マガジンのカバー画像

ショートショートnote杯の作品

23
ショートショートnote杯で投稿した作品です。 https://note.com/simpeiidea/n/n494a3af60f97
運営しているクリエイター

#冷蔵庫

しゃべるピアノ

その男は毎日のように路上でピアノ演奏のパフォーマンスをしていた。 彼の演奏はそれは素晴らしく、ピアノでの演奏の限界を超えているようにさえ感じさせるその音色は人々を魅了し、多くの投げ銭による収入を得ていた。 しかし、ある日のこといつものように彼が演奏していると急に演奏が止まってしまい、それと同時に咳き込んだような音が聞こえてきた。 彼の演奏を見ていた観客たちが何事かとピアノに駆け寄る。彼は日頃からピアノに近寄ることを禁止していたが、一度起きてしまった流れは止められない。

夢の冷蔵庫

僕は夢のような冷蔵庫を手に入れた。 永久に鮮度を保存できる冷蔵庫だ。 といっても僕がその冷蔵庫に入れるものと言えば、散歩中に見かけた素敵な杏や百合くらいのものだ。 そう、僕は美しいものをいつまでもそのまま保存しておきたいんだ。 * そんなある日のことだ。 どうも冷蔵庫の調子がおかしいんだ。冷気が止まっているらしい。 これは一大事だ。 「ピンポーン」 この緊急事態に誰だろうと思って玄関を開けると警官が立っていたんだ。 「近所の方から苦情がありまして。ちょっと

違法の冷蔵庫

その違法に改造された冷蔵庫の性能はすさまじかった。 4つの巨大な車輪に水平対向エンジンとジェットエンジンを搭載し、空気抵抗を極限まで減らすように設計された空力ボディーは戦闘機を連想させるデザインで、その加速性能は時速100kmに達するまで5秒、最高時速は500kmに至るほどだった。 男は週末になってはそのマシンに搭乗し、高速道路を轟音とともに走り抜けていた。当然スピード違反であったが、警察のパトカーが追いつけるはずもなく、毎度のように逃げ去っていた。 しかし、ある日つい