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ドリスの新たな挑戦【6/9 高知FD 対 ホークス3軍戦】

その知らせは、あまりにも唐突すぎた。

4月8日。ラファエル・ドリス、高知ファイティングドッグス入団。
もう日本で見ることはないと思っていたピッチャーの来日に、僕は胸を躍らせた。

ドリスは2016年にタイガースの一員となった。だが当時は、同年に来日したM.マテオの補欠の意味合いが強く、シーズン開幕は2軍で迎えた。それでもドリスは持ち前の実力を発揮し、いつしかチームにとって欠かせない存在に。最終的にはクローザーを務めた。来日2年目となる2017年にはリーグ最多の37セーブを挙げた。
160kmのストレートと、それに近い球速で動くツーシーム。そして鋭く落ちるスプリット。安定感では歴代のクローザーにNo.1を譲ったかもしれないが、スケールの大きさでは1番だった。僕はそう思っている。ドレッドヘアをまとめる水泳帽のようなキャップも印象的だった。

ドリスはタイガースに4年間在籍した。208登板・96セーブという実績を引っ提げて、
MLBのブルージェイズに移籍した。お別れはさみしかったけれど、タイガースでステップアップしたドリスが次のステージに進んでいったことが、僕は誇らしかった。

MLB、メキシカンリーグを経て、ドリスは日本に再び戻ってきた。ドリスが選んだのは、四国アイランドリーグの高知FD。この球団の名前を聞いて、僕は藤川球児のことを思い出した。高知出身で、タイガースのレジェンドクローザー。彼もまた、MLBから高知FDに入団した経緯がある。もともとドリスはアメリカで藤川から日本のことを聞いたのがきっかけでタイガースに入団した。藤川と同じチームを選んだのは単なる偶然ではないだろう。
何より、ドリスがもう1度日本でプレーすることを選んでくれたことが嬉しかった。

いくら福岡に住んでいるといっても、さすがに高知は遠い。だが高知FDや他の四国ILのチームは福岡ソフトバンクホークスの3軍や4軍と交流試合を開催している。つまり、タマホームスタジアム筑後でドリスが見られるかもしれない。ドリスがNPB復帰を目論むのなら、この交流試合をアピールの場として考えるだろうと思った。

8回裏、目当ての投手がついに出てきた。ドリスがゆっくりと、ブルペンから無人のマウンドへ向かう。タマスタ筑後はほぼ全員がホークスファンで、拍手はまばらだ。
ユニフォームは変わったし、よく見るとタイガースにいたときより少しふっくらしている気がする。それでも大きな体をダイナミックに使うフォームはあのときのままだ。

ドリスは初球で先頭打者を打ち取るも、味方のエラーでいきなり0アウト2塁のピンチを背負った。点差は1点。エラーの走者とはいえ、生還を許したら同点だ。だがドリスは動じていない。ロジンバックをポンポンと触って次の投球に備えている。
次の打者はセカンドゴロに打ち取る間に走者が3塁に進んだ。タマスタ筑後のお客さんがにわかに盛り上がっている。

1アウト3塁のピンチ。初球のストレートは150kmを記録し、相手打者のバットが空を切った。ドリスのギアが1段階上がったように見えた。変化球を2球続けて見送られるも、4球目はファウルゾーンに打ち上がった。ドリスがボールを見上げて指を差す。走者を返さず2アウトを取った。

続く打者はストレートで空振り三振を奪った。3アウト目含め、ほぼ全てのボールが低めに投じられていたのはさすがだった。走者は背負ったが生還は許さず。四国ILでの試合も含め、これで来日してから13試合連続で無失点だ。
ドリスが投げた直後に高知FDは2点を追加。試合も3-0で勝利した。

ボールを力いっぱい投げ込むドリスを見ながら、少しずつタイガース時代の思い出が蘇ってきた。
一打同点のピンチでサインをじっと眺めるドリスを見て、レフトスタンドでちょっぴり胃を痛くしながら見ていた試合を思い出した(最後はちゃんと抑えてくれたけど)。

NPBの球団が新たに支配下選手を登録できるのは7月31日までだ。この日を過ぎれば育成選手の昇格も、トレードも、NPB以外のチームからの入団もできなくなる。ドリスがNPB入りするには、残り約1ヶ月半の間にどこかの球団に声をかけてもらわなければならない。
どのチームも育成選手を数多く抱える今、戦力強化の方法は補強に限定されなくなった。ドリスが歩んでいる道は決して平坦ではないだろう。

僕は評論家でもスカウトでもないから、今のドリスを必要とする球団がどれほどいるのかは分からない。
でもこの目で久しぶりにドリスを見て、また大観衆の前で投げる姿が見たくなった。

次はNPBの1軍の舞台で会えるかな。
また、見に行くから。

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