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浜地真澄は運を貯めたのだろうか【7/20 対広島戦●】

防水仕様のKindleを風呂に持ちこんで、ぬるま湯に浸かりながらとある短編小説を読んでいる。

完全歩合制の保険会社に勤めている主人公。やっとの思いで契約にこじつけた顧客から解約を言い渡されてしまう。不登校の子供は心を開いてくれず、どう接していいか分からない。仕事も、家庭も、思い通りにいかない。

「なんで自分ばっかりがこんな目に」

ある日、主人公の目の前に現れたとある人物との出会いが、彼の運命を変えていく……。そんな話だ。その「とある人物」は主人公を相手にこんなことを語りかける。

「運は貯めて使うもの。どうしようもなく理不尽で辛いことが続いても、それは運を貯めている状態。どんなときでも上機嫌でいれば、いつか貯まった運が使われていいことが起こる」
正直ちょっと胡散臭いかなと思ってしまった。

けれども、もしこれが本当のことなら、今日の浜地にも運が貯まったのだろうか。

浜地真澄。高校卒業後プロ入りした6年目の右腕だ。わずか4試合登板だった昨シーズンから一転、今年は1軍リリーフ陣の一角を担っている。いちど故障が原因で1軍から離れた時期もあったが、大事には至らず、着々と登板数を重ねている。

浜地の安定感は投げるごとに増していき、気づけば重要な場面で投げる場面も目立ってきた。昨日の試合では3点リードの7回に登板。カープ打線を三者凡退に抑えた。今や準セットアッパー格と言ってもいいだろう。

今日も試合終盤で浜地の名前がコールされた。7回の守り、1アウト1塁。左のワンポイントでアウトを奪った渡邉雄大に代わっての登板だ。点差は2点。昨日より接戦だけれど、渡邉が1アウトを取ってくれた分、今日は打者2人を打ち取れば終わりだ。

この回、タイガースは逆転を許した。浜地が投げている間に3点を失った。

味方の後逸で走者の生還を許し、味方の落球でピンチが広がった。悪い連鎖は止まらず、浜地は連続でタイムリーヒットを打たれた。

交代を告げられ、ベンチで悔しそうにしている浜地を見ながら、僕は風呂で読んでいる小説のことを思い出した。もしこれが「運を貯める」だとしたら。

プロ野球は実力と結果がものを言う世界だ。だから、今日の試合は浜地に負けがついた。けれども、真剣勝負の中に偶然が全く関与しないとは断言できない。もし今日の試合で浜地の運が貯まったとしたら。そうだとしたら、きっといつか浜地が投げている試合で味方が助けてくれる。守っていた野手陣だって、いつか取り返してあげたいって思っているはず。それがきっかけでチームが勢いづけば、それでいいじゃないか。


いつかまた、今度は味方の守備が浜地を救ってくれる日が来るはず。
そんな風に考えるのも、別に悪いことじゃないだろう。


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