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ショートショートnote杯の作品

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ショートショートnote杯で投稿した作品です。 https://note.com/simpeiidea/n/n494a3af60f97
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#ホラー小説

しゃべるピアノ

その男は毎日のように路上でピアノ演奏のパフォーマンスをしていた。 彼の演奏はそれは素晴らしく、ピアノでの演奏の限界を超えているようにさえ感じさせるその音色は人々を魅了し、多くの投げ銭による収入を得ていた。 しかし、ある日のこといつものように彼が演奏していると急に演奏が止まってしまい、それと同時に咳き込んだような音が聞こえてきた。 彼の演奏を見ていた観客たちが何事かとピアノに駆け寄る。彼は日頃からピアノに近寄ることを禁止していたが、一度起きてしまった流れは止められない。

夢の冷蔵庫

僕は夢のような冷蔵庫を手に入れた。 永久に鮮度を保存できる冷蔵庫だ。 といっても僕がその冷蔵庫に入れるものと言えば、散歩中に見かけた素敵な杏や百合くらいのものだ。 そう、僕は美しいものをいつまでもそのまま保存しておきたいんだ。 * そんなある日のことだ。 どうも冷蔵庫の調子がおかしいんだ。冷気が止まっているらしい。 これは一大事だ。 「ピンポーン」 この緊急事態に誰だろうと思って玄関を開けると警官が立っていたんだ。 「近所の方から苦情がありまして。ちょっと

株式会社リストラ

俺は火人多新、株式会社リストラに務めてる。 人員整理が必要な会社から依頼を受けて、内部潜入・調査した上で手助けする、リストラの外注みたいなもんだな。 俺も潜入して調査するのが表の仕事だった。 そう、俺は裏の仕事もやってた。 どうやってか俺のような人間の正体を突き止めちまう人間が居る。そしてこう言うわけさ「この無能な人間をリストラしてくれ」ってな。 分かるだろ? 気に入らない上司。ムカツク同僚。自分を振った女性社員。そういう気に入らない奴をリストラしてくれって訳さ、