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1. 遭遇|露出にいたる病|短編小説
追記:分割されていると読みづらい気がしたので、1記事にまとめました。
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性的あるいは暴力的な描写は一切ありません。
また本作品はフィクションであり実在の人物とは関係ありません。
それは雲ひとつない満月の夜のことだった。
工藤春美は、その月と街灯が照らす明るい夜道を歩いていた。
足には青いジーンズ、上半身にはTシャツの上にゆったりとした厚手の黒カーディガンを羽織り、美容院で整えたばかりのセミロングの茶髪を揺らしていた。まだ10月の初旬であるにもかかわらず冷たく感じる夜風は完全に秋を感じさせるもので、春美はもう少し暖かい格好をしてくればよかったと少しだけ後悔した。
一般論で言うならこんな世の中に女一人で出歩くのは危険かもしれないが、幸いなことにこのあたりは多くの街灯が設置されており街の治安もいいことで有名だ。少ない数とはいえ防犯カメラも設置されていることもあり、このあたりでいかがわしい犯罪があったという噂は聞いたことがない。もちろん過信は禁物だが。
そんなことを考えながら春美は歩みを進めていた。自分の中では安全だと思っているにも関わらず、こうやって夜道を歩く度に一々そうした身の安全について考えてしまうというのは人間の性なのか、あるいは防犯意識を忘れない堅実さ故か。
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そんな春美がこんな夜中になぜ出歩いていたのかというと、近所のコインランドリーに向かうためだった。彼女の右肩には大きめのエコバッグが下げられており、その中にはたくさんの洗濯物を入れていた。
家に洗濯機が無いわけではなかったが、ここ1週間ほどずっと忙しかったこともあって彼女の部屋にはたくさんの洗濯物がたまっていた。それだけのたくさんの洗濯物を一度に処理するなら大型の洗濯機・乾燥機が利用できるコインランドリーが最適だというのが晴美の出した答えであった。
男性を含む多くの人間が利用するコインランドリーは抵抗があるという女性は多いが、春美はそうしたことは気にならないタイプだった。それでも、そうした恥じらいがあったほうが女らしいんだろうと考えてしまうのは女性の性なのか、あるいは乙女な女子への憧れか。
そんなどうでもいい雑念が頭の隅をよぎりながらも歩みを進めていると、春美が定期的に利用しているコインランドリーにたどり着いた。
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コインランドリーには一人の先客が居た。どうやら遠目からすると男性のようだ。
春美は一瞬だけ心の中で躊躇したが、このコインランドリーに防犯カメラが設置されていることを思い出し、気を持ち直して入店した。
その男性と思わしき人間は、茶色く長い冬物の大きなコートを羽織っていた。確かに今夜は少し涼しいが、冬物のコートを着こむほどに寒がりなんだろうか。それにコインランドリーの店内なのだから冬物のコートを着たままではさすがに暑いくらいなのではないだろうか。
春美がそんなことを考えながら男をそっと観察していると、茶色いコートの隙間から薄汚れた肌がちらりと露出した。
(嘘……この人、露出狂だ……!)
春美は激しく動揺しながらも、その胸の奥では半ば期待に似た高揚感に包まれていた。それは怖い思いをすると分かっているのに、それを期待して肝試しや遊園地のホラーハウスに入るときの感情にも似ていた。
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(続きます。残り3話)
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