見出し画像

投げる方の佐藤にも注目してくれよ【2/11 対紅組●】

サトテル、サトテル―

この愛称もずいぶんと定着してきた。名字と名前を組み合わせたあだ名は語感も良くて、つい口に出して言いたくなる。そういえば、学校のクラスの中に同じ名字の人が複数人いたときに、この手のあだ名が使われていた気がする。
今のタイガースにも、佐藤輝明とは別に佐藤姓の選手がいる。

タイガースもうひとりの佐藤、佐藤蓮は静岡県の飛龍高校から上武大学に進み、2020年のドラフト会議で3巡目に指名された。ただ、上武大時代は故障に悩まされるなどして、公式戦デビューは大学4年生の秋だった。

公式プロフィールによると、佐藤蓮の身長は188cm、体重は105kg。佐藤輝に負けないくらいの体格をしている。彼の武器はなんといってもカーブだ。緩い軌道でタイミングを外すのではなく、鋭く曲がって落ちて打者を幻惑する。その軌道は独特で、相手打者が思わずのけぞってしまうほど。バッターが「来た」と思ってスイングしたらバットと全く違う箇所をボールが通過していくことも珍しくない。

なお佐藤蓮が指名された年のドラフト会議は1巡目で佐藤輝、2巡目でピッチャーの伊藤将司、6巡目で内野手の中野拓夢を指名している。今の時点でそうそうたる顔ぶれだ。そんな同期の活躍がめまぐるしい一方で、佐藤蓮のプロ野球人生のスタートは順調とは言えなかった。

タイガースファンの中で記憶に新しいのはルーキーイヤーの紅白戦だろう。試合終盤に登板した佐藤蓮だったが、先頭の高山に二塁打を許すと、そこからストライクが入らない。近本光司には死球を与えてしまった。その後も制球が定まらず、球数がかさんできたこともあって試合は異例の打ち切り。1イニングを投げる予定だったが、アウト2つしか取れなかった。

2軍戦で良いピッチングができたと思ったら、次の試合では人が変わったかのように失点する。2年目に至っては登板機会が減っていった。次第に佐藤蓮の名前を聞かなくなっていった。結局、2年間で1軍登板は果たせず、2軍での成績も奮わなかった佐藤蓮は去年のオフに背番号が変更された。30番から130番へ、育成選手になった。

背番号30時代の佐藤蓮

1軍メンバーと2軍メンバーが同じ日、同じ球場で行われた異例の紅白戦。佐藤蓮も登板の機会を得た。2軍メンバー中心の紅白戦に、佐藤蓮は2番手としてマウンドに上がった。

まるで別人だった。背番号が130に変わったことじゃない。僕がイメージしていたより何倍も良かったのだ。まるで人が変わったかのようなピッチングだった。
制球に苦しんでいたストレートがバンバン決まる。ストライク取るのに必死だったのが嘘のようだ。腕を縦気味に振る新フォームと元々の高身長が相まって、ボールに角度が付いているように見えた。先頭打者と次打者を難なく打ち取って2アウト。続く井坪陽生(ひなせ)もストレートで追いこんだ。直球で押している。

(最後は得意のカーブかな。)

佐藤蓮が投じたのは、フォークだった。井坪のバットが空を切った。狙ったところに落としきった。完璧だった。
メディアはこぞってドラフト1位の森下翔太のことを報じていたけれど、この日の紅白戦で1番すごかったのは、まるで別人のように生まれ変わった佐藤蓮のピッチングだった。僕はそう思っている。

入団したときと比べて、背番号は大きくなった。けれども、後退したわけじゃない。周りの選手と比べてほんの少し、ほんの少し遠回りしただけだ。現にものすごいものを見せてくれたじゃないか。こういうピッチングができると期待されたから、佐藤蓮はプロの世界に入ってきたんだ。


サトレン。サトレンは、本当はすっごいピッチャーなんだって。
そう言いたい。言わせてくれ。今年こそは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?