンで出る植田が見たいんだろうか。実のところ良く分からない。

しびれる場面で颯爽と登場する代走の役割も好きだ。緊張感ある点差で守備を固める役割も好きだ。野球は9人でやる競技じゃない。ベンチで控えているスペシャリストがいたから、タイガースは強くなった。

去年の甲子園。植田と同じような役割を担う熊谷敬宥がサヨナラヒットを打った。サヨナラ打を放った熊谷がチームメイトや監督から祝福される姿を見て、心のどこかで「いいなあ」と思う自分がいた。あの瞬間、熊谷は間違いなく主役だったし、最高に輝いていた。

同じく代走やUT枠として起用される熊谷

レギュラーじゃなくても、スタメン起用が少なくても、野手である以上、その打撃に期待する場面がやってくる。もしそこでヒットが打てたら。長いシーズンの中で植田の「バッティング」で勝つ試合が1つでもあったら。
今日のヒットもそうだけれど、植田のバッティングは年々良くなっている。力勝負で簡単にやられることはなくなった。元々選球眼は良いから、整ったカウントになる打席も多い。

今年から甲子園に鳴り物と声出し応援が帰ってくる。トランペットの音色と声援を浴びながらチャンスで打席に向かう植田。ダメだったときの周りのリアクションを想像すると怖いけど、バッティングでも主役になる植田を僕は見たい。まだ諦めたくない。

1番応援している選手だから、それくらいは願ってもいいよね。

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