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金持ち鬼|ショートショート|410字

「で、どうする?」
「俺は―」

桃太郎はこれまでの経緯を思い返していた。

悪事を働く鬼を懲らしめて財宝を持ち帰ろうと決めて家を出た。働くのも嫌だったし。

道中で出会ったイヌ、サル、キジを仲間にした。消費期限の怪しい『きびだんご』で。

船を使って鬼ヶ島まで渡った。船乗りは嫌そうな顔をしてたけど。

そして……鬼に出会った。金持ちの。

「世界の半分だぞ? こんなサービス滅多にしないぜ?」
「なぜそんな気前がいい?」
「そりゃ金持ちだからな。気分さ」
「……」

実のところ桃太郎の決意は最初から固まっていた。悩むフリだけはしたが。

「交渉成立だ。これまでの悪事も見逃そう」

そう桃太郎が声を上げると、次の瞬間には鬼の姿に変わり果てていた。

そして目の前の鬼は神の姿に変わる。

「残念ながらお前も餓鬼道だな」

神がそうつぶやくと桃太郎は跡形もなく消えてしまった。

「人間は欲深いのぅ」

そうつぶやいた神は桃太郎の姿に変身し、財宝を村に持ち帰ったのであった。



あとがき

こういうのでいいんだよ。(自分で言うのか)

冗談はさておき、最近なんか重めのショートショートばかり書いてるような気がしたので。まぁ、これも明るい話というわけではありませんけれど。

ちなみに『餓鬼道』(を含む『六道』)は仏教のお話なので、神が登場するのは不自然なのですが、まぁそこは物語ということで。(神様ってやつはいい加減なんです)

Special Thanks!

爪毛さんのキーワードの組み合わせから頂きました。

Inspired!

昔話『桃太郎』のアレンジという発想は氷堂出雲さんの以下の作品をインスパイアしています。


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