マガジンのカバー画像

410字のショートショート

16
#ショートショートnote杯 と同じく、410字以内で完成されたショートショート作品。
運営しているクリエイター

#毎週ショートショートnote

恥ずかしがり屋の立方体 #3|#毎週ショートショートnote

「さぁ皆様!とくとご覧あれ!」 男はそう言って、テーブルの上に伏せられた黒いコップを持ち上げた。 そこから現れたのは1つのダイス。弐の目を上にしている。 男はやれやれという表情でダイスに向かって声を掛ける。 「ここは壱になる場面だろ?」 男は生まれつきダイスと会話ができた。不思議なことだが。 「だって……」 「ん、なんだって?」 「恥ずかしい……から」 「そうか」 男はその感覚を理解することはできなかったが、その気持ちを理解することはできた。 「ねぇ、どうして

恥ずかしがり屋の立方体 #2|#毎週ショートショートnote

私は暗闇の中で息を潜めてじっとしていた。 大丈夫……さすがにここまでは彼も入ってこないはず。私は不安を取り払うように自分にそう言い聞かせる。 ザッ、ザッ。 闇に飲まれた洞窟の空洞音に、誰かの足音と思わしき雑音が混ざり込む。 大丈夫……まだ離れている。ここまでは……来ないはず。 ザッ、ザッ。 しかし、その期待とは裏腹に足音は徐々に近づいてくる。 そしてついに、彼の姿を目に捉える―― その角張った体の人物は、使い込まれたであろう鈍い光を放つツルハシを手にしていた。

恥ずかしがり屋の立方体|#毎週ショートショートnote

壱の目が赤い理由である。 あとがきおいおいnoteは初めてか? こんなネタ記事でイチイチ顔を真赤にして怒るなって。こっちが恥ずかしくなっちまうよ。 その立方体のように硬い頭をすこし柔らかくすることを勧めるぜ? ん、これは生まれつきだって? そいつは悪かったな……いやいや、そんな目で見るなよ。 物事の一面しか見ないのは俺の悪い癖だ。謝るよ。 P.S.あとがきが本編。 Special Thanks!たらはかにさんの企画に参加させて頂きました。 前回書いたやつ追記

フォーク神様|#毎週ショートショートnote|408字

「さぁ、3人の中から好きな神様を選びな」 死んだ私に対して、目の前の天使は荒い口調で言い放った。 目の前には3人の神様。スプーン、フォーク、ナイフ。 天使の説明によれば、神様ごとに性格が異なるので、慎重に選んだほうがいいという話だった。 私は食事の時を思い出しながら長考した。 考えあぐねた結果、私はフォークの神様を選択した。フォークが一番万能な食器だろうという至極安直な理由からだ。 「あぁ、私を選んでしまったか……」 フォークの神様は悲しそうに言い放って続けた。